一人目

2p

 さなぎは、一番しっかりしていそうな枝ぶりの木を選ぶと、その枝に、ロープをしっかりと結び付けた。

「これで、よしっと」

 さなぎは、登ったその木の上で、結んだロープを静かに見つめた。

 ロープの先端は輪になっている。

 さなぎは、その輪を見つめている。

 しばらく、そうやっていたが、しかし、いつまでも、そうしている訳にはいかないと、ため息を一つ吐き出し、膝の上に乗せたカバンから缶ビールを取り出してプルトップに指を掛けた。

 そして、缶を力強く握りしめ、一気にビールを喉に流し込む。

 さなぎが初めて飲むビールだ。

 さなぎは、目を、ギュッと目を瞑った。

(頭がクラクラする)

 さなぎは、目頭を押さえ、くぅっ、と唸って、カバンから、もう一本、ビールを取り出し、震える指をプルトップに掛ける。

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