第10話 子供のお礼と大人のお礼
昨日、ライラに花の種を持ってないかと相談しら、
相談した場所が、ライラがお世話になっているノノの家だったこともあり、ノノも手伝うと張り切っている。
「山の精霊様にお礼が言えなかったから山に花畑を作りたいとは、ニカはやさしいのじゃな。」
「そ!ニカはやさしいの!」
ノノにまで褒められると気恥しい。
「直接いいたいけど(デっカイから)。」
「そうじゃな(精霊さまにそうそう会えるものではないしの)。」
BのC区画には種をまかないでいいぞとか、FのA区画には多めに撒くのじゃとライラの指示に従って、種を撒いていく。
「ところで、この種はなんて花の種なの?」
「ラズベリーじゃ!甘い実がいっぱいできるのじゃ!」
「わ!楽しみだね!」
「うん!花はいつ頃、咲くの?」
「来年の今くらいじゃ!」
「「え?」」
「なんじゃ?まさか、花がそんなに直ぐ咲くと思っておったのか?」
「でも、せめて、秋に咲くくらいの花とかないの?」
「うん。うん。そうだよー。」
「秋の花は果物が取れないから嫌じゃ。それに花が咲くだけの種などもっておらんわい。」
ライラおねーちゃん!何か違うよ!何か間違ってるよ!
ノノと一緒にジト目でライラを見ていると。
「ニカにノノ、見るのじゃ。」
「「ん?」」
ライラが山の中腹にある木の木陰を指さす。
「子連れの山鹿じゃ。動物たちも住み始めてるのじゃ。」
ライラおねーちゃん!話そらそうとしてるよね!
他に種もないのでラズベリーの種を撒き、最後にライラが土魔法と水魔法で地ならしをして完成である。ただし、花が咲くのは来年…。
次の日、種を撒いた山裾でセレクトリに相談することにした。
「そうですね。ラビリンスを読んで植物を成長させてみてはいかがでしょうか?私と同じ低燃費型ですのでお役にたつかと。」
「あ!ラビリンスならLV3になったとき覚えよ!」
スキル!≪超異次元召喚≫
・MP60% ラビリンス 使用不可
「あれ?」
「敵がいないと発動しませんので、少々おまちください。どうぞ。」
スキル!≪超異次元召喚≫
・MP60% ラビリンス バイパス接続
ラビリンス!!
ビシィビシィビシィビシィビシィビシィ…
頭上の空間が大きくひび割れていき、ライラと
「あたし参上!ご主人様、よろしくね!」
「よろしく!」
「んんで、んんで、あたしに何してほしいの?」
山を造ってくれたガイアへのお礼にラズベリーの花を成長させてほしいと話しているとうちに、僕の
「(ブヒッ!)どうしました?!」
「なに?なに?!あたし、なんかしちゃった?!」
「ぐすん、ちがう…。お礼しようと思ってんるのに、セレクトリやラビリンスに手伝ってもらって、どんどんお礼しないといけない人が増えってって、何もできない自分が悲しーの。」
「ご主人様。大丈夫ですよ。(私はいつもいただいておりますからブヒッ。)」
「あたしたちは、呼んでもらえるだけで、ご褒美なの!気にせずに呼んでくれた方が嬉しいな!」
「そ、そうなの?ぐすん。」
「ええ!」「うん!」
「…。ありがと!これから、いっぱい呼ぶね!」
「ええ!」「うん!」
「見ててね!ラズベリーを成長させて花を咲かせるから!」
ポン!とはじけた煙の中から黒い杖と黒いシルクハットを出して、種を植えた土の上をくるくると飛び回る。ラビリンスの動きに合わして、土からポコポコと草が生え、ぐんぐんと伸びていく。
そして、そこには…。
膝丈くらいの蔓系の草が成長し、ぽつぽつと申し訳程度の小さな白い花を咲かせていた。
ライラおねーちゃん!これ花畑じゃないよ!絶対に違うよ!
「も、もう少し成長させられる?」
「うん!できるよ!」
ラビリンスがくるくる回ると花が揺れ真っ赤な実に変わっていく。ぽつぽつと…。
ありがとうと伝えて、ラビリンスとセレクトリが帰っていったあと呆然と伸びた草を眺めていた。
そこにライラがフライで飛んでくる。
「ニカ!もう、ラズベリーが育っているのか?!さすが精霊の山じゃ!」
ライラが口の周りをべちょべちょにしながら、ラズベリーを頬張っていく姿を見て、相談する相手を間違えたと子供ながらに思った。
「ライラおねーちゃん。
「なんの、なんのじゃ!もぐもぐ」
僕は、ちょっと、大人になった気がした。
――ラビリンス
超異次元の
エスケープインポッシブル
広範囲に地形を変形したり植物を成長させて迷宮を作り閉じ込める、付属効果で範囲に巻き込んだモノのスキルを封印する。
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