第41話徹也と秀美のファーストコンタクトその2

 しかし徹也を仰天させたのは、次の日だった。

 今日のすべての授業が終わって、大学の図書館で勉強をしていた徹也は、またも背後に人が立っている気配を感じた。

 徹也が後ろを振り返ると、例によって昨日食事中の勉強を邪魔した? あの女の子だった。

「なんだい。またお前さんかい? いったい俺に何か用かい?」

 徹也が今度はそう昨日よりかは少し穏やかに聞いたので、その女の子は、

「いえ……大学生って基本勉強しないものだって、高校のときに聞いていたので、いつも熱心に勉強していて、凄いなあって、思っていまして……」

 それを聞いた徹也は「ああそのことか……」という表情を一瞬だけ見せて、その女の子に徹也は、こう言った。

「これはとある予備校の先生が書いた、一般の哲学的な本に、書かれていたのだけれども、大学生っていうのは……いやそもそも学問をする人間というのは、本質は図書館に篭って過去の文献を読んで、そしてそれを元にして、また新しい論文を書くこと……らしいのだよね」

 徹也のその言葉を聞いたその女の子は、逆に徹也に対して、

「何の勉強をしているのですか?」

 と、その女の子はストレートに簡潔に問うてきたので、徹也は、

「物理の勉強をしているのね」

 と、これまたストレートに簡潔に返事を返した。

「物理の勉強……具体的には、物理のどんな分野の勉強なのですか?」

その女の子は『どんな分野』と、そう具体的に尋ねてきたので、徹也は、

「物理でどんな分野って問われても、返答に困るのだけれども、物理学っていうのは、もの凄く極端な言い方をすれば『極大の世界』と『極小の世界』を科学する学問なのだよね」

「ちょっとよくわからないなあ……」という表情を見せる、その女の子の表情を見た徹也は、次のように説明を加えた。

「その『極大の世界』っていうのは、平たく言えば『宇宙』に関する真理を追い求めることなのね。逆に『極小の世界』っていうのは、ようするにこの世に存在している物質を構成している『素粒子』の研究なのね」

「素粒子? 物質を作っている最小単位って、原子や電子とかじゃないのですか? 私、素粒子なんて単語は、今はじめて聞きました」

 その女の子がそう言うと、徹也も徹也で、

「その辺の詳しい歴史は俺も勉強中なのだけれども、どうも『粒子加速器』って実験設備を人類が手にしたときには、既に原子や電子はもっと小さい『素粒子』と呼ばれる物質……例えば地球上に存在する物質であれば『アップクオーク』と『ダウンクオーク』と呼ばれる二つの素粒子の単純な組み合わせで、構成されているって、説明が出来るそうなのね」

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