第19弾 『バレール』

やって来ました『バレール』の町。発展具合、人口密度は『マーズル』の町と変わらない。ただ、『マーズル』の町より冒険者が多いな。

「君達、宿屋も確保していないだろう?」ムイルが聞いてくる。そりゃ来たばっかりだからな。

「なら、滞在中は僕の家に泊まっていきなよ!」

「え!? そりゃあ嬉しいけど、いいのか?」

「いいんだよ! 僕の家は広いからね! 二人ぐらいどうって事ないさ!」

ということで、ムイルの家に泊めてもらうことになった。なったのだが...

「な、なんじゃこりゃあー!」思わず叫んでしまった。

ムイルの家はとてつもない豪邸だった。一体何部屋あるのかわからない。ムイルが得意気に言ってくる。

「すごいだろう! 僕の父さんはこの町の町長なんだ! そしてこの豪邸もゆくゆくは僕の手に...!」コイツの頭には欲望しかないのか? 

「取り敢えず、父さんに会いに行こう!」おお、緊張するなあ。

ムイルの家はとにかく広く、もはや自分がどこにいるのかさえわからない。「あれ? ここさっきも通らなかった?」ってやつだ。

ムイルとアルイゴの先導でとある部屋に着いた。もうドアからして違うぞ。板チョコみたいな模様のアレだ。ムイルがドアをノックする。

「入れ」凄く渋い声が聞こえた。

中に入ると、ダンディな中年の男性が新聞紙を読んでいる。見た目からしてもうカッコいい。

「父さん! ただいま!」ムイルは嬉しそうだ。アルイゴが囁いて来た。「ムイル様の父様のミラツ様は仕事で出掛けていたので、三日ぶりの再会なのです」そういう事か。そりゃあ嬉しいな。

オッサンは新聞をから目を上げ、

「おお、ムイルか。話はメイド達から聞いたよ。彼女は見つかったのか?」あ、結構グイグイ来るタイプだな、このオッサン。

「お、その後ろの子か? 確かに可愛いな。お前の目に止まるぐらいの事はある」

ああ、彼女を作って戻ってきたと思ってるんだな。

「ううん、この子は違うよ、父さん」

「...ならもしかして、その少年か? まあ、お前が幸せなら、私は...」ミラツさんは激しく悩み出した。やめろ話をややこしい方に持っていくな。

「そんなんじゃないよ。この二人は、凄腕冒険者なんだ! 『マーズル』へ行く途中に見つけてね、『バレール』に行きたいって言っていたから連れて来たんだ。うちに泊めてもいいよね?」

「ああ、もちろんさ。名前はなんと言うんだい?」

「こっちが昇で、こっちが七花ちゃんだよ!」七花だけちゃんづけなんだな。

「ほう。昇くんに、七花くんか。珍しい名だな」出た。女子に君つけるカッコいいやつ。出○杉とかがやってるやつだよ。

「旅人なもんで。宿泊の許可、ありがとうございます」俺は不審に思われないためのカバーと、感謝の気持ちを述べた。

「いやいや。くつろいでいくといい。ところで、君達は『ラ=イフ・リング』へは行ったのかな?」『ラ=イフ・リング』? なんだそれは?

「いや、この二人は今来たばかりなんだ。多分知らないんじゃないかな?」ムイルが的確に補足してくれる。

「そうか、知らないのか... 君達も冒険者なんだろう? 一度行ってみるといい。『ラ=イフ・リング』というのは、この町の下にある世界最大級の洞窟の事だ。観光名所にもなっているが、それはあくまで入り口付近だけ。『ラ=イフ・リング』の真の姿とは、未だに全貌が解明されていないダンジョンなのだ」おおう。世界最大級の洞窟がダンジョンだと? 凄く面白そうだな。

「まだ時間もあるし、行ってみようよ」ムイルが誘う。

特に断る理由もないので、行ってみることにした。













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