第16話 バトル

正直、人は見た目ではないんだな、と僕は思った。


得点板、いや練習を初めて数分で気づいたことではあった。


ひとまず、タイプポイントの難易度組み合わせは解らなかったので、各々一番近い最初のタイプポイントにダッシュで向かって、タイピングを始めたのは良かった。


そう、ここまでは良かったのだ。


オービタルの人たちは…なんというか急いでなかった。これは舐められているのか?と思ったりもしたが、それは違う。これは後で説明しよう。




よしっ!


もう少しで打ち終わるぞ!!


インカムを通し、空、ミエからも同じような声が聞こえてきたような気がした。



耳につけたインカムに目線が行くわけではないけれど、よそ見してたのには変わりない。



その視線をタイプポイントに戻すと、僕はドキッとした。


やけにゆっくりしてるな、と思っていたおばさんがタイプポイントを挟んだ反対側にいたのだ。


タイプポイントはテーブル上の場所に出たり、直接床に出たりと様々な出現の仕方をするようで、僕がターゲットにしたタイプポイントは床から直接出ていた。


何を言いたいかと言うと、

タイピングに適した場所が「床しかない」のだ。

なので僕は本能的に床に伏してタイピングしていた。



が、おばさんは違った。


片手に持ったキーボードをポイッと顔の前に放り投げたと思ったら、空中で「タイピング」したのだ。



一瞬だ。


本当に一瞬。


見たこともないスピードと指の運びだった。



目の前のタイプポイントには、僕ら側のタイピング進捗とオービタル側のタイピング進捗が表示されていた。未入力の文字は、白。入力済みの文字はグレーになる。


さっきまで真っ白になっていたオービタル側の進捗は一瞬でグレーになり、タイプポイントは一瞬で消滅した。


「まずは1個め、ありがとさんね」


おばさんはニコッとしながら放り投げたキーボードを片手で受け止めた。


得点加算と思われる音が鳴り響く。



これは、

一体なんなんだ。


僕の指は止まるしかなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る