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「ございましたー・・・」

 安心だって思ったのに。今俺の手元にあるのは回覧板・・・うっ!!

 いや、俺が勝手に勘違いしたのに回覧板に怒るのは筋違いだ! うん! でもっ!

「くっ」

 お兄ちゃん早く来ピンポーン!

「はいっ!!」

 またしても音が鳴り終わる前に扉を開けるとそこにあったのは少し驚いたような表情で。

「お待たせいたしましたっ!」

 一拍置いて返って来たのは爽やかな笑顔と白い歯、それから謝罪の言葉だった。

「いやいやとんでもない」

 時間を見たらお兄ちゃんが言っていた時間丁度だし、こっちの方が驚かせて申し訳ないくらいだ。

「今日も暑いですねー」

「ねー、日々最高記録を更新しているんだってね」

「らしいですね。いつまでこの暑さは続くんでしょうか」

 その話題とは裏腹にお兄ちゃんはとても爽やかだ。額から滝のように流れる汗を除いて。

「これだけ暑いと仕事大変なんじゃない?」 

 ポロシャツで汗を拭ったお兄ちゃんがサインをした伝表を受け取りながら大きく頷いた。

「この暑さだとちょっと辛いですね!」

 なんて元気に答えてくれる。俺よりも若いし、さすが運送会社のお兄ちゃんだ。

「あの、よかったらお茶だけでも飲んで行って」

「え、そんな申し訳ないですし」

「いいからいいから」

 暑い日も寒い日もいつも配達してもらっているし、これくらいは。

 急いで麦茶をグラスに注いで、昨日買い足した熱中症対策のタブレットを数個掴んだ。いつでもどこでも自家製のハチミツ塩レモンを手渡せないし、自分の為にもこれくらい手軽なものをひとつは持っておくべきだって昨日勉強したから。

「これも持って行って」

「え、でもっ」

「いいからいいから、今日は無理を言っちゃってごめんね、本当に助かったよ。ありがと」

 半強制的にタブレットを手に握らせてお兄ちゃんを見送った。恐縮そうに何度も頭を下げて帰ったお兄ちゃん。無理をお願いしたのに最後まで爽やかに丁寧に対応してくれて・・・あぁ俺も仕事、頑張らなきゃ。

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