第2話 戦闘用ホムンクルス
気づいたら天蓋付きベッドで寝ていた。どこのお姫様だよ!っと思って起きて周りを見渡せば、ヨーロッパ中世風の部屋に寝かされてたようだ。
中世風って言っても騎士の部屋って感じじゃなく、貴族の部屋みたいな感じかな?
ヨーロッパ中世って言っても人によってイメージと年代が変わるらしいけど、俺のイメージは○リーアントワネットの時代の貴族的なイメージ。
そんな感じの部屋で目覚めて部屋を眺めてるとタイミングを見計らったようにドアからノックが聞こえてきた
「失礼します」
そんな言葉と共に入ってきたのは赤髪の巨乳メイドだ。
袖が付いているメイド服を着ているが腰にあたる場所がコルセットを着けているために体のラインが浮き出て胸が強調されており、胸へと目が言ってしまいがちになる
髪型はストレートのセミロングで赤、正確に言うなら真紅といった色合い
顔は目をつぶっているため何とも言えないが全体的に作られたように非常に整っている
こちらの視線に気づいたのか目を開けると思ったらこちらを「クアッ」っと擬音が付きそうなほど見つめてきた。
「あの方がご主人様」
ぼそっと言ったつもりだろうけど聞こえてますよ?
なんで顔を赤らめてるんですかね?
ドアを閉めてからまたコンコンっとノック、
同じように目をつぶって出てきたのは赤髪メイドと同じメイド服を着た
青髪ポニーテイルのメイドさん(こっちも巨乳)
目を開けるてこちらに気づくと微笑んだ
「効果はばっちりかな?」
青髪メイドも独り言が聞こえたけど、
こっちもビックリするぐらいの美人が意識してかこっちを見て喋ってる
(一度閉めてから開けるなら二人同時にはいってこいよ!)
とか思うが二人の美人に見つめられドキドキする
「おはようございます。はじめまして、私の言葉は解りますでしょうか?」
「ああ、解るけど、それがどうし・・・」
そこまで言われて気づいた、赤髪メイドは日本語を喋っていると
「では、はじめましてですね、ご主人様!!私の名前はペイナこっちの子が」
「メージュです」
「どうぞ、よろしくお願いします。」
「・・・・よろしくお願いします。」
赤髪メイドのペイナさんと青髪のメイドのメージュさんが頭を下げ揃ってお辞儀した
「色々お聞きしたいでしょうが、その前にご主人様の今の状況を分かってる限り教えてもらえると幸いです。」
「今の状況っつってもな」
そこで思い出すのは寝る前の記憶、死んで、生き返って、喧嘩し、眠らされる。
簡単に説明すればそのその三つで終わる。
あとは起きてメイドに自己紹介され、質問される
「そんな状態かな?古風な洋風的内装もそうだけど此処って何処だ?俺は死んだはずだよね?俺が……」
そこで気づく、(俺が蹴り飛ばした兵士はどうなった?)
内臓を潰した感触がしたから下手をすれば死んだだろう。
問題はそこじゃない、人を殺したかも知れないのに何故平然としてる?
そもそも鎧がハリボテだったとしても体を蹴って内蔵にダメージ与える程度のはずが腹の肉にめり込んで、内臓を潰し蹴り飛ばすほどの力が出てしまっている。
普通の人間はあんな力はでないし、俺も出せるだけの筋力がなかった。
まぁそれは結果だ、終わったことだし後で反省すればいい、
それよりも問題は人を殺し(?)しても罪悪感が無いということ…いや違う、一番の問題が”楽しかった”と思えることだ、俺は無差別の殺人狂ではないはずだ。
人を殺した実感が沸かないだけか?
それだと”楽しい”と思うことに説明が付かない。
もう一度、眠る前の光景を思い出してもやっぱり”楽しい”と…
パチンっと、赤髪メイドが猫だましの様に目の前で手を叩いた。
「混乱させてしまったようですね、申し訳ありません。
ご主人様の今の状況説明いたしますのでこちらに付いて来てください。
デドラ様がお待ちです」
デドラとは誰だろう?話振りからして俺の現状を把握してるみたいだが、眠る前に会った爺さんか?
