第6話 ゲンコツ > スタンピード

 夕飯でとーさんが真剣な話をする。


 「商人ギルドにピーマン届けたとき聞いた話なんだが、2日前に王都ディアスについた伝達馬スピードホースが王都の方角にスタンピードが向かっているって伝えたらしい。」

 「まぁまぁまぁ。」

 もぐもぐ

 他の場所でもスタンピードが起こってるんだ。被害がないといいな。


 ※いえ。他では起こっていません。アドミンで消滅したスタンピードのことです。


 「だから、しばらくは王都には近づかないように村の取り決めで決まった。ニカ、村の南(王都方面)の草原にはしばらく行くなよ。」

 「うん!わかった!」


 次の日、王都ディアスから宰相率いる200名の王宮騎士団騎馬隊が村に到着した。


 「なんじゃ!なんじゃ!伝達馬スピードホースの知らせを聞いて、見捨てるだのほざいていた大臣どもの意見をねじ伏せて、急いで救援隊を編成して駆けつけてみれば!のほほんと普通に生活しておるじゃないか!!!」


 騎士団の先頭で馬に乗っているエルフの少女は、腰まである金髪を馬上でたなびかせている。

 あの子。僕と同い年くらいだなぁ。


 「この人数では村に泊まれんのじゃ。部隊長!村を抜けた先で野営の準備をするのじゃ!」

 「は!」


 「そこの少年!われを村長の家まで案内するのじゃ!」

 「村長の家?こっちだよ!僕はニカ!君はなんていうの?」


 「そち、わしをしらんのか?まぁ子供だしな。わしはこの国の筆頭宰相、ライラ・ディアス・イーストフォレストじゃ!この国の建国以来125年宰相をしているのじゃ!」

 「ライラちゃん。村長の家はそこだよ!」

 「ちゃん呼ばわりするでない!こう見えても、わしは325歳じゃ!」

 「おばーちゃん?」

 「…13歳じゃ!」

 「僕、10歳だから、ライラおねーちゃんだね!」

 「うむ。子供相手だし嘘も方便じゃ。」

 「ジジ!ジジ!お客さん連れて来たよ!」


 村長であるジジの名は正しくはジェイなのだが、年齢が65歳ということもあり、ジジと村人から呼ばれている。


 「なんでい、騒がしい…。うおぉぉっ?!!!!」

 「ジジ?」

 村長は地にひれ伏さんばかりの勢いで、頭を下げる。

 「これは、これは、ディアス王国筆頭宰相様。このような、なにも、なにも、ない村へご足労いただき、、、」

 「よい。よい。少し話を聞きたいのじゃ。入ってもよいか?」

 「どうぞ!どうぞ!豚小屋ですが!どうぞ!」

 「ジジ?」

 「ニカ。よくご案内してくれたな。これはお駄賃だ。それと隣のゲンゴロに俺の家にくるように言ってくれ。」


 そう言って、僕の手に石貨を握らせるとあわただしく家の扉を閉めた。


 ――石貨

  村の中で使えるお金。主に子供のお小遣いとして渡され、冷えたトマトやキュウリと交換できる。


 「ゲンゴロ!ゲンゴロ!」

 ドンドンと扉を叩く。

 「なんだよー。静かにしてくれよー。昨日、飲み過ぎて…。」

 「ジジが呼んでたよ。」

 「チッ。それじゃ、しゃーねーなー。」

 そう言って、パンツ一枚のおっさんが尻をかきながら、村長の家へと向かった。


 ゲンゴロは村長の家に入ると直ぐに飛び出してきて、ニカの頭にゲンコツを与えるのであった。

 「宰相様が来ているなら、最初にいえや!」

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