第40話徹也と秀美のファーストコンタクトその1

 話は徹也が早稲田大学の一年生へと、無事に入学が出来たときへと遡る。

 それはとある日の、昼休みの時間に起こった。

「ふ、ふふふ……。昼食中に『日経サイエンス』を読むと、食が進むぜ!」

 徹也は昼食のパンを片手に『日経サイエンス』を読んでいた。

「今月号の特集が『ヒッグス粒子』か。ついに物体に質量を与える『神の素粒子』が見つかったか! これからどんどんと素粒子物理学は、面白くなっていくのだろうな……」

 その瞬間だった。徹也は後ろに誰かいる気配を、一瞬で感じ取った。振り向いてみると、見知らぬ女の子が、日経サイエンスを読んでいる徹也のことを、のぞき込んでいた。

「何だよ。なんか用かよ? 人のことをのぞき込むことって、大変失礼なことだぞ!」

 徹也があえてそのように威圧的に声をかけると、後ろに立っていたその女の子は、こう言った。

「ごめんなさい。ただ、何を読んでいるのかが、気になっちゃって……」

(何だこいつは? 面倒くさいな……)

 そう思った徹也は、またあえて威圧的に、

「失せろ。目障りだ!」

 そう言った。徹也は大学で友達や仲間、はたまたグループなどを作るつもりなど、一切なかったから、そういった返事をしたまでだった。

 だが、その女の子はなかなかその場を去ろうとしない。徹也は続けて、

「本を読んでいるだよ。失せろ!」

 しかしその女の子は、またしてもその場を去ろうとはせずに、逆に徹也に対して、こう言葉を投げかけてきた。

「お昼の時間にも勉強をするなんて、どんな勉強をしているのかが、気になっちゃって……」

 その女の子はそう言って、まだその場を去ろうとしない……。徹也もいい加減キレたような口調で、次のようにその女の子に向かって、言葉を吐いた。

「もう一度同じ単語を言わせるな。失せろ!」

 そこまで徹也が言い切ったからだろうか……。その女の子は申し訳なさそうに「邪魔してごめんなさい」と言って、その場をようやく去って行った。

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