メモの墓場

タコ君

LBオオタカアーマー訓練


「ホントに殺す気でいいんですね?」


「もちろん。本気じゃなきゃ意味ないよ」







互いに地を踏んだ。

特設の戦闘用の広大な屋内で、その地を踏んだ。


「行くぞッ!」


俺は真っ先に縦真っ直ぐに飛んだ。

予想通りだ、硬いきらめきを持つ殺意の弾丸がすぐ下を掠めて行った。


「流石に読まれましたね、せりゃッ!」


1、2、3発。

この鋭くなった瞳が俺のすぐ後ろを、壁を沿うように飛ぶ俺の間違いなくすぐ後ろに跳んできた銃の弾を確認した。


「危ないなぁっ!」


自分の行動も危なくないとはいえない。

俺はこの足の攻撃に賭けてみることにした。


「うりゃっ!せぃっ!」


無理のある回し蹴りも問題なく出来るのはやはり猛禽類の力か。

しかし。


「ふっ、ほっ、よいせっ!」


流石曲がってもオオカミ、

時に避け、時に弾く。


「キミ、中々卑怯じゃないか!?」


当たりそうで当たらない、当たっているようでも弾かれる連撃の会心も、すべて化かされるかのようにすり抜けていく。


「飛ぶ貴方に言われたくないッ!」


おぉう!?

ゼロ距離の弾丸が顔横スレッスレ5センチを駆け抜けて行った。


「あっぶな!全く野蛮だね?」


「えぇ危ないですね。“まだ”」



まだ?

そう言おうとしたときには遅かった。


パキィン!


甲高い音と共に目の前のオオカミ少年はくるりと俺の横遠め5メートルをもって、アーマーをへこませて砕けて行った銃弾をやってやったと見る。


「…SlaMpNumッ!」


「おぉっと!」


手元にすっ飛んで来た剣に血はない。

明らかに当たる挙動で今ラッキービーストをSlaMpNumに変形させこちらに呼び寄せた。


さっきからの違和感、それがわかった。



「なるほどわかった。キミ何か知らないけど、涼しい顔が出来る能力があるらしいじゃないか」


「よくおわかりで。ハァッ!」


乱雑に発射された弾は壁と壁と地と天とを忙しく這い回って、迂闊にチーズでも投げ込めば、ネズミが住めるようになるのでは…そう思えるほど濃い弾幕に包まれていた。


いつの間にか。

だ。


「さぁ…どう抜けますか?」


抜ける…


抜ける。


「こりゃクールでいちゃぁ死ぬな?オーケーエイキ、抜けてやろう。」


「ほう…?」


「“強引”になっ!」


俺は迫り来る弾幕の残像ドームの真ん中で叫び、右手のふわふわと沢山ついた羽根を一気に解放して撃った。前方の残像の渦に、滅茶苦茶に。


「そんな事して大丈夫ですか?第一、僕にそれは当たりませんよ?」


「大丈夫…要は出られたらいい。そうだろう?ハァァッ!」


パキィンカキュンパシュッッッ!

何発か自分のアーマーに銃弾が当たる音を聞きながら、未だダメージの無い自らの肉体に安心しながら知恵の翼を羽ばたかせドームに空いた大穴に突っ込んだ。


「なっ…!?」


「な?“出られた”だろう?キミの銃弾は跳ね返る。ならばそこに障害を、それはまるで大きな棒のように大量に入れてしまえばあらぬ方向へ跳ぶか爆発四散さ。無理やりこじ開け無理やり戻って来たぜ…よし10秒だっ!」


「撃ちきるまで5秒、そして…っ!?」


タメに、5秒。


スバババババババッ!


腕から第二波の羽根の嵐を吹かせる。

目の前では、蜃気楼の如く弾幕を避け、そして最後の一発に肩の血を見せた彼が蹌踉めいた。


「トドメだ」


ふらりとしたその脚を、

己の黄色い凶器で掬い、

暴発した二発の風が俺のアーマーの隠された右の爪の刃毀れをさせたその瞬間に、足の爪が解放され首を捉え

俺は王手をかけた。

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メモの墓場 タコ君 @takokun

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