第69話パソコンショップでのアルバイト面接

 雪絵はいくつかの秋葉原のパソコンショップの、アルバイトの面接を受けていた。既に二つのアルバイトを辞めていて、どうせ働くなら得意分野を生かして働こうと、決意を新たにしていたからだ。

 しかし秋葉原のパソコンショップは、大学生のアルバイトの応募には極めて厳しい。ようするにパソコンショップで働くアルバイトは、大抵がそれを将来の本業としようとしており、また正社員を目指すフリーターばかりが採用されているため、学生生活の片手間にパソコンショップで働こうと考えている大学生は、原則受け付けないのである。

 ようするに働ける時間に制約のある大学生は、最初からパソコンショップでのアルバイトの募集からは、お呼びではないのが、現実だったのだった。

 雪絵にとってそれは、ショックとも言えるほどの、厳しい現実であった。

 だが雪絵はその厳しい現実を突きつけられても、決して諦めなかったが、さすがの雪絵もここがダメだったら、パソコンショップで働くのは、素直に諦めようと思った、例の『ブラックゲマゲマ団の塔』と別名で呼ばれていたパソコンショップで、面接を受けた。

 店長と名乗る面接に応じた人は、雪絵が持参した履歴書を見るなり、雪絵に対して、こう言ってきた。

「慶応のSFCに通っているんだ。君って頭良いんだね」

 次の質問は、志望動機だった。特に慶応のSFCなんかに通っている学生が、なぜ家庭教師や塾の講師などはやらずに、パソコンショップで働きたいと言い出しているのかを、店長はおそらく見極めたかったのだろう……。

「どうしてそんな君みたいな高学歴の人が、パソコンショップなんかで働きたいのかな?」

 そのように問われた雪絵は、

「実は中学の頃からパソコンが好きで……好きなことで働きたくて……それでここへ面接に来ました……」

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