第20話ありがとう楽しかっ...

・小話・

もう20話まで行きましたね。

でもまだまだいきます。40話くらいまでいけばいいと思っています。


さて、13話から始まった「道別村」編は今回で最後です。

土地名に関しては、県の名前は現実の名前を使っていますが、村や森、町の名前は空想で、現実にはありません。


何で行を変えた時に、一マス開けないか自分でも疑問を抱いたので、説明します。

理由はとても簡単で、一マス開けるのに、「スペース」ボタンを三回押さないといけないので、とてもだるいからです。


今回の小話はここまで本編をお楽しみください。

あと、したのこれ(ーーー)、一行開けた方がいいですかね?

(この一行)

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「何だよ!16星って?」


さっきと同じ様に教えてくれないと考えていたが、男はフッと笑って教えてくれた。


「お前に教えてやっても良いだろう。どうせ意味は無いがな。

お前らが倒した奴らは一番下の、

下っ端と言った方が良いぐらいの位の奴らだ。一人を覗いて。

その上。それが16星だ。文字どうり16人の幹部と言った方が良いか。

そしてその上が8星。その上が4星。

そしてボスの側近の切り札。

とこんな分ける方になっている。」


男は終始笑っている。その笑顔からは強い自信に満ちていた。

まるで100レベルの勇者が最初のモンスターと戦うくらいの余裕感。絶対負けないという自信に満ちていた。


「何か俺のことを忘れて話をしてるけど、そろそろ良いかな?お二人さん。ようするに、あんたは他の奴より強いって事だろう。自慢だろ。」


余裕をこいたその態度。

しかし、目に入った光景は全く違う響喜を表していた。


震えてる⁈


がくがくと足が震えていた。

俺は一瞬で感じた。響喜のやりたいこと、考えていることが。


火炎は「火」。奴は多分「水」。

火炎にとって水属性は天敵。だから俺が引きつける。火炎どうか気付いてくれ!


不意だった。響喜の脳をみて感じているかの様に、スッと俺の脳に伝達された。

こんな感覚は初めてだ。

俺は気づかれない様にコソッとうなづいた。


そして響喜は自分にもっと気を向かせるために、攻撃を仕掛けた。


「破壊の心音」


[破壊の心音(クラッシュビート)

内側から響かせる。音は「破壊」

音量は自由に変えることができる。

音量に合ったダメージが自分にはいる。]


弱音だ。響喜には、ダメージがほとんど無い程の弱い音。でも奴の気を向けるにはちょうど良い。

この攻撃で奴は完全に響喜に気を向けた。


この隙だ!

おれはそう思い、近くの木に隠れた。

木の裏に体を潜め、横目で見た。


「破壊の心音」


今度の音量は強だ。体の芯まで揺らすような大きな音。

俺は耳を押さえながら、相手を見た。


!!!


俺は一瞬息を飲んだ。

相手はこの大音量の中、耳を押さえず水のドームの中に平然とした表情で、立っていた。


音が止むと相手はドームの中で余裕を出して言った。


「この程度の音で俺が倒せると思ったか?お前の音がこのドームに届いた

瞬間水の震えを消して、こちらに音を届かせなくしている。

お前達のスキルではこの俺には勝つことすら夢だ。」


そう言って、男がドームを解いた。

耳を押さえながら、相手を睨む響喜に

一歩一歩近づいて行った。

静寂が広がった空気に、男の足音だけが響いていた。

そして男はマスクを外した。


「マスクを外すのは嫌だが、人を殺すんだ、外さないのは礼儀に反する。

さあ、もう動くな。お前の攻撃は俺には効かない、わかったろ。」


ヤバイ!このままじゃ響喜が殺される!

この言葉が頭の中を何度もよぎっては、消えてを繰り返す。

しかし蛇に睨まれた蛙の様にピタッと

固まった足が動かない。


ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバ...

地面に埋められた様に動かない。

頭と足とで、口論を重ねていた。


「動けーー!火の順回転!」


刀が当たる寸前。その寸前で男は、水のバリアを発生させ、刀を止めた。


このまま距離を詰めれば、ずっと俺の射程範囲内。もし後ろに引いたら、

再度この距離に戻す事は至難の技。


響喜がせっかく作ってくれた相手の隙を無駄には出来ない!


「うあああ!」


俺は無茶苦茶に刀を振るい続けた。



響喜は火炎の姿をみて思い出した。

勝つ確率の少ない相手に向かって、

必死で抵抗するその姿。


☆★☆★

響喜の親は有名な作曲家で、音楽を愛する一家だった。

そこに一人っ子として産まれた響喜は

小さな頃から音楽に触れていて、音楽は小さな頃から好きだった。


しかしそんな音楽大好き一家で育っていった響喜は、日を重ねるたびに親との価値観の違いを感じるようになった。


響喜は音楽を娯楽。楽しみの為に愛していた。

しかし親は音楽を金集めの為に愛していると感じたのだった。

音楽の仕事をしているのに、全く楽しく無いような雰囲気で曲を作る、その姿からそう感じた。


響喜はその事を火炎に相談をすると、

いつもは無愛想で冷たい火炎だが、

友達の事にこうも真剣に考えてくれる姿に感動を覚えた。

火炎は真剣に考えた末、


「相手が自分と違っていた考えで、

相手がどんな考え方をしていても、自分の方が正しいと思うなら、そっちを信じればいいんじゃねーか。

って俺は思うけどな。」


照れ隠しなのか、最後を濁らせたその言葉は、しっかりと響喜の心に突き刺さっていた。

この言葉を今まで忘れた事はなかった。あの時は助けてもらった。

★☆★☆


そして今も、助けてもらっている。

響喜はさっきの攻撃でわかった。自分達の今の力では奴に勝てないと。

だから借りはここで返す!


完全に読まれている。こんなに振っているのに、一発もかすりもしない。

当たったろと思うような攻撃ですら当たらないギリギリを回避する。

このままでは、響喜が作ってくれた大切なこの男の隙を無駄にしてしまう。


と!男の後ろから響喜が迫っていた。

響喜のしたい事を俺は悟った。

さっきの作戦と一緒だ。俺が引きつける役になって、そのうちに響喜が奇襲をかける。


!!!

響喜の耳から血が出ている?!

それが不意に目に飛び込んで来た。

さっきの攻撃のダメージだろう。


と!また、響喜の脳に入ったような感覚になった。さっきの感覚と一緒だ。


ありがとな火炎。



流石に響喜でも、分かったのだろう今の攻撃を何度も繰り返しても、相手にダメージは与えられないだろうという事に。ダメージを与えるにはこの男の脳に直接与えなくてはならない。

しかしそれをすれば、今の状態で生きているのは難しい。


響喜のスキル(音)は、音量や範囲によって自分の耳にダメージがはいる。

しかし一定のダメージを超えると、

そのダメージは脳に伝わり、最悪は死に至る。


「やめろおおおお。響喜いいい!」


必死に叫んだ。でも響喜には届かなかった。

やめて欲しかった。声を枯らしてまで叫んだ。でも…でも…間に合わなかった。


死の音楽


[死の音楽(デス・ビート)

響喜の本気の音。相手の脳内で響かせたなら相手は一溜まりも無いが、響喜自身も無傷ではすまない。]


「ぐあああああ」


苦しさに悶える相手。相手はその場から何歩か下がった。


俺はすかさず、倒れた響喜を抱えにいった。


「おい!大丈夫か!」

「フッ何だよその顔は…情けねーぞ。ハア…」

「おい。もうしゃべんな。」


脳内にダメージが入ったのだろう。

頭から血が垂れていた。

苦しさはその顔から伝わって来た。

息をとぎらせながら、吐血をしながら響喜は言葉を続けた。


「おれは、お前に借りを…返したかっただけだ。自分の命の終わりぐらいは自分で分かる…脳がぐちゃぐちゃになっている。もう無理だ…

最後にみるのがお前で良かったぜ…

今まで俺といてくれて

ありがとう楽しかっ…」


そう言って、響喜は俺の腕から滑り落ちた。

目からは一筋の涙がこぼれ落ちた。

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