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 そして、この人はなんて、穏やかな顔をしているのだろうと思った。

 さなぎは、ここへ来る前に、自宅の鏡で、自分の姿を見た。

 別に、見たくて見た訳じゃあ無い。手洗いへ行った時、洗面台の鏡に映った自分の顔をたまたま見たのだ。

 おかしな顔だった。

 憂鬱と、絶望と、諦めと、虚無感と、そして、少しの期待が表れた、何とも言えない顔をしていた。

 けれど、ひろしは、全く違う顔をしている。

「うん、僕も死ぬつもりだよ」

「失礼ですが、とても、死にたい人の顔にはみえません」

「そうですか。死にたい様には見えないですか。参ったなぁ。僕は死にたいんですが……見えないですかね? 死にたそうに」

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