二人目

9p

「川面(かわも)さなぎです」

「谷野(たにや)ひろしです」

 さなぎと、ひろしは、向かい合い、そろって頭を下げた。

 人気の無い夜の山の中に、同じ目的で、しかも、同じ方法でそれをしようとやって来た赤の他人である二人が自己紹介をし合っている。

 それは、奇妙な様子であった。

(変な感じだわ。一体、コレはどういう状況なのかしら?)

 さなぎは、地面にのたうつロープに視線を向けた。

 ひろしのロープだ。

 さなぎのロープは、まだ、木に吊るされたままだ。

「あのっ!」

 二人は、ぴったりの息で、声を上げた。

「ゴメンなさい、あのっ、何ですか?」

「すみません。何ですか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る