案内されたのは応接室と思わしき部屋、壁は本棚で埋め尽くされ正面手前にテーブル、テーブルを挟んで左右にソファ、奥に執務用の机、その後ろは大きなガラス張りの窓になっている。
そこには儀式部屋で見た爺さんが座って待っていた。
「ペイナ大丈夫だったか?」
「はい、問題ありません。ご主人様は今の状況を理解しています。」
「ふむ、そこのソファにでも腰掛けてくれ」
言われる前から既に腰掛けてるけど、誰も突っ込まないのな
「はじめましてでよいかな?ワシの名前はデドラ・ヴォイニッチ、
このオーカム帝国で一番の魔術師である!
よければ御主の名前を教えてはくれないかの?」
「俺の名前はトウヤ・オオイケだ、呼ぶときはトウヤで頼む」
英語のように名前から先に答えたが正解らしい
「ふむ、ではトウヤ、お主は異世界に転生または転移する物語を読んだことはあるかの?」
「あるぜ、・・・・・知り合いに好きなやつが居た・・・気がする」
今喋ってるときに気づいたんだが、異世界に転生する系統の物語が好きだった奴の記憶が殆どない。
親しい間柄だった気はするんだが思い出せない
「なら話は早い、ここは御主たちが言うところの異世界というやつじゃ、
召喚の魔法で御主を戦闘用ホムンクルスとして異世界召喚した。
ホムンクルスというのは分かるかの?」
(突っ込みどころが多すぎるぞ!)
「突っ込みどころが多すぎるぞ!何だ異世界って!そんなの信じられるわけねーだろ!」
思ったことそのまま声に出してしまった
「それに戦闘用ホムンクルスって何だ!ホムンクルスって化け物のことじゃねーの?」
異世界に転生or転移の物語はネット小説で読んだから知ってるが、ホムンクルスってアレだよな人型の人造人間のことだよな?
錬金術の漫画で呼んだことあるわ、あれは七つの大罪の名前を持ったホムンクルスが出てくる面白い漫画だった
「一般的なホムンクルスというのは人と変わらん、そう作られておるからの、化け物というのは漫画やアニメの見すぎじゃ」
何で異世界人が漫画やアニメを知ってるんですかね?もう異世界じゃねーだろ?
俺をどうしたいのかイマイチ解らないが騙したいならもっと設定をしっかりしろと
「なんで異世界人が漫画やアニメを知ってるんだ?」
「御主の知ってるものとは違うかもしれんが漫画やアニメはこの世界にもあるんじゃぞ」
びっくりである。俺が読んだ異世界系の物語には無いパターンだ
「そっちの本棚にある本はワシが集めている漫画じゃ」
執務用の机から見て右の一番近い本棚が漫画本の棚らしい
あれは単行本にしては大きいから週刊誌かね?
「この異世界には御主と同じ異世界人が来ることがあっての、その異世界の知識でこの作られた漫画やアニメじゃ」
そう言うと一冊の本を出し投げてくるが軌道がおかしい、明らかに机を通り越す勢いで投げられたが俺の目の前あたりで不自然に勢いが止まり落ちる。
着地寸前で落ちるスピードが減速し丁寧に正面の表紙をこちらに向ける、
まるで人が目の前に本を置いたような感じである
「手にとってみるといい、今は読めんと思うが漫画の作りは同じじゃろ?」
言われて手に取り中をみると大きさ的には雑誌だが中身はコミックといった感じに思えた
大きさは週刊誌ぐらいで約200ページあり、雑誌としても少ない
雑誌広告もなく主人公と思わしきキャラが最初のページから最後の方まで出ていた
文字は読めないがこれはコミックだな
「ずいぶん大きなコミックだな、紙も分厚いし海外のコミックはこんな感じなのか?」
「ふむ、この国では一般的な漫画じゃな」
本は確認したが、それよりも
「さっき投げたのは魔法か?」
「わかるかの?風の魔法を無詠唱で使ったんじゃ」
魔法を無詠唱ってことはこの爺さんは魔法使いとしては強いほうなのかね?
