SAIGOの暇つぶし同好会・・・・・・って、勝手に終わらせんなこのアホ!
長谷川壮真
SAIGOの五分間
「今日のお題は自分が生きてきた中で一番印象に残っているラストシーンでーす!」
威勢良く手を挙げて言うのは、この、暇つぶし同好会のアホな部長だ。部長と言っても俺と部長の二人だけの同好会。あれ? 同好会なのに部長ってのはおかしいのか? ともかくこのアホはツインテールで、いかにも頭の悪そうな顔立ちをしている。
「なんだよいきなり」
「なんかなぁーい? 衝撃のラストォォォ! みたいなの」
いつもと変わらぬアホさ加減。何を言っているのか意味不明だ。だが、このアホの相手にもう慣れっこな俺は、取り敢えず頭に浮かんだこいつが好きそうなことを言うようにしている。
「幼稚園ときの話なんだが、お遊戯会で木の役をやることになって、はじめは脇役で台詞もなさそうだしラッキーと思ってたんだけど、まさかの主人公だったんだよ。全く内容は覚えちゃいないが――」
「ねぇねぇねぇ!」
「んっ、何だよ」
突然、機嫌良くしゃべっていたのを部長に止められると、彼女は目をミラーボールみたいに輝かせて言った。
「ねぇねぇ! 何の話してるの?」
「役決めが終わって先生の話の最後で『なんでだよっ!』って叫んだわ」となんとも落ち度のない言葉で締めようとしていたのだが、目を輝かしてアホ丸出しの部長に言い寄られて、いつものノリでげんこつを一発。
「ぐっへえ!」
「衝撃のラストォォォの話をしてんじゃなかったのかよ」
「ああ! 私あるよ、その話!」
「いや、いいよ。話さなくて」
どうせ、ろくでもないどころの騒ぎじゃない話だ。
「私ね、この前ゲップ選手権の全国大会に出たんだけど――」
む! し! ていうか、おいおいちょっと待て、何だよそれ! 出ることは愚か、そんな大会の存在すら知らなかったぞ!
「は?」
「いや~、二時間五十六分八十四秒からの五分間! あれには感動したよね~」
八十四秒って何だよ! 五十七分どこいった!
「は?」
「私、次はこの競技でオリンピック出るんだ~!」
これを聞いた人間は大抵面白くないジョークだと思うだろうが、本気で言っているから怖い・・・・・・というか、もう、右脳と左脳半分ずつ引っこ抜かれたサル以下の知能だ。
そんなことを考えて俺が呆れかえっていると、そういえば! と部長が、飼っているペットの名前を思い出したときの表情と同じ顔になって言った。
「で、お遊戯会が何だっけ?」
まだ覚えてたのかよ。俺は深めのため息を吐き、俺が話そうとしていたことを思い出す。
「いや、なんでもない」
よくよく考えると、俺もこいつと同じレベルのことを話そうとしていた。適当にごまかしておいたらなんとかなるだろう。そう思って、こないだ発売したエスカルゴアイスの話題に変えようとすると、部長が突然部室を飛び出し、叫んだ。
まさか、俺の頭の中で考えてたことばれてたか?!
「エスカルゴアイス食べに行こうゼェェェ!!!」
ここからコンビニまではちょうど五分だ!
SAIGOの暇つぶし同好会・・・・・・って、勝手に終わらせんなこのアホ! 長谷川壮真 @hasegawasouma
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