第141話父親への誕生日プレゼントを二人で買いに行く

 それからしばらくした、ある日の夜に、

「健くん。明日って空いている?」

 葉月がいつも通りに、突然健の部屋にノックもせずに入ってきて、そして健の部屋に入るなり、葉月は健にそう言った。

「空いているけど、なんでかな? 何か用事でもあるのかな?」

 健はそう葉月に聞いたが、葉月は、

「じゃあ明日の午前十時に、駅前の交番で、待ち合わせね!」

 それだけ言って、葉月は健の部屋を出て行ってしまった……。

(おいおいお姉ちゃん。俺のことを振り回しすぎだろ!)

 健はそう思ったが、時既に遅く、後の祭りであった……。


 交番で待ち合わせた葉月に健は「今日これから二人で何をするの?」と、葉月にそう聞いてみた。すると葉月は健に対して、こう言った。

「今日私たちのお父さんの誕生日でしょ! だからお父さんの誕生日プレゼントを、これから買うのよ!」

(待て待て! そんなことは昨日は一切聞いていないぞ!)

 健は一瞬そう思ったが、葉月の破天荒な行動に、健はただただ振り回されることとなった……。

 葉月の提案で、日比谷花壇で花束を買って、それをプレゼントしようということになった。お菓子やマフラーや、はたまたネクタイなども考えたりはしたのだが、再婚してから初回の誕生日ということもあってか、それを祝う意味でも花束の方が良いと、葉月は言うのであった。

 花束は思い切って、それなりのボリュームになるようにと、日比谷花壇の店員さんに、コーディネートしてもらった。

「花束代は俺が出すよ。女の子にお金を出させるのは、ちょとね……」

 そう言った健に対して、葉月は次のように健に対して返事を返した。

「二人の連名でプレゼントするのだから、ここは割り勘でしょ!」

 葉月がそう言うので、健は葉月のその提案に、従うしかなかった。

 健と葉月の二人が自宅へ帰ってきて、お父さんに誕生日プレゼントの花束を渡すと、二人の父親はたいそう喜んでくれたし、また二人の共同での行ないだということも、余計に増して、喜んでくれた様子であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る