太陽の贈り物

カゲトモ

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 “家庭菜園”って聞くとなんとなくおばちゃんとかおじちゃんのイメージがある。または土いじりが趣味のご婦人とか。成人男性がまさか家庭菜園をするとは、当の俺も思わなかった。今や俺のベランダにはプチトマトが赤い実をいくつも付け、数種類のハーブが背を伸ばしていた。

 観賞用のグリーンならまだしも、ベジタブルを育てているだなんて。半年前の俺なら想像していなかっただろう。

「・・・」

 百円均一で購入したインテリアにも見えるジョウロでプランターに朝一の水やり。

 ちょっと見目の良いジョウロを買ったのは悪あがきとかじゃない。ペットボトルの先に取り付けるタイプの方が色々便利なんだろうけど、それがベランダに置かれているよりもこっちの方が成人男性的に良いかと思ったからだ・・・これって悪あがきか?

「今日も暑いな、この分じゃこの辺のまだ青い奴もすぐに赤くなりそうだな。頑張れ」

 飲食店で働いているってこともあってそれなりに食べ物に触れて生きて来たけど、実際育ててみてその生命力に驚かされることが多い。

 当たり前のことかもしれないけど、そうやって分かっているようで分かっていなかったことを再確認できるという点では本当に面白いと思う。趣味で野菜を作ったり花を育てたりする楽しさってこういう事かなって思う。

 そりゃ夏休みの自由研究の常連になるってわけだ。成長も早いし育つ姿が面白いもの。

「・・・いや、あの頃はそうでもなかったか」

 はるか昔の、小学生の夏休みに育てていたアサガオの事を思い出す。そう言えばあの時のアサガオ、俺は枯らしていたんだ。水やりを忘れていて。

「あの頃は遊ぶのに忙しかったからな、今はこうやってゆっくり水やりしてやれるけど」

 結局枯らしてしまったアサガオを学校には持って行けなくて、庭に植えていたアサガオをそこに入れ直して持って行ったんだよなぁ。あの時の母親の顔、それまでに見たことないくらい呆れていた。怒るとかじゃなくて情けないって顔。

 今思えばあのアサガオには悪いことをした。

「お前たちはちゃんと最後まで面倒見るからな」

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