第26話 おじいちゃんは敵?味方?
私達はやばい! と思った。カナ君とハル君が顔を見合わせ頷いている。
「なあ、その精霊の言う通りばあ……エリーヌさんを先に確認してもよくね……じゃなくて、よくないですか?」
私達はカナ君の言葉にうんうんと頷く。
「君達には関係ない」
いや、大いにありますから!
「なぜ確認をいたしませんの? 何か不都合でも?」
「不都合? そんなものない。どうして君達の言う事を聞かなくてはいけないと言っているだけだ」
クレタスさんはそう言い返して来た。
まあ確かに不審者に言われてもしないかもしれないけど……。
「はあ? 俺じゃなくてあの精霊が言っていただろう!」
「まあ、人をじゃなくて精霊でも指を指すものではありませんわ!」
ビシッとタフィーくんを指差したカナ君の手をパシッと叩くようにマリアさんは下ろした。
「あのな、今、そんな細かい事いいだろう?」
「よくありませんわ! 第一印象は大切なのですよ!」
「それを言ったら僕達きっと最悪だと思うけど……」
なんだろう? 何か違和感があるんだよね……。あれだ! カナ君とハル君がウィザードの格好だからだ! いやこの世界だときっと見た目は違和感がないかもしれないけど、普段の性格が二人の設定と真逆みたいな感じだから違和感が半端ない。
シマールはきつめな口調のはずなのに、今は僕って言ってるし、スターリーは無口なのにめちゃくちゃしゃべっている! うん。何か変。あぁウィザードのイメージが壊れる!
っは! そうじゃなくて、この状況をどうにかしなくちゃいけないんだった!
「もう、おじいちゃん早く戻って来て……」
「精霊王! ティメオ様!」
空から声が聞こえ顔を上げると、もの凄いスピードでこっちに向かって来る人影あった。あれはおじいちゃんだ! って、あのスピードはここでは普通なのね……。
おじいちゃんはあっという間に地上に降り立った。おじいちゃんの横には見慣れない女性がいた。
長いふんわりした金髪を耳の上あたりで一つに結び、耳には大きな輪のピアスをしていて、クレタスさんと同じレモン色のマントを付けていた。
もしかしてこの女性がエリーヌさん――おばあちゃん!?
若~い。信じられないよ……。
「もう遅いよ!」
「待ちくたびれましたわ!」
「俺達の話が全然伝わらないんだけど!」
三人は口々におじいちゃんに言い寄る。
「すまぬ。エリーヌに説明していて少し遅くなった」
そう言って私達に謝る姿をボー然とクレタスさん初め、驚いて見つめていた。
「よかった。もうだめかとおもいました」
アメリアさんも安堵したようです。
『リアム。この者達ってあんたの客人?』
「これはタフィー殿。そうです。私の客人達です」
おじいちゃんは頷いて肯定する。
「エリーヌ……帰ってきていたのか!」
やっとティメオさんがそう口にした。
「すみません。こんな事になるなんて思っていなくて。確かにベニートさんに精霊の本を届ける様にお願いしました」
「何だと! では、昨日のうちに戻って来ていたのか!」
エリーヌさんの言葉に驚いてティメオさんは叫ぶ。
ベニートさんって方が、アメリアさんのお兄さんのようだね。あぁ、これで一安心。
『何故帰って来たのを黙っていたのです』
「精霊の本にしまってあった精霊の玉が欲しくて。リアムが来たら一緒に挨拶に行こうとは思っていたのよ」
精霊王の言葉にそうエリーヌさんがそう返すと、それを聞いた三人は驚いた顔をする。
「かなりの量を持っていかなかったか? 誰かに奪われたのか?」
「いえ、使ってしまったのです」
その答えに更に驚く。
なるほど。魔力があれば精霊の玉はほとんど使わないもんね。どれくらい持って行ったかわからないけど、取りに来るほど使ってしまった事に驚いているのね。
地球がどんなところか知らないんだ。
「本当にそこまで魔力が少ない所だったのか? で、リアム頼んでおいた件は?」
「はい。では、まずご報告から致します」
うん? ご報告? あれ? アメリアさんのお兄さんはどうするの?
「地球は精霊魂の確認は出来ましたが、精霊の確認はしておりません」
「何だと? では地球の人間達はどのようにして暮らしていたのだ?」
「はい。彼らは魔法を捨てたか、または魔法文化が滅びたようで、違う文明を築いておりました。魔法を使わずとも道具を使い生活をしておりました」
おじいちゃんは、淡々とティメオさんに報告をしている。
……どういう事? 家出じゃなかったっけ?
私が困惑するもおじいちゃんは報告を続けている。
「マジックアイテムのみという事か?」
「いえ。魔法関係は一切使っておりませんでした。魔力を宿さない道具で空を飛び、色んな物を作り上げておりました」
その報告には私達地球人以外の人達は驚いていた。まあ、そうだよね。私も電気を使わずに、私達と同じような生活をしていたら驚くもん。
アメリアさんは地球に行ったけど、魔力が少ないって事しか知らなかっただろうし。
「そんな事が可能だとは……。では地球の人間に魔法を使える者は存在しないという事だな」
「はい。彼らを除いては確認をしておりません」
と、おじいちゃんは私達を紹介した!
えぇ!? どういう事? まるで地球の魔法使いを連れてきました的は発言なんですけど!?
どうしよう! 私達騙されて連れて来られたみたい!
「マリアさん……」
どうしようと言おうと思って振り向いたら、目がキラキラしていた。ロサーノさんに連れてかれそうになった時の様に。ってハル君とカナ君もじゃん!
「いやいやいや、なんで喜んでいるのよ! このままだと私達今度こそ本の中かもしれないんだよ! ……もしかして、魔法の牢獄に入ってみたいと思っているわけじゃないよね?」
恐ろしい考えが浮かんで聞いた。逃げる事も出来ずいつ出られるかもわからない魔法の牢獄に入ってみたいなんて思ってないよね?! 魔法の牢獄って響きはいいけど、入れられたらどうにも出来ないんだからね!
「別にそんな事思ってねぇよ」
カナ君の言葉に二人も頷き、私は安堵する。
「何かファンタジーの主人公になった気分じゃない?」
ハル君は、凄く呑気な事を言い出した。って皆そんな感じですか!?
「何も心配いりませんわ。敵を欺くにはまず味方からですわ!」
敵って……ティメオさんは敵ですか……。
「そうそう。おじいちゃんも言っていたじゃん。どんな事があっても信じろって」
カナ君がそう言うと二人もそうそうと相槌を打った。
そんな楽観的で大丈夫なの? 私は不安でしょうがないんだけど……。
精霊の本から出て来て、アメリアさんと出会ったのは偶然でも、最初からここには戻って来る予定だったよね。
もしかして最初から……少なくともハル君とカナ君は一緒に連れて行くつもりだったのかも。確かに試験に合格してここに来たけど、おじいちゃんは三人の事をよく知っていて扱うのうまい! アメリアさん達にしてもあの時にどういう反応をするか大体わかっていたのかもしれない……。――計画的に連れてこられた!?
私は嫌な答えに至ってしまう。
本当に仕組まれて連れて来られていたとしたら……。
『心配するな。いざとなったらルナだけは助けるから』
近くに来てボソッとタフィーくんは私に呟いた!
何と不吉な事を! って、何故私だけ? え? パートナーの件ってマジだったとか?
もう何が何だかわからないよ!!
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