向日葵の十字架
ワタナベ
第1話
お互いにもうどこか限界を感じていたのかもしれない。
今年もいつも通り向日葵を刈り取りながら、ふとそんなことを思った。
そして相手がいない今でもこうして嘗ての習慣を繰り返してしまうのは、自分なりに未練を抱えているからなのか、とも。
-刈り取った向日葵を焼いた灰を固めて作った十字架を贈りあうのが、このうだるような暑さのなかで決められた“規則”の一つだった。それは過去の自分が犯した過ちを忘れないように、とお互いを縛りあうような。
そんな息苦しい規則が山ほどあったここから、あいつは全てを壊して出て行った。
あと1年を耐えられる自分と堪えきれなかったあいつとの間に齟齬が出来たのを気づきつつも見ないふりをしていた・・・これはその報いだ。
だがそれでも割り切れずに錆と墓に囲まれて誰もいない廃墟で日常を一人で繰り返し、今も夕暮れに染まった向日葵を見ながらあいつの帰りを待つしかできない自分の体は夏なのに氷のように冷たかった。
向日葵の十字架 ワタナベ @sekinohana
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