「この程度できんと帝国で一番の魔術師は名乗れんよ」
考えが顔に出ていたようだ。
「最初は言葉が通じなかったが今通じるのは魔法なのか?」
「そうじゃ、言霊の魔法で通訳しとるのじゃが注意点がある」
「注意点?」
注意点は以下の通り
まず言霊の魔法(以下通訳魔法)を使用したのはこの場にいる俺を除いた三人
この三人以外は言葉は通じないらしい
この通訳魔法は効果時間は無限と言うわけでもなく個人差があり
初めて掛けると通訳時間が30分から2時間ぐらいで切れてしまう
時間を置かずに何度もこの魔法を掛けると1回の効果時間が延びるらしいが
頭痛がどんどん酷くなり最終的には寝込むようになってしまう
通訳魔法を俺に掛けていないのはこのあたりの事情があり俺以外の三人が通訳魔法で話してるらしい
コンコン
ドアがノックされ一人のメイドが出てきた
「■■■■■」
(失礼します)
うん、言葉わからん!
メイドは飲み物を持ってきて目の前に置いた
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■。
(言葉は分からないと思いますが紅茶です。)
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」
(ミルクとレモンをお好きに入れてください)
多分、紅茶でミルクとレモンを好きに入れろってことだと思うけど
なんで砂糖がないんだ?異世界だから高いとか言うのか?
「■■■■■■。」
(失礼しました。)
最後に一言かけてから言葉が通じないメイドさんが退出していった
「さっきのメイドの言葉は分かったかの?」
「いや、全然わからん」
爺さんの後ろに居る二人以外のメイドが来たのはタイミング的にワザとなんだろう
などと思っていると爺さんが目の前まで来てから顔の前で手を広げ
「起動」
と言ったら頭の中で声が聞こえてきた
《おはようございます。ご主人様》
「聞こえたかの?」
なんだ?赤髪か青髪のメイドが喋ってきたんじゃないのか?
二人のメイドを見ると爺さんの後ろに控えているだけだ
「言葉はどうじゃ?意味は分かるかの?」
「これは二人のメイドが喋ってる訳じゃないのか?」
《違います、私はご主人様の脳内に直接話しかけています》
「脳内?確かに声が普通じゃない聞こえ方するけど」
「ふむ、起動した戦闘用ホムンクルスの補助エーアイの言葉は魔法なしで分かるようじゃな」
エーアイ?・・・・あぁ、AIのことか
《はい、私は戦闘用サポートAIです。エーアイを縮めてエイとでもお呼びください》
(エイって魚かよ!)
《ご主人様が言うエイという名の魚は、この国では確認されていません》
思ったことに突っ込みきた!!
「補助エーアイは言葉にせんでも考えが伝わるから便利じゃぞ」
《はい、私は一般常識の補強から戦闘補助まで幅広い支援をお約束できます》
「補助は使ってるうちに慣れるじゃろ。それよりこれからやってもらいたい事があっての」
聞けば俺は戦闘用ホムンクルスとして起動させただけで戦闘用ロボットでいうところの起動と停止の確認が終わっただけの状態らしい
次は戦闘用ホムンクルスとして重要な戦闘テストをしたいということだった
当然俺の答えは決まっている
「嫌だね」
すると爺さんが赤髪メイドのペイナと顔を合わせた
「状況をわかっとらんじゃないかの?」
「いや、分かってるぜ分かってて嫌だって言っているんだ」
赤髪メイドに言っているんだろうが割り込んで言いたいことは言わせて貰う
「戦闘テストとかしたって俺にメリットがないだろ?だから嫌といっているんだ」
「つまり戦闘テストをしたいなら、それ相応の報酬を出せということかの?」
「そういうことだ」
無条件になんでも聞くのはまずい気がするので多少強引でも流れに逆らってみる
「状況は理解しとるが少し勘違いをしとるの」
そういって爺さんが目を合わせると、またあのときのような眠気が襲ってきた
「お主に拒否権などないのじゃ」
《製作者権限により強制スリープに移行します》
おい、これは何だ!っと思う暇もなく意識は闇に飲まれた
目を覚ますと俺は闘技場らしき場所の中央に居た
《おはようございます。ここは北西の迷宮都市アーバルの闘技場です》
アーバルって何処よ?っとそんな疑問も目の前に光景に吹き飛んでしまった
目の前には地下通路らしき階段、直ぐ側には思いつく限りの武器
これはどうみてもローマコロッセオの剣闘士、それを連想させた
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