第9話 学校帰り

学校が終わり、二人は一緒に帰っていた。

俺は別にいいけど、乙葉は良いのかなっとおもった。

〔ぼっちなんだよ!察して!〕


「ねぇ春兄。」


「どした?」


乙葉は少し顔を赤らめて、

「――プレ欲しい?」


俺と乙葉の間には10㎝程の距離がある。

聞き取れなかった。


「ごめん、なんて?」


「……タンプレ欲しい?」


「ナンプレかー、最近やってないな。」


ナンプレとは、100均とかでもよくある、クロスワードクイズが載った冊子で、景品もある。昔は景品欲しさで良くやっていた。


「ちがうの、そうじゃなくてさ、タンプレ欲しい?」


耳元によって、聞こえるようにしてくれた。でも……


「あのー、タンプレって何?」 


「はぁー…」

乙葉は落胆した感じ。


「春兄ってなんにも分かってないよ。誕生日プレゼントの事よ。」


「あっ、そう言うことか。確かに誕プレやな。」


「もー、そんなんやから友達居ないんじゃない?」


なんと直球な。


「でも、えっ!?誕生プレゼントくれるん!?」

 

「…うん。だってさ、この前いろいろ看病してくれたし。べっ別に好意を抱いてるとかそんなんじゃないのよ!誤解しないでね!」


なんか泣ける。

誕生日プレゼントなんか、父さんぐらいしか貰ったことがない。


「分かってるから、そんなわけないもんな、好きなんか。」


「そうよ、じゃあ帰ったらケーキ予約しに行こっか!」





ケーキを予約して家路に着いた時、俺は聞いた。


「なんで俺の誕生日知ってるん?」


俺は誕生日なんて外で言ったことがない。


「この前…私の診察券直すときに、隣の春兄の診察券に書いてあったし…。って、えっ!?」


反射的に抱きついた。そんなことで誕生日のプレゼント考えてくれたのか。



「えっ、ちょっと止めてよ!恥ずかしいわ!」


その晩、寝るまで抱きついた事について説教された。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る