第154話チョコをプレゼントしなさいよ!
雪絵は秋学期も一つも単位を落とさずに、無事に大学二年生へと、進級出来ることが決まった。
そして二月に入ってからすぐの夜になって、雪絵がちょうどもう寝ようとしていたときに、雪絵のスマートフォンに、着信が入った。雪絵がぎこちない様子で、スマートフォンの着信の画面を見てみると、
(あっ……園里からだ……)
スマートフォンの着信画面を見て、雪絵は一瞬嫌な予感を覚えたが、園里は架けた相手先が電話に出ないと、たとえ時間をおいてでも、相手が出るまで何度も電話を架けてくる……。そういったタイプの性格の持ち主でもあった。特に、雪絵に対しては余計にそう……であった。
雪絵は、実際に園里が架けた相手が電話に出るまでは、何度も架け直されるのは『それだけはお願いだから勘弁して!』という気持ちであったがために、仕方なく園里からの電話に、恐る恐る出てみることにした。
「園里……何よこんな時間に……いきなり電話を架けてきて……良い子と病人は……もう寝ている時間よ……いったいどうかしたの?」
雪絵が園里に第一声でそう問いかけると、すると園里は、
「別にこれといった特別な意味はないわよ。ただ『雪絵、ちゃんと食事は食べているの?』って電話よ!」
嫌な予感が的中したと、雪絵は思った。雪絵は園里に、
「いつからあなたの私に対する……電話の挨拶の第一声が……『ちゃんと食べているの?』になったのよ……」
「なら言い方を変えるわよ『雪絵、少しは太った?』ってね」
雪絵は園里のその言葉に、ただただ呆れるしかなかった。園里は続けて、
「大学の方は、ちゃんと進級出来たの? まさか留年なんて、していないでしょうね?」
「そこは問題ないわよ……」
「そう……。で、雪絵は大学に彼氏がいるって、瞳から聞いているのだけれども、その例の彼氏との関係は、最近どうなのよ?」
園里から『彼氏』と言う言葉を聞いた雪絵は、
「彼氏って……瞳から聞いたのって……重森君のこと? いつからあなたの考えの中で……私と重森君とが……彼氏と彼女の関係になったのよ……」
雪絵がそう力なく言葉を返すと、園里が、
「今月もうすぐバレンタインがあるでしょ? その重森君って彼氏へのチョコレートは、もう買ったの?」
「なんで……重森君に買うのよ……」
雪絵の園里に対する呆れは止まりそうにないが、園里はそんなことは眼中にないように、
「いいから! ゴディバでチョコレートを買って、そのチョコレートを持っていって、義理チョコって体裁で良いから渡してみて、彼氏の反応を見てみなさいよ!」
と言うのだった。雪絵は、
「だから……重森君は彼氏じゃなくって……」
とまでは言ったが、園里からの電話は、そう言って一方的に切れた。
(仕方がない……園里の言う通りに……重森君にバレンタインのチョコレートを……とりあえず渡すだけ渡してみて……それで重森君の反応を見てみよう……。それにしても瞳は……私に断りも入れずに……重森君のことを……皆に言いふらし過ぎよ……)
そう雪絵は思って、園里に言われた通りにゴディバで、そこそこの値段のチョコレートを買った。
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