「月色相冠」というこのシリーズを知ったのは実は時系列的には一番後の『アルモニカ』で、そこから無印の『月色相冠』を読み、さらにこの物語に辿り着きました。
そして、果てしない沼にはまりましたありがとうございます(とんだご挨拶)
正統派ファンタジーと見せかけて実は⚪︎⚪︎な一面もあった無印(ネタバレ防止)ではどこか掴みにくい飄々とした、けれど確固として強い青年であったユーレ国の軍人でナイトの称号を持つヴィダ。その彼がどうして最高神官サプレマの少女フリッガと縁を得たのか。そして、それとはまた別に、彼がどうしてナイトの称号を得るに至ったのか。
そのきっかけとなるのは、天涯孤独となった彼の面倒を見ることになった誰よりも王と王妃の信頼の厚いナイト、フォルセティ=トロイエ。どこか軽薄に見える彼の態度にヴィダは反発しながらも、やがて少しずつ彼を知ってその背を追っていく。
英雄と呼ばれる彼の別の横顔はまた後の物語で語られていくのですが、兎にも角にも彼がヴィダに残したものが大き過ぎて、読むたびに情緒が壊れて涙腺が決壊してしまうんですよこれが!
そのシーン自体はなんというか、小説であるからして音は当然ないわけですが、それでもまるで無声映画のように静かに進みながら、突然鮮やかに色づいて見えて聴こえる。読むたびにそんな体験ができる稀有なワンシーン。
ぜひ本編を読んだ上でこちらを読み、あの鋼メンタルがどうやって作り上げられたのか、その背景にあるごく繊細な彼の内面を知ってヴィダ沼に嵌っていただきたい一作です。
その後『アルモニカ』を読むとまたアレなのでしてね!!(ネタバレにつき自粛)