死神対話

遠藤幸次

第1話 対話



「――君の話を聞かせて。」





気分がいい。



「――きみのはなしをきかせて。」



だから、気分がいいんだ。


「――きみの、君が生きていた話をきかせて。」


生…………。


 「――さぁ。はやく。」

なんなんだおまえは。


 「ぼくはシニガミ。きみのお話が聞きたい。……いい? ダメ?」

ダメだ。もう全部終わったはずだ、はやくこれも終わらせてくれ。

 「……話さないと、終われない」

ふざけたやつめ、ならどうすれば終わる。

 「君の、話を、聞かせて」

 「君の、全部のお話を、聞かせて」

ずいぶん欲しがるじゃないか。欲深い醜い悪魔め。

 「そうしないと、」

わかってるよ、「終われない」だろ。まったく、不快だよ。話したくもないってのに。

 「……ぼくが聞くから、話をしてほしい」

虫の居所が悪い、だが、ここに居続けるほうがもっと気分が悪くなりそうだ。なんだよここ。


真っ暗でなにもみえない、どこなのか。だれなのか。不思議と恐怖はない。


なんとなく、でも、たぶん、きっと、


 「まず……君の、きみ自身のお話」

? 俺はなんだ。 俺は誰だった?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る