第24話雪絵と重森その2

その電話から二日後に雪絵宛てに、瞳から実際に下敷きが届いた。いつもながらに瞳の行動の素早さは、中学のときから変わっていない。

 次の週の重森に声をかけられた同じ授業の日に、雪絵は瞳から送られてきた下敷きで瞳の指示通りに扇いでいた。

(それにしても……今日もやけに暑いわね……本当にクーラーは利いているのかしら? この教室は……)

 そして雪絵は、瞳から送られてきたアニメの下敷きの絵柄を見ながら、

(それにしてもこのキャラ……何のアニメのキャラなのかしら……)

そう思って雪絵が下敷きをよく見てみると『魔法少女リリカルなのは』の『フェイト・テスタロッサ』とある。

 そう思った瞬間、後ろから声を掛けられた。

「おはよう! 笹森さん」

「あっ……おはようございま……」

 雪絵が言い終わる前に、その男子学生には雪絵の下敷きの絵柄が眼に入ったようだ。

「笹森さんその下敷き、リリカルなのはジャン!」

「あっ……違うの……これは……」

 そう雪絵が言い終わる前に重森は雪絵の手を握ってきた。

「今そのアニメの映画が上映中なんだ。よかったら一緒に観に行かない?」

「えっ?」

 突然の誘いに驚き、そして戸惑う雪絵を尻目に、重森は、

「大人気なアニメなのだけれど、劇場となるとなかなか上映している映画館がなくってね。新宿の歌舞伎町の映画館で、授業が終わった後辺りだと、午後六時からが上映しているんだ。笹森さん、今度の金曜日はどう? 予定空いているかな?」

 重森の強引な誘いに雪絵は戸惑ったが、今度の金曜日はちょうど歌舞伎町の裏の病院に、消化器内科の定期的な通院がある。重森のお誘いの日は、ちょうどその日だった。なので通院が終わった後であれば、行けなくはない。

「金曜日はその日……授業が終わったら……近くの病院に行くから……」

「じゃあ、笹森さんの病院が終わったら、一緒に観に行こう!」

 重森がそう言い終わると、授業担当の教授が教室に入ってきた。

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