記録書類

回想記録0001

「姉さん、辛いかもしれないけど。堕鍵した人間はもうコチラには戻っては来れないんだよ」


口から血を流し、グッタリとした女の子を抱えながら彼女は言った。

そして、彼女は片手でTHE FREEDOMを叩く。さすが、私とは比べ物にならないくらいの打鍵速度。マスターガードも要らないわけね。


THE FRREDOMから白く暖かい光があたりを包み込んだ。


「姉さんはさ、ひとまず専念してその子を大切に育ててよ。今は狙われると思うし。それでまた落ち着いて。また、その時が来たらさ。今度は正しい道を指し示したらいいんじゃないかな。」


そう言い残して、彼女は光の中へと消えて行った。

完全に光が消える直前、

「今のうちに早く逃げてね」

と小さく声が聞こえた。


それから、私は銀行の通帳とヘソクリと本当に大切なものだけをボストンバッグに詰め、気味が悪いくらい静まり返った、暗く、そして黒い雨が静かに注ぐ街の坂を走り抜けた。


微かな痕跡も残さぬように。

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