第31話 タフィーくんの企み

 「戻って来たか。ちゃんと全員地球に戻れるぞ」

 私達がおじいちゃんの所に戻ると、おじいちゃんは私達にそう声を掛けて来た。

 「ありがとうございます」

 「サンキュー! 今度、俺達の世界にも来てくれよ!」

 「ありがとう! 僕達が案内するよ」

 「ありがとうございます。……お、お騒がせしました」

 「大事なかったと聞いたけど、本当に無事でよかった」

 私達のお礼の後のセリフの人物に私達は振り向いた。

 「「ロサーノさん!」」

 私達は声を揃えて驚いた。

 「よかったですわ。無事で」

 「ロサーノさんこそ無事でよかった」

 「これで心置きなく帰れるぜ」

 「帰るにあたりお願いがある」

 ティメオさんがそう私達に語り掛けて来た。

 「今回、あなた達を信じ戻る事を許す事になったが条件がある。この世界の事を他言しない事。そして魔法使いの存在を秘密にする事。これが条件だ」

 私達はティメオさんの言葉に頷いた。

 「問題ありませんわ。元々、魔法使いの事は秘め事ですわ」

 言ったところで信じてもらえず、笑われるだけなんだけどね。

 「おじいちゃんも一緒に向こうで過ごせるの?」

 不安げにハル君が聞いた。

 「私か? 心配はいらん。お前達の見張り役として、今まで通り地球で暮らせる事になった。まあ、もう少し地球の事も調べる事になったしな」

 「やったー!」

 「「精霊王、ティメオ様ありがとうございます!」」

 私達はまた揃ってお礼を言うと、二人はにっこりほほ笑んで頷いた。

 「あ、おばあちゃんは?」

 エリーヌさんは、ロサーノさん達の横に立っていた。

 「私はこっちにいる事にしたの。たまに遊びに行くわ」

 「エリーヌはな、地球でおばあちゃんの姿になるのに耐えかねてな。こっちで暮らす事にしたんだ。本当に人騒がせなやつだ」

 「聞こえてるわよ~」

 こっそりと私達に耳打ちするもエリーヌさんがかわいく睨むと、笑いが起こった。

 「ティメオ様、暫くの間また留守しますが、エリーヌの事を宜しくお願いします」

 おじいちゃんは、ティメオさんに頭を下げた。

 「あぁ。ひ孫達を宜しくな」

 おじいちゃんは、頷いた。

 「では帰るか。パルミエ殿、お願い出来るかな?」

 『はい』

 『それじゃ、行こうか』

 『お待ちなさい、タフィー。あなたは行けませんよ』

 何故かつらっとして私達について行こうとするタフィーくんを精霊王は見逃さなかった。

 『何でだよ。パルミエが行くんだからいいだろう?』

 『なりません。パルミエはパートナーが行くから一緒に行くのです』

 『ふーん。パートナーと一緒だったらいいわけだ』

 『そうです。わかりましたか?』

 タフィーくんは素直に頷いた。

 『だってよ、ルナ。一緒に行っていいよな? パートナーなんだから』

 『え? あれって本気だったの? 有効なの!?』

 『当たり前だろう?』

 タフィーくんの発言に周りの皆は驚いた! 私も驚いた!

 いや確かにパートナー契約しましたよ。でも、その後の態度を見たらからかわれたのかと思うじゃん! どうなってんの?

 「ルナ、タフィー殿と契約を交わしたのか?」

 「え? あぁ……よく、わかんない」

 「名前を交わし、誓いを受けたか?」

 おじいちゃんに問われ私は頷いた。どうやらあれは本当に契約だったみたい……。

 「あ、でも、皆のところに連れて行ってくれるっていうから……。後で解約してもって思って……」

 「今は無理だろうな。人間にはパートナーをお願いする事も解約を願いでる事も出来ない。すべては精霊の意思なのだ」

 「え? そうなの?」

 じゃ私は、彼が飽きるまでパートナーなの?

 「じゃ、ルナが選ばれたって事だよね? すごいよ!」

 ハル君が興奮して言った。

 いやたぶん、利用されただけだと思う。異世界に行ってみたかったんじゃないかな? 四人の内誰でもよかったと思うよ。たまたまはぐれた私がいたからで……。

 『タフィー、あなたは! 最初からそのつもりでしたね! 地球に行くために……異世界の者と契約を結ぶなんて!』

 精霊王も私と同じ意見のようです。ですよね~。って、できちゃんだねそんな事が。

 『問題ないだろう? この四人を認めたんだし。パートナーと一緒なら地球に行けるって精霊王の墨付きだろ?』

 『………』

 精霊王も何も言えないみたい。

 だまし討ちだとは言え、タフィーくんが言っているのは間違っていないのだから。って、何この精霊は! ずる賢いんですけど!

 精霊王は一つため息をついた。

 精霊もため息ってつくんだね。

 『わかりました。仕方がありません。リアム、タフィーの事もお願いします』

 「はい。承知しました」

 精霊王はタフィーくんの説得をあっさりあきらめた。

 まあでも、すぐ帰るって言うだろうね。魔力がないんだし。きっと精霊王もそう考えてると思う。

 『宜しくな、ルナ』

 タフィーくんは、ニッコリ微笑んだ。

 その笑顔には騙されませんから!

 『俺様は、ルナと確か……マリアだったか? 二人を連れて行ってやる』

 「それは助かります」

 タフィーくんの申し出に素直におじいちゃんはお願いした。

 「あら、ありがとうございます。宜しくお願い致しますわ」

 マリアさんのお礼にタフィーくんは、満足げに頷いた。

 「ありがとう。宜しく」

 「任せておけ!」

 私もお礼を言うと嬉しそうに返事を返して来た。頼られるのは嬉しいらしい。

 「では、精霊王、ティメオ様、行ってきます」

 おじいちゃんはそう言ってふわっと浮き上がった。それを合図に皆空へ飛び立つ。私達は地上にいる皆に手を振り、見送られながら次元を通り地球に無事戻った――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る