青春

@ninhatto

第1話

 アラームの音で目を覚ます。目覚まし時計を手で探して、アラームを止める。あくびをして、それからゆっくり体を起こす。眼鏡をかけて、洗面所へ向かう。

 顔を洗おうとして、あ、眼鏡かけてるんだった、と隆は気づく。眼鏡をはずし、顔を洗う。

 中学の制服に着替えてリビングに行くと、父親がもう食卓に着いていた。

「おはよう」

「おはよう」

 テレビを見ながら朝食を食べる。テレビでは、アメリカでロケットの打ち上げに失敗したニュースがやっている。

 朝食を食べ終え、自分の部屋に行き、カバンを持って家を出る。

「行ってきます」

「行ってらっしゃい」

 母親に見送られ、いつもの通学路を歩く。

 十五分ほど歩いて学校に着く。下駄箱で靴を履き替え、廊下を歩き、教室に入る。

「よお」

 親友の仁志に挨拶をする。仁志はニヤけながら、

「今日はオナニーしてきた?」

 仁志は下ネタが好きである。

「してねえよ」

 笑って返す。

 教師が教室に入ってきて、朝礼が始まる。

 いつも通りの一日の、始まりである。


「じゃあまた明日な」

 放課後、部活に行く仁志に声をかけられる。

「おう、またな」

 隆は答えて、カバンを持って教室を出る。体育館へ向かう仁志とは反対方向、玄関へ向かう。隆は部活に入っていない。家に帰ってゲームをするのだ。下駄箱で靴を履き替え、学校を出て、今朝来た道を帰る。

 しばらく歩いて、ふと気づく。

 あ、攻略本。

 今ハマっているTVゲームの攻略本を、教室の机の中に置き忘れてきてしまった。カバンの中を見るが、やはりない。

 来た道を引き返す。学校に着き、教室へ向かう。教室に入り、机の中を見ると、

「あった」

 攻略本を手に取り、カバンに入れる。教室を出ようとするが、そこで視線に気づく。

 教室の後ろのほうに女子数人が固まって、こちらを見ている。何だろうと思って見返すと、女子たちに囲まれて、一人の女子がうずくまっている。

「……どうしたの?」

 隆が尋ねると、立っている女子の一人が、

「何でもないよ。帰りなよ」

 そう言われて、気になりつつも教室を出る。

 学校を出て、歩きながら、今見たことについて考える。

 うずくまっていたのは多分、坂本さんというおとなしめの女子だ。立っていたのは竹内さんや佐野さんや、クラスの中心的女子数人。

 何だろう。何か見てはいけないものを見てしまった気がしつつも、次第にゲームのことで脳内が埋まっていく。家に着いた頃には、教室でのことなどすっかり忘れていた。

 夜までゲームをし、夕食を食べ、またゲームをし、少しだけ勉強をして、風呂に入り、ベッドに入る。

 今日もいい日だ。



 男が立っている。

 男が言う。

「世界が終わったよ。全部飲み込まれて消えたよ。やり直してください。やり直してください。やり直して――」

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