第三章 2話

ラウラ2

ブルックリンに次元移動に掛かるエネルギー消費量を教える。もともと夫婦は宇宙船のエネルギーをあまり使わなかったということもあり。大部分惑星間航行や次元ワープに使用できた。


ブルックリンが欲しがったのは仲間だった。条件としてはヒューマンであり特殊な技能を持つもの、忠誠心などは二の次という事だった。


能力という側面から考えると、存在する次元には二つの両極がある。


一つは魔術、魔法に分類されるもので外的な因子を利用して、超常的な現象を引き起こす。魔法領域次元系。


もう一つは、人間そのものに宿る能力。外的な因子を利用せず、超常的な現象を引き起こす。超能力領域次元系。


どちらも一長一短である。


魔法系列に属するならば、理論上はほぼ無制限に超常的な力を使用できる、また個人が使用できる種類も豊富である。習得修練が容易である為人物の補填がし易い。


しかし魔術使用準備に時間が掛かる事や仕様環境によって使用できない事などの欠点も存在する。またアンチマジックやマジックキャンセルなどの魔術も存在するために決定打に欠ける印象がある。


勿論、突出した才能の魔法の域に達した魔術はそれとは全くの別物ではある。


超能力系列に属するならば、ジーニアス、タレント、キャパシティ、アビリティ等々、身体的な能力が理論値を大きく越えるような超能力や特定のモノや現象を発生消失させる超能力等が存在する。


また、限定的に他に当てはまらず効果のリミットが外れた威力の、超越的な存在にも作用する特殊能力を持つモノも極々稀に現れる。


特徴としては産まれた瞬間から超能力者である場合が多い。それぞれの自身の超能力に付いて熟知熟練の域である。使用準備時間が極めて短く、場所などが限定され難い等の利点がある。


欠点は突出した一点集中型の能力のため他の部分が脆弱であり多角的な攻撃に弱い場合が多い事。超能力の発動時間が基本的に存在する事。同能力の欠員補充が困難で有ることが挙げられる。


ある程度の人材がいそうな次元の資料を作成し、まとめる。


こんな下らない作業をイライラしながら続ける。今すぐに殺してしまいたい準主人であるが命令権は存在しているので従わざるを得ない。


基本的には、主人の命に関する条項・命令≧マスターコンピューター》越えられない壁》準主人の命に関する条項・命令》主人への基本的な行動理念》準主人への基本的な行動理念となるからだ。


坊ちゃんにとって倒すべき相手を、より強大にしてしまうのではないのか?という疑問を持って私は資料をブルックリンに手渡した。


そして私はいつまでブルックリンに仕え続けなければならないのだろうか?


**********************



目の前には絶世の美女のミューズがミオリの前に立ちはだかっていた。ミオリもその足の早さに驚き流石に立ち止まる。


「中々早いじゃない、私結構足速いのに先回りするなんて、、」


「聞いて下さい。貴女も薄々気が付いていたのでしょう、だから口に出せなかったのしょう」


図星である、付き合いが長いアルドの事。分からないはずがなかった。


「、、、」


「彼はまたこの町に戻って来ます。しかし今後もここに根を下ろすことはないと断言できます。彼は歩き続けなければ【生きる目的を求め続けなければ】ならないと思っているから。」


「、、短い付き合いの癖にアイツを語らないでよ!私の方がアイツに詳しいんだから!!」


ミューズは首を振ると、ミオリに告げる。


「彼がここに戻ってきた理由はあなたが填めているその左薬指のリングにあります。彼に返して上げて欲しいのです。」


それを聞くとミオリは目つきを鋭くし、薬指を隠してミューズを睨み付ける。


「、、アンタ、アルドの何なのよ!私からこれも奪う気なの?!ふざけないで。」


「私は何も奪ってなどいません、もともとのモノを持ち主に戻したいだけです。もし奪われたと感じたのならそれは【持っていると】勘違いしていただけです。」


「────」


流石にいきなり戦う事はなかったが、ミオリは血が逆流するかのような怒りがこみ上げる。最早この女は自分の敵であると認識する。痛い目を見せて、アルドの隣にいるのは自分だと思わせるしかなかった。


