第123話瞳の故郷遠野へその1

 話の場面は、雪絵が大学二年生のときの、七月の三連休のときに、瞳が、

「中学の卒業からはだいぶ時間が経っちゃったけど、ユッキーも少し落ち着いてきたみたいだから、中学の卒業祝いの旅行に行こうか? 私の故郷の『遠野』を、案内してあげるよ!」

 瞳は自分の故郷だからだろうか? 誇らしげに、続けて次のように言った。

「まああんな事件はあったけど、昔の日本が保存されている様なところだし、自然も多いし、自転車で回れるところだから、良い場所よ!」

(あんな事件……というのは、瞳が高校生のときに遠野に帰っていたときに、河童がいるとされている『カッパ淵』にて『河童への生贄だ』として、三人が殺害された事件のことである。警察の捜査の努力の甲斐もあってか、無事に犯人は捕まり、一応その事件は解決はしたのだが……)

 瞳はそうは言ったものの、肝心の瞳の都合がなかなかつかずに、瞳が案内すると言いだしてから一年が経った七月の三連休を利用して、瞳と雪絵、園里と今日子の四人で、瞳の故郷の遠野へ行くことになった。

 四人は上野駅の新幹線乗り場で、待ち合わせた。園里が瞳に、

「どうして車で行かないのよ?」

 と聞いてみた。すると瞳は、

「う~ん車でも行けなくはないのだけれども、遠野って東京から結構距離が離れているから、車で行くと運転していると、疲れちゃうのだよね」

 瞳がそう言うので、園里も納得した表情を見せた。続いて今日子が、

「てっちゃんと健ちゃん、今回来れなくて、もの凄く残念だね」

 そう瞳は徹也と健にも、一緒に六人で遠野に行かない? と、声をかけていたのだが、徹也と健は二人ともその日は都合がつかない……という返事を受け取っていたのだった。

 しかし世の中は三連休の初日である。新幹線は自由席で乗車券を取ったのだが、四人が前後で座れることはなく、瞳と園里、雪絵と今日子に分かれて、新幹線の座席に座ることにした。

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