繰り返される「あと5分」

属-金閣

あと5分だけ....

あと5分....


『カチッ』と言う音が響く。


すると、剣を持ち鎧を来た、好青年が物凄い剣幕で訴えかけてきた。


「どうして...どうしてそうも簡単に世界を終わらせようとするんだ!お前は、この世界に何も思入れがないのか!」


その問いかけに何も反応は返ってこない。


『カチッ』と言う音がまた響く。


「何か言ったらどうなんだ!お前の本当の気持ちを知りたいんだ!」


そんな問いかけにも無言で貫く。

すると、好青年に集まって来る人影。


「もう辞めろ。あいつに何を言って無駄だ。」

「そうよ、もう戦うしかないの!覚悟を決めて!あなたは勇者なのよ!」

「くぅっ...」


好青年の仲間と思われる奴らが説得し始めた。

それに、しぶしぶ従い、覚悟を決める好青年。


「....分かった。世界はお前に滅ぼさせないぞ魔王!行くぞ!」


高らかに宣言して走り出す好青年とその仲間達。



そして、同時に『ダッダッダッ』という足音が聞こえ、今まで黙っていた者が焦り出し、『ブツッ』と言う音が響いた。


次の瞬間、怒鳴り声が響く。



「いつまで起きてんだ!さっさと寝ろ!」


恐る恐る振り返ると、そこには美少女が立っていた。


「あんたね、またピカピカ光るゲーム?ってