わたしの砂糖少女

武田修一

砂糖菓子の彼女は、

 彼女は砂糖菓子でできている。

 なめらかに見えるその手は、触るとざらざらとしているし、力を込めればボロボロと崩れ落ちてしまう。彼女が流す涙は甘く、泣くと一部分が溶け落ちる。三日三晩泣いた後は、もう原型が残らない。

 少し余った彼女に新しい砂糖を加える。そうすると、ようやく彼女は元に戻るのだ。そうやって保たれていた。

 でも、きっと、彼女は彼女であって彼女じゃないのだ。わたしが最初に出会った彼女ではない。

 にこりと笑いかけてくる顔は、前と全く変わらないのに、彼女を構成するものはほとんどわたしの知らないものだ。継ぎ足されるたび、補修されるたびに、いつも初めましてに変わる。今まで覚えたものも、覚えた感情も、初期までリセットされて、記憶は抜け落ちてしまう。それでも、彼女がわたしのものだということと、最低限の感情(初期の状態でも喜びの感情が多い気がする)だけは絶対残っているのだ。


 だから、彼女は記憶を失ってもわたしを見ると笑う。

 彼女はわたしのことを少しばかりしか覚えていなくても。

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