一場面集め

安城

ちいさな子

 手元のおもちゃから目を離さないまま、

「ねぇ、おとうさん」

 と言う。

 部屋にいるのはきみと私。

 私は聞こえなかったふりをして、ブロックをかみ合わせる。

「出来たよ。どう?」

 作った車を差し出すと、まぁまぁうれしそうに使い始めた。

 しばらくすると少し勢いよく今度は、

「おかあさん、これ……」

 何か頼みかけて、きみは口ごもる。

 小学生が先生を呼び間違えるような、そういう疑似家族的な雰囲気があるのだろう。

 私はまたそ知らぬ顔で積み木を高く重ねていく。きみは恥ずかしいという気持ちをきっともう知っているから。

 大きな声で私の名前を呼ばれた。

「うん?」

「みて、これ!」

「おー、電車。長いね」

 きみの前ではおとうさんにもおかあさんにもなれそうだ。

 つまり、枠にはめられることなく、私は私であるようだ。

 そんな勘違いをさせてくれる無邪気なきみも、これから固まっていくのだろう。

 きみのお母さんにわずかに似た私との関係性も理解していくのだろう。

「トンネル作ろうか?」

「うん!」

 こくんと頷いてきみは鼻水をすすった。

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