第27話 新たな問題
私はもうおじいちゃんを信じていいのかわからなくなった。
「なんだと! そんな事まで出来るのか!」
突然の大きな声に私はビクッとなった。まだおじいちゃんの報告は続いていたみたい。
「はい。地球の人間は、道具で病気を治せます」
病気? もしかして道具って手術の事かな? 私達にとっては普通だけど。むしろ魔法でちょちょいのちょいって治しちゃう方が凄いんですけど!?
「驚く事かしら?」
マリアさんもきっと同じ意見に違いない。
「ちょっとあなた! どういう事?」
そう言ったのはエリーヌさん――おばあちゃんです! え? 地球に住んでいたんだよね? 何で手術の事知らないの?
「さっきから大人しく聞いていれば、私について来たのは父さんに地球の調査を頼まれたからだったのね! 私はついで!? 酷いわ!」
あ、手術の事じゃなかったのね。エリーヌさんにも内緒で調べていたんだ! って、密偵の為に妻までも利用するなんて! これ、地球に無事に私達帰れないんじゃ……。
「何を言う違う! 逆だ! エリーヌをつれて地球に行くと話したら調べる様に頼まれただけだ!」
「まあ! 父さんに言ってあったの? 酷いじゃない!」
「何を言っている。心配するだろうが」
「心配させる為に向こうへ行ったのよ!」
夫婦喧嘩? が始まったんですけど。エリーヌさん、心配のさせ方が凄いですね。まあこの世界にいては心配させようがないのかもしれないけど……。精霊たちが逐一報告しそうだもんね。
『なぁ。ベニートの疑いは晴れたんだよな? 本から出さなくていいのか?』
おじいちゃん達の喧嘩を止めたのは、タフィーくんだった。
「そ、そうだったな」
その言葉で慌ててティメオさんは、本を地面に置き右手を出すと真横に振った。すると本がキラキラと輝きだして目の前に男性が現れた!
多分この人がアメリアさんのお兄さんのベニートさんに違いない! やっと解放されたんだ。よかった。
しかし、このタフィーくんはどっちの味方なんだろう?
ベニートさんは、アメリアさんと同じ色のマントを纏っていた。
「兄さん!」
「アメリア……」
無事に本から出来たベニートさんにアメリアさんは抱き着く。感動の再会ってやつだね。
「感動ですわね」
マリアさんも私と同じく感動したみたい。
「誤解だったようだ。すまない」
「いえ。誤解が解けてよかったです」
ティメオさんの言葉に首を横に振ってベニートさんが答えた。これでこの件は方が付いたはね。
『よかったな。で、アメリアはどうするんだ?』
うん? どうするとは……もしかして、本を持ち出した事を言っているの? うまくまとまったのに!
「アメリアをどうするとは?」
『兄の無実を証明する為に、本を奪い逃走した』
ベニートが聞くと、正直にというか淡々とタフィーくんは答えた。
「な! なんてバカな事を!」
「ごめんなさい……」
「許してあげられないかな? 悪気があったわけじゃないし……」
ハル君が見かねてそう言った。私もそう思う。アメリアさんがやった事は確かに悪い事だけど、命がけだったのよね? 訪問者以外の人はこの世界に出なた事なかったのに、助けてもらう為におじいちゃんがいる地球に来た。
でもまあ、お咎めなしってわけにはいかないのかな?
「違う世界のあなた達が口を挟む問題ではない」
クレタスさんがそう言う。
この人はきっと私達の事をよく思ってないよね……。さっきから私達には関係ないって答え返して来るし。
「は? 何言ってんだよ! 俺達は巻き込まれてここに来たようなもんじゃん!」
またもやカナ君が反撃している。
どちらかというと、自分から首を突っ込んだんだけどね……。まあ遅かれ早かれ、おじいちゃんを訪ねて来たのならアメリアさんには出会っていたとは思うけど。
おじいちゃんが何か言ってくれれば……。
『だな。ルナが本を持っていたのだし。で、この四人もどうする?』
って、どうするってどういう事? あなた、私だけでも助けてやるって言ってなかったっけ? どう聞いても味方発言じゃないんですけど!
おじいちゃん、何とか言ってよ!
三人を見れば、え! という顔つきだ。
『そうですね。このまま帰す訳にもいきませんね。地球に戻った後の事を考えれば、何か手をうつ事が必要でしょう』
どういう事?
私は精霊王の言っている意味がわからないんですけど! 私達が何をするっていうのよ!
「その件に関しては心配ないかと」
やっとおじいちゃんが反論してくれた!
助けてくれる気があるんだよね?
「どうしてそう言い切れる」
「地球の人間は魔法を使えないだけではなく、存在すら知らないからです。彼らが何かを言ったとしても誰も信じないでしょう」
ティメオさんの質問におじいちゃんはそう答えてくれた。よかった。私達の味方みたい。私は安堵する。
おじいちゃんは、私達を捕らえて連れて来たというつもりはなかったみたい。
「いや、しかし……」
「大丈夫よ。魔法使いの事はこれっぽちも信じていないし、そもそも魔法が使えない時点で、ここに来るのは不可能よ」
エリーヌさんも私達に味方してくれた。
『魔法に代わる道具を駆使して生活をしているのでしょう? それで可能かもしれません』
「あーもう! なんでそうなるんだよ! 地球の人間にここを攻めるメリットがあるかよ! 魔法がなくても暮らせてるじゃん!」
二人の疑いの言葉に切れてカナ君が反撃した!
心配しなくても次元を超えるモノは開発されてないんだけどね。宇宙でさえこれからだって思っているし。まあ存在が知れば調査するかもしれないけど、そもそも扉すら見えないからバレようがない! ――と言いたいけど、カナ君のような勇気はない。
「あるから来たのではないか? 違う世界の人間を助ける為だけに、わざわざここに来たというのか?」
『何か情報を持ち帰るつもりだったのではないのですか? 自分で次元さえ移動できないのに、危険も顧みずここに来た理由はなんでしょう?』
ティメオさんと精霊王は口々に言った。
そういう事か! 私達は赤の他人なのに何故アメリアさんを助けたんだって事ね! おじいちゃんとエリーヌさんの孫がいるって事知らないから!
三人も自分達を信じてもらえない理由がやっとわかったって顔をしている。
おじいちゃんと約束したから言ってなかったんだね! 多分カナ君が言ったところで信じないんからおじいちゃん説明して! 私は心の中で願った。
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