第2話



 それから数日が経った。

 有栖の助けもあって円は前と同じように動き回れるほど回復していた。


 すっかり元気になった円だが、自分を助けてくれた少女を放り出していく事も出来ずに未だに洞窟に留まっていた。


「ねぇ、有栖は外に出ないの?」

「どうして? この洞窟の中の方が安全じゃない」

「そうかもしれないけど、でもじゃあ、家族とかは?」

「私に興味ないそうよ」

「え?」



 共に過ごす日々の中では、互いに会話する回数が自然に増えて良き、円はそうと意識せずに有栖の境遇を聞く事が多かった。


 有栖は人とは違う事の出来る、異能を使える人間だった。

 だが、そのせいで住んでいた場所の人々からイジメられて、厄介ばらいされるようにこの洞窟の中に閉じ込められていたらしい。


 家族からも見放され、誰にも助けられる事なくこの洞窟の中で過ごす事になった有栖だが、かつての少女には助けてくれる存在がいた。


 それが有栖が時々口にする雪高という少年の事だった。


 何の特別な力も持たない少年だが、勇気のある彼は有栖をかばって毎日の様に守ってくれていた。


 だが、戦争が始まったせいでその雪高は有栖を守って死んでしまったらしい。


 円は耐えきれず、その話を聞いた時に口を開いていた。


「ねぇ、もしあたしがその戦争の引き金を引いちゃったとしたら……?」

「は? 何言ってるのよ円」

「嘘じゃないわ、本当の事なのよ。実はね……」



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