第137話健の父親の再婚

 健が大学二年生のときに、健の父親が再婚した。

 健の母親は、健が小学生のときに、別の男性と不倫をしていて、結局その男性の元へと、最終的には行ってしまっていて、当然慰謝料などはナシ。それ以来健は父親と、二人っきりで生活をしていた。

 健の父親は再婚するにあたって、ある日健をリビングに突然呼び出して、そして健に対して、

「ところでな、健。父さんな……。再婚することになったんだ」

 そう健の父親は、突然健に再婚の話を切り出して、

「今度再婚する女性は『八武崎さん』っていう、俺が小学生の頃の同級生だった人なんだ。それと相手の女性もバツイチでね。ああそれと、向こうの女性にも女の子のお子さんがいて、健よりか少し年上になるんだそうだ」

 それを聞いた健は、突然の父親の決断に驚きの表情を隠せなかったが、

(俺にとうとう、お姉さんが出来るんだ……)

 と、健はしみじみとそう思っていた。

 こうして実際に健の父親との再婚相手の二人と、会う日がやって来た。しかし実際に会ってみると、相手の女性の子どもの女の子の方が、健よりたったの一歳だけ年上で、しかも誕生日が健と同じだったのだ。

 再婚相手の、健の新しいお母さんになる女性と、その一人娘の女の子は、健の自宅に、住むことになっていたようだ。

 こうして再婚初日の夕食のときを迎えた。再婚祝いも兼ねているのだろうか……。食事はお寿司であった。しかしながらそのときの健と再婚相手の子どもの女の子のやり取りは、こんな感じであった。

「竜崎君、お醤油を取ってもらえるかしら?」

「はい、八武崎さん」

 そんな感じで、二人は硬い表情を崩さなかった。それを見た健の新しいお母さんは、

「あなたたち、もう少しリラックスしたら? もう『家族』なわけだからね」

 それを聞いた健の父親も、

「まあまだ初日だし、硬さが残るのは仕方のないことだと思うよ」

 すると健の新しいお母さんが、

「でもこう見ていると、あんまり家族って感じじゃないかなあ。この二人を見ているとね。表情に硬さも残っているし……」

 と言ったが、健にとっては、

(初日からすんなりと昨日まで赤の他人だった女の子と、仲良く接するなんて、出来るわけないじゃないか……)

 そう思っていたが、健の新しいお母さんが、

「やっぱり苗字まで合わせた方が、良かったのかしらね?」

 と言う健の新しいお母さんに対して、健の父親は、

「加奈子さんも苗字まで僕らと合わせると、仕事がしづらくなるだろうし、この形で良かったと、僕は思うよ」

 健は意外にもこの場ではじめて、健の新しいお母さんの下の名前が『加奈子』さんということを知った。

 こうして再婚初日の夕食の時間は、少しギクシャクした感触が残りながらも、特に荒波が立つこともなく終わった。

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