ミオリはガンリュウの娘ということもあり、ガンリュウやアルドに次いで強く、今まで何人もの男の猛者と勝負をして勝ち続けてきた自負があった。


「アルドってさ、が後ろを守って上げないと怪我しちゃう無鉄砲だからさ。強さって重要だと思うのよね。どう思う?」


ミューズはいきなり方向性が変わったのを疑問に思い、そしてミオリが出すであろう会話の着地点を予想して、なるほどと了承する。


「そうですね、彼の隣にいるのはでなければならないと思います。彼は冒険者兼旅人ですし、一緒に旅をするのならば必要な技能でしょう。」


「指輪は勝っても負けも、アルドに返すわ。でも負けたらガンリュウ邸に残って父さんの手伝いをするって条件はどうかしら?」


「問題ありませんよ。私が負けた場合はガンリュウ邸に残りましょう。」


ミオリは頷くとミューズを秘密の稽古場に案内した。


周りからは見られない林の中、槍を打ち込み続けたであろう痕跡が所々にある木々が並ぶ。それは血の滲む努力をした事がミューズにすら分かるほどの跡がそこら中にあった。


「私は天才じゃなかった、、小さい頃から私はそう思っていた。何をしても何回も練習をしないと出来ない事があるし、物覚えも悪い。自分には槍の才能なんてないのになんで父さんは私に槍を教えるのか分からなかった。」


「?」


「同じ時期にお父さんが連れてきたアルドは凄い奴だったんだ。何をやっても次の日には出来ているようになっていたし、天才ってアルドの事だと思っていたんだ」


クルクルと槍を回しトンと前へ突き出すミオリ。


「でも違った」


「アイツは夜になって寝静まるとここに来てずっと朝に教わった事を休みなく反復して練習していたんだ。筋が裂けて、骨が折れてもぶっ続けで、強くなりたい一心で、、」


ミューズは黙って話を聞く。他ならないアルドの過去であるし、興味がある話だった。話をしながらミオリはミューズに木の槍を投げ渡す。


「最初はアルドが特異体質だから、オーバーワークし続けても平気だから、だと考えていたんだ。でも痛みは感じてるんだ。痛い筈なんだ、、」


「考えれば考えるほど、凄いなって思うようになって、、流れ的に私もここで練習するようなったら、もう、駄目だよね。本当、好きになっちゃってた。」


「本当、人の気持ちは分からない。」


ミオリは夜空を見上げると同時に今まで時間稼ぎに語った事で魔術構成図は、かなりよい感じに仕上がったと内心ガッツポーズをする。


ミオリは勝利を確信すると持っていた赤色のハンカチを右の上腕に巻き付ける。


「コレは勝ちたい時に付ける、ガンリュウ家のおまじないでね。アルドは何というか〈ものぐさ〉だから、、」


付け終えると仕切り直し、準備が終わったと頷き合う。


「じゃあ始めましょうか!!」


第一声、有無を言わさずミオリは魔術を発動させる。先程まで手には魔石など持っていなかったはずだが、現実に握り締め、魔術を成功させようとする。


檻蕾おりつぼみ


ミューズの周りの足元から八本の棒が背丈まで伸びて、ミューズを閉じ込める。さながらそれは木の根の檻のようなもので強度はかなり高い。


「やぁ!」


同時にミオリは木の槍をミューズ目掛けて突き出す。魔術と共に使用すれば、ほぼ例外なく必中を思わせる突きである。


こうして女同士の闘いは幕を開けた。




ガンリュウとアルドはガンリュウ邸で話していた。


「あの嬢ちゃん、、あれは人間であって人間じゃないな、、ナガレモノか?いやに隙がない、隙はあるが次の瞬間ヤられるイメージしか湧いてこないからな、、」


「当たりだ。俺もだがナガレモノらしい。もし、戦えば個人では絶対勝てないだろうな、、今のままじゃ、、」


ガンリュウは鍋の猪の肉を摘まみながら、呟く。


「、、もっと強くなりたいのか?今後のために。」


「、、、」


ガンリュウは薄く笑う。


「力を闇雲に求めないのは褒めておこう。自分の肉体の限界を越えた、過剰な力は基本的には必要ない。自分よりも強い敵に勝つために必要なのは知恵と想像力、実行力だろうさ」


「勇気とかってのは?」


「勝つための条件の土台に含まれる事が多いから省いた。勇気を条件にする奴は《勝ち》を想定していない場合が多いからな。」


アルドは反論しようとするが始めにガンリュウに止められる。


「弱者が大切なモノを護る為勇気を出す。素晴らしい、燃えるシーンだが実際勝てるか?勝てんよ。だからこそ《勝つ》準備をしておかなければならない、それこそ【大切なモノを護る為に】な。」


アルドは《勝つ》とは何なのか考えたが、闘いや戦いによって何かを得た、守れたのならばそれが《勝つ》という事なのだろう。


ガチン、ガチン。


同じ猪の肉を引き当て空気が張り詰めるアルドとガンリュウ、瞬間アルドは近場のフォークをその肉に突き立てた。


「いってたよな《勝つ》為には実行力が必要だと。」


箸同士の引き合いにフォークの参戦は均衡を崩すのには十分すぎた、ガンリュウの丸太の様な腕と握力を持ってしてもアルドにみるみる引っ張られる。


「想像力や知恵もな、、ペッペッペッ!」


ガンリュウの唾が猪の肉に留まらず鍋の中にまで入る始末。無理をして食べても楽しめなくては意味がない、正直食欲が無くなったアルド。


「、、汚ねぇぞオヤジ。」


「さてと、長話もアレだ。二人を迎えに行ってやれ。正直お前がいかねばなるまい。」


「??、訳が分からないが確かに遅い気がするな、、」


アルドはご飯だけを口の中に入れて自分の椀を空にすると立ち上がり、ミューズとミオリが行ったであろう場所に向かう。



林の中、ミオリは驚いた表情を見せる。いつの間にか、木の檻は手刀で破られ木の槍先がミューズの手に捕まれているのだから。


「、、なんで?、、完璧な間合いだったのに。ヤバそうな奴だとは思ったけど、、」


「正直驚きました。もしコレが人であったのなら、貴方はほぼ例外なくこの攻撃を命中させていたでしょう。しかし私には通じません、さあ降参してその指輪を渡して下さい。」


「まだ始まったばかりでしょ、私を舐めないで!」


アルド程ではないが前左右の攻撃やそれをフェイントにした突きを放つミオリ。アルドが力とスピードを主体にした槍術であるのなら、ミオリはスピードとテクニックを駆使した槍術であった。


だがフェイントなどを織り交ぜた、人間同士に有効な攻撃はアンドロイドには相性が悪かった。アンドロイドには反応速度を超えるスピードか想像を越えるほどの力を持った攻撃こそが最も有効な攻撃方法なのだから。


一分にも満たない時間でミオリはミューズの強さを想定から更に引き上げる。ガンリュウですら勝てないであろう化け物じみた相手だと、再確認する。


勝てる筈がないー


手加減をされているー


だけどー


だけどー


「私は負けられない!!」


時間にして五分程、息も上がる、足元もフラつく。だがその目に宿る闘志は未だ衰えない。ミューズは手加減しながら、怪我をさせないように槍を振るう。


カツン!カツン。


常人であれば当たったであろうそれを、ミオリは綺麗に受け流し更にそれを軸に攻撃に転じようとするが、ミューズは距離を取った為回復のために追撃はさける。


「貴女凄いですね。槍術では無く、その精神力。とうに肉体は立っていられる状態では無いのに、、」


「お褒めいただきありがとう。でもあんまり調子に乗っていると、、綺麗な顔に青胆出来るわよ。」


ハアハア。


ミューズはミオリの挑発を無視し、相手の出方を待つ。ミオリはアルドの家族である、そしてミオリが傷付けば自分の責任は免れない。アルドに嫌われる、そんな事が絶対にあってはならないのだから。


ミオリを分析するに、肉体の限界は近く一度倒れれば立ち上がれるとは思えない。ならば足を軽く払って倒す事を考える。


ミオリが浅く腰を下ろした瞬間突撃する。


ビュン!


「檻蕾!」


ミオリは再度魔術を放ちと同時に、突きを放つ。


ミューズは魔術を払おうと左手を魔術の迎撃用に、右手をミオリの足を払うために木の槍を振るう。


カコン!


「?!」


ミューズが足を払おうとした瞬間、ミオリの足元に木の根が生え足を護る。ミオリは【自分に魔術を使ったのだ】ミオリの攻撃を回避するミューズ。次の瞬間には魔術がキャンセルされ足が自由になったミオリが更に魔術を放つ。


「太刀風」


ミオリが放った突きが【魔術によって軌道を急激に変え】ミューズを襲う。それをギリギリ槍で回避し、ミューズは槍を思い切り弾き返す。


ドウ。ドサッ。


仰向けで吹き飛ぶミオリ。倒れたままピクリとも動かない。失神しているのかも知れない。


「、、驚きました。こちらの行動が完全に読まれていた事。そして、続けて魔術を成功させた集中力に。」


だが終わったとミューズはミオリに近付こうとした時。ミオリはヨロヨロと立ち上がり、木の槍を支えに立ち上がる。


「何故立ち上がるのですか?もう貴方に勝ちの目は無いのに?」


「それが、、何、、勝手に決めないで、、まだ闘えるわよ、、、」


「、、、」


「私は負けない。だってアイツを諦められないからー貴方は違うの?」


違わない。しかし、その勝率そのものが違った、ミューズとミオリの実力差では賭にすらならない。


「、、」


「口約束で何時でも破れるからこそ、破らない破れない。私の【好き】はそんなに簡単なもんじゃない。」


再度構え直すミオリ。今だに目にはギラギラとした闘志が宿っている。ミューズは仕方がないと閉め技で失神させる方法を選び次に攻撃に移ろうとする。


ザッザッザ。



足音が聞こえた後、姿を見せたのはアルドだった。


アルドはボロボロのミオリを見る、そして指輪を入手していないと、首を振るミューズを見る。


「そうか。」


アルドは構えるミオリに近付く。ミオリはアルドを見ると安心したように抱き付く。ミューズは頬を膨らませるがアルドは片手で制止させる。


「分かった。指輪はお前のだ。」


「私、、負けてないから、、まけて、、」


糸が切れたように動かなくなるミオリを必死に抱えると、アルドはミオリを背負う。ミオリは気絶していた。


「この指輪は子供の頃、ミオリが滅茶苦茶欲しがっていた指輪でな、、ガンリュウから貰ったんだ。コレが遺物だったとは思わなかった。」


「ガンリュウさんはアルド君には渡さなかったのですか?」


「レーザーグレイブを貰ったしな、、ガンリュウは拾ったものだとしか言わなかったし、ミオリは俺のだって知っていたんだな、、」


勝手にアルドのモノをあげたのは如何なものかとミューズは思ったが、一見高価そうには見えないし、アルドの性格上無くしそうではあった。


「もう一つ有るんだ。そっちだけでも良いだろ。戻ろう。」


「はい。」


ミオリを倒して指輪を手に入れられ無かったのを、ミューズは不満に思いながら帰ろうとする。指輪が手に入るにしてもコレでは完全に、無理矢理指輪を奪おうとした只の悪役である。


「ミューズ損な役回りさせてすまなかった。」


ミューズはえっと驚く。


「いえ(ニコリ)」


ミューズは軽くなった気持ちを抱え、ガンリュウ邸に戻った。


ガンリュウ邸に戻るとガンリュウが腕を組みまた玄関で仁王立ちをしていた。ガンリュウはアルドに背負われたミオリを抱えると頷いてアルド達に言う。


「暫く広間で待て、儂もすぐに行く。」


アルドとミューズは大人しく広間で待つことにする。時間にしてみれば五分ほどであろうか。


「待たせてすまない。」


ガンリュウの手には拳より大きめのキューブが握られていた。ミューズは思い当たる遺物の名前を出す。


「ファクトリーキューブですね。」


「不思議な材質で出来ているが、儂には何の反応もしないのでな壊れていると思って倉庫にしまっておいたのだ。家にある不思議なものといえばコレぐらいでな。どうやら当たりらしいな。」


「何なんだコレ。」


ミューズがしたり顔で説明する。


「この装置は物体のスキャンから設計・製造・組み立て、そして保管を行える複合型の製造機械です。例えばここにレーザーグレイブをスキャンして、必要な材料を投入するとレーザーグレイブの複製をキューブ内で作ることが出来ます。またそれを異次元で保管し、何時でも取り出せるというモノですね。」


「凄いな、、」


「しかしレーザーグレイブの材料などは主要部品の代替物が無い状態だと思われるので、作ることが出来ません。また、保管できるのは素材を除いた。合計して5立方メートル程の空間内に限られます。」


アルドはなんだか難しそうな顔つきになる。便利そうなアイテムだが今現在は全く意味のないものであるのだから当然の結末であったろう。


「中には何か入っていないのか?」


「認証システムがありますので、基本的には個人個々の使用になります。クラッキングして無理矢理に使用者を書き換えることは難しくはありませんが、新たに使うためにはプライバシーの観点からデータは全削除が適当だと思われますね。」


「中覗いちゃ駄目か?」


ミューズは別に良いが倫理的な問題だと念を押す。


「ロックの強度から強力な遺物は存在しないようですし、仮にアルド君が使用者でもう使用しない場合、中に保管されているものが自分の下着や他人に知られたくないラブレター等ならば、中身を家族に見せたいと思いますか?」


「家族であってもプライバシーは必要か、、仕方ない削除だな。」


「はい。お聞き入れありがとうございます。」


アルドがキューブを持ち上げると、空中に文字が表示されミューズが文字の内容を説明する。


「新たに登録するためには記憶してあるモノを削除して、保管中の物を分解処理しなければならないと表示されていますので、そこは右側の了承のボタンをタッチして下さい。」


アルドがボタンを押すと横のバーが画面中央に現れ、透明のバーがが赤色のバーに押され左から右へ追いやられていく。


「二~三分分ほどでデータは完全消去されます」


「保管されていたモノを分解処理とか言っていたが再利用とか出来ないのか?」


「出来ます。物質変換出来るものは材料としてストックして保管されるはずです。材料ストックの保管も無限では無いので同じ様な材料は廃棄した方が宜しいでしょうが、、」


「何だか小難しいな、、」


「更にもう一つ言っておかねばならないことがあります。ファクトリーキューブでは復元した物の内部にあるOSなどの複雑なソフトウェアは完全には復元されません。世代的にワンランクの落ちのものを八割複製する程度です。勿論ソフトウェアを創作されるのならば時間さえいただければ、完璧なものを作れますが、かなりの時間を要します。」


戦闘用アンドロイドでは無理だが、汎用型のアンドロイドや支援型のアンドロイドはプログラム作成や、コンピューター制御の機能も搭載しているためかなりの速度でプログラムを作成出来る。プログラムによっては半年から一年は掛かるだろうが、、


話を聞く途中で、ファクトリーキューブの削除が終了したのか画面が切り替わる。


「アルド君は扱いがまだ分からない様なので、私が複製物を作ることにします。使用者の項目を少しいじってもらいって宜しいですか?」


「えっと、、これか?」


「オプションで使用者項目。共有化に標を、、そうです。少し失礼します。」


カチャカチャ!カチャカチャ。


ミューズはアルドの隣に移動すると、両手を使い。数秒で自身の個人登録を済ませる。


「最終確認で了承のボタンを押して下さい。」


アルドは再度、了承のボタンを押す。特にファクトリーキューブには変化は見られないが、登録が完了したのだろう。


「コレは私が持っていても宜しいですか?色々と操作したい事がありまして。」


「俺が持っていてもあまり意味がなさそうだしな。大丈夫だ、ミューズが持っていてくれ。」


「何かありましたら、必ずお返しします。」


ミューズはそう言ってファクトリーキューブを大切に腰のポーチにしまい込んだ。



ー夜


皆が寝静まった頃、ミューズは暗闇の中ファクトリーキューブのセキュリティー強化のため操作画面と向き合っていた。


アルドやガンリュウも薄々は気が付いているとは思うが、ファクトリーキューブは非常に強力な遺物である。何故かー


仮にファクトリーキューブを使用して、ファクトリーキューブを作成するとする。すると材料の入手という事を度外視すれば兵器を大量生産できる製造工場が簡単に作れてしまうのである。


今はアルドもその様な気持ちは全くないので他者の心無い悪用を避けるために、ミューズはセキュリティーを強化して他者に使えないようにしていた。


「一応、工房にあるメディカルマシーンの設計図も記憶にありますし、コレもケーブルで送りましょうか、、」


手首の内側に現れた米粒程の小さい穴に、ファクトリーキューブから現れた通信ケーブルを差し込む。

データ転送は数秒で終了し、ケーブルを素早く取り外す。アルドに見られたら、自分がアンドロイドだと再認識させてしまうのであまりこういう作業はしたくはなかったが、後々の事を考えると今しておかなければならないことだった。


「ガンリュウ邸は中々広いですね。アルド君の安全面が多少心配です。まさか別々の部屋になるとは、、」


同室を頑なに反対したのは当然ミオリだった。顔を真っ赤にして《アルドは前使っていた部屋!ミューズさんは客間で眠って下さい!!》との事。普段からベッドは別々でも同室が多かった為、警護の面は多少不安な点もある。


「かなり材料は残っていますね、、ならば、、」


ミューズはファクトリーキューブの中にブラストカノンの弾のデータを転送する。あとは弾を事前にワンセット程製造しておけばいざという時にブラストカノンの予備弾を追加投入できる。


「明日アルド君に弾の製造の許可を頂きましょう。」


ミューズはアルドの寝顔をスリープ前に見れないことを些か残念に思いながら、待機状態にシフトした。

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