第1-10話 アクセス権限

「まぁこればかりはしかたがねぇな。


にいちゃんがこれに慣れるにはどれくらいの時間がかかるかわからんし、そもそも適合率も0かもしれん。


レイも諦める事だ。」


タコのように頬を膨らましてブーブー言ってるレイ。大学にいる時よりも感情豊かな気がする。


「じゃあ、にいちゃん。どこでもいいからTKBの本体(金属部分)をなるべく手のひら全体を使って触ってくれ。


この金属は接触通信導体って言ってな、触るだけで電子を使って情報伝達ができるんだ。


リセット時には、登録者の承認情報と登録データを流し込む関係上、接点がより多い方が良い。


だったら両手がいいかもしれんが、片手は操作に使うんでな。」


そういいながらおじさんは、テキパキとTHE BEGGININGにドライブTHE ENDを取り付け、コアディスクSHINEを装填した。


そうすると、THE ENDドライブは、一部ガラスのような透明素材を使っているようで中の駆動が見え隠れしており、SHINEのオレンジのディスクが高速回転しているのがよく見えた。


「よし、動作は問題ねぇな。


あとは、にいちゃんが直に《reset all user》って入力して、《exec》キーを押せばリセットが開始される。」


なんだか勿体無いような気持ちも少しあるが、これで全然使えない、使いこなせないんだったら意味がないので僕は素直にタイプして《exec》を押そうとした。


この時何かいつもと違う押下感があった。resetの下りをタイプしている時だった気がする。何というかもたつくというか。


その時は、ドライブが追加されたりしたので内部Utilに影響があったのかな?と思うくらいであった。



さて、


結局のところ、


リセットはできなかった。


帰り道、僕はレイとタコタコ三昧に寄ってスペシャルタコミックスチーズを2人で注文して食べていた。最近出た新メニューらしいが、タコの足が球状の生地から突き出てるどうやって作ったのか皆無なメニューだが、なかなか美味しかった。チーズというかピザ味のたこ焼きだった。美味しくないわけがない。


「なんか、あれだね。


せっかくドライブとディスクもらったのにね。」


『何が起こるかわからんからディスクは一旦抜いて使うんだぞ!!』


おじさんにはそう念押しされたのであった。


あの時、《exec》キーを押した後、

コンソールディスプレイにはこう表示され


登録者管理プログラムを起動します……


申し訳ございませんが、このディスクの登録者データを削除する権限が、あなたのユーザーデータにはありません。

このままご利用いただくか、あるいは管理者、及び初期登録者へご連絡ください。


オペレーションは以上です。


良き1日でありますように。』


何度やってもリセットはおろか、ディスクの権限解除ができなかったのだ。

おじさんやレイも試したが、そもそもこのディスクへのアクセス権限がありません、と門前払いされてしまった。


「気晴らしにさ、


ちょっとバトって行こうか?


この近所、あるんだよね、アレが」


…噂には聞いていたTKBを使ったある裏競技、というかあまり良くないと言われるアレ。


大学内では一部の学生が、中途半端に手を出して痛い目を見たと影でよく噂にもなっている。


半分遊び、半分ギャンブル。


鍵盤遊戯道(ボードマッチ)と言われるスポーツだ。

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