第150話遊び終わった今日子と徹也その2

 今日子はイヤリングはしているが、耳にピアスの穴を開けた形跡は、今日子の耳にはない。

「ピアスは教職取っていると、やっぱり女子でもピアスは禁止なのかい?」

 徹也は教職を取っている学生は、ピアスは禁止という大学もあることを、知っていたからだ。それに対する今日子の返事は、

「えっと……。ピアスもね、でも私たちって仮にピアスの穴を開けても、すぐに塞がっちゃうから、あんまりピアスをする意味がないし、これもイヤリングだから……。あと別に自分の身を傷つけてまで、何かオシャレをしたいとは、私は思わないところもあるのかな?」

 というものだった。徹也は話のベクトルを変えて、こんなことを今日子に聞いてみた。

「大学に、その……。一緒に遊ぶ友達とかいないのか?」

徹也がそう聞いてきたので、今日子は少し困った表情を一瞬見せた後で、

「大学一年生のときはね。私を含めて六人でグループを作っていたんだけど、純粋に理科大に入りたくて入学したのは、実は私だけで、あとは皆早慶とか、どこかの国立大学とかを落ちて、仕方なく理科大に通っていて、でもどうしてもその受験結果に納得できなかったみたいで、皆仮面浪人していたみたいなの。四人は春学期中に受験勉強に専念するために退学しちゃって、もう一人は一年生までは理科大に在籍していたけど、結局関門科目の単位を一つ落としちゃって留年が決まって、そしたら理科大自体を辞めちゃったのね。結局、関門科目もちゃんと突破して、ちゃんと進級をし続けて、大学に残ったのは、そのグループの中では、私だけだったのね」

 そんな話は、徹也は今日子からたった今はじめて聞かされた。すると一つの疑問が、徹也には思い浮かんだ。

「そんな経緯で今日子は、いつも大学では一人ぼっちなのか?」

 徹也は早稲田大学の中で、いつも一人……いや正確には秀美が声をかけてきたり、また秀美と一緒にいる機会も増えてきたので、何とも言えないが。

 今日子は徹也からのその問いかけに、次のように答えた。

「うん。授業のノートを見せて! とかで声をかけられることはあるけれども、大学の中では基本的には、一人で過ごしているかな?」

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