あいみての、、2
あひみての
写真屋さん。
私がまだ女学生の頃、カメラと言えば使い捨てカメラ、世紀の大発明『写ルンです』が庶民の主流でございました。1000円程で購入できる軽くて簡単なカメラ、しかもフラッシュ付き!!ちゃんとした一眼レフを持っていても、お気軽に持ち歩ける『写ルンです』は実に重宝したものです。携帯の価格も手頃になりポケベルから乗り換え始めた時代、携帯にはまだカメラの機能は無かったように記憶しております。あ、そうそうアンテナが付いておりました。キムタクが携帯のアンテナを噛んで引っ張り出しておりました。(収納できるアンテナでございましたね)
お懐かしゅうございます。
女学生の私は両親から仕送りをしていただいておりましたが、趣味に使う分くらいは自分で稼がねばなりません!という事で『実益』『興味』『まかない』この三要素のうち二つ以上を満たすアルバイトを選んで働いておりました。
その要素のうち『実益』『興味』で始めたのが写真屋さんのアルバイトでございました。元来、写真を撮るのは好きでしたし、現像にも興味がありました。そして、自分のフィルムを格安で現像出来るというのが魅力的でございました。スマホで撮影はもちろん加工、修正、虚偽、詐欺まで簡単に出来る昨今では信じられませんが、現像しなければ撮った写真を見ることができない時代でございました。
店長さんは小太りの30代くらいの男性で、フォトショップを使い画像の修正や加工もしてらっしゃいました。某、有名人のファンクラブ用のハガキなども制作しておりましたし、今にもして思うとなかなか先端を行く写真屋さんだったのかもしれません。他にも美人で若いパートさんが3人ほどおりました。(店長の趣味でございましょう)皆さんとても良い方たちで、田舎者丸出しの私にもとても良くしてくださいました。
お仕事内容は至って簡単で、お客様からお預かりしたフィルムを機械で現像し、写真をプリントし、検品し、お客様が引き取りに来られるのを待つ。以上でございました。作業のほとんどは、機会がせっせとやってくれますので、接客と検品が主な仕事でございました。しかし、この検品が、時としてスタッフを悩ませる『道徳』会議となるでした。
と、言いますのも、それがその店の決まりなのか、業界の決まりなのか、はたまた法で定められていたのかは存じあげませんが、『卑猥』『猥褻』の類の写真を検品で確認すると捨ててしまっていたのでございます。うら若き女学生の私にとりましては、思わず顔を覆いたくなるような、覆った指の隙間から二度見するようなお写真もございました…。
そのような写真を現像しに来るのは大抵50代前後の紳士でございました。海外旅行先のホテルの姿見で全裸のご自身をパシャり。陰部のみをパシャり。明らかに違法なお相手との記念撮影。一体このお写真をどうなさるおつもりなのでしょうか?ご自身で鑑賞されるのでしょうか?どなたかに差し上げるのでしょうか??それとも、我々スタッフが検品する事を知っていての所業でございましょうか?もし、そうならばハッキリ申し上げましょう。
「キモー」
「最悪ー」
散々罵られ、爆笑された後、シュレッダーにて粉々になるのです。ええ。そんなものでございます。
少なくともこの時代において、『写真屋さん』の道徳感が世の中の風紀に多少なりとも貢献していたのだと思います。私も数ヶ月ではございますが、厳しい目で取り締まりをいたしておりました。
が、おじ様の恥ずかしい写真などとは比べ物にならないほど驚愕し、その扱いに悩んだお写真がございました。
それは、秋晴れの続くある日、持ち込まれた10本のフィルムから始まったのでございます。いつも通り、現像され、一枚ずつ焼き上がってくるお写真。
そこには、青空、広いグラウンド、赤い帽子、白い帽子、青い帽子、黄色い帽子の小学生、何処にでもある運動会の光景が写っておりました。嗚呼、そんな季節なのですね。そのくらいの気持ちで焼き上がったお写真をパラパラと検品しておりますと、だんだんと違和感を感じてまいりました。数枚ならば、なんて事のない至って普通の小学生の運動会のお写真でございましたが、どのお写真も写っているのは女の子の後ろ姿、そして、それは確信に変わりました。被写体はお尻!!(ブルマー)ではありませんか!!組体操をするお尻、徒競走をするお尻、玉入れをするお尻、騎馬戦をするお尻、大玉を転がすお尻、フォークダンスをするお尻…ブルマーカーニバル!!!!どのお写真も、お尻にピントが合わせられてているのです。この時ばかりは背筋に寒いものを感じました。
10本中9本までがお尻の写真に当てられ、残りの1本が、その方の娘さんと思われる女の子のお写真。
お尻(ブルマー):娘=9:1
なんてこった!!
なんてこった!!
もちろん、皆さんに相談いたしました。一様に不快感をあらわにしたものの、一般的に小学校の後ろ姿は『卑猥』でも『猥褻』でもございません。ただ、ただ、この撮影者の趣味嗜好が嫌悪感を煽っているのでございます。この写真が一枚、道端に落ちていたとして、目を覆う方などいらっしゃらないでしょう。不快に思う方もいらっしゃらないでしょう。かと言って、他人様のお子さんのお尻をこんなに撮影する事を許してよいのでしょうか?
娘さんやご家族に見つかってしまう事はないのでしょうか??
しばしお話合いは続きましたが、結果的にはそのままお渡しする事となりました。その方もお元気ならば、年金を受け取るくらいのお歳になっているのではないかと思います。何事もない人生を送れているのでしょうか?
知る由もございませんが。
そして、便利になり過ぎている昨今、変態が本能のままネットで情報収集し、やりとりをする昨今、お隣の旦那さんは大丈夫かしらん?貴方の息子さんは大丈夫かしらん?
私は世の中の可愛らしく、無防備な婦女子が心配でなりません。
見知らぬ人にファインダーを向けられたならば、お嬢さん、お逃げなさい。
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