第一章 5

「おーい!アンリー!」

「アンリちゃーん!」

「アンリ殿ー!」

 あれからアンリの名前を何回も呼んでいるが、帰ってくるのは森の静寂さだけ。

「まったく……どこに行ったんだ……」

「ね、ねえ。エドワード君。ここらって……」

 メディアが“或こと”を思い出したのか、俺に話しかけてきた。

「ああ。多分あの館があるところだ……」

「エドワード、“あの館”ってなんだ?」

 自分も話に加わりたいのか、デイビッドが話しかけてきた。

「シロツメ荘のことだよ。聞いたことないか?」

「う~~ん……。ないな……」

 まじか。有名な建物なのに。

 仕方ないから、俺はシロツメ荘について説明することにした。


「何年前のことだろうか。この森の近くに若い男が住んでいたんだ。ある日、男はいつも通りこの森に入って木を伐採していたらしい。男は森へ、女は川へ行っていた」

「な、なんか桃太郎みたいだな……」

 デイビットは俺の話に茶々を入れてきた。


 こんな真剣に話をしているのに……。

「もうすぐ日没だ。時間がないから静かにしていてくれ」

 俺は改めて説明を始めた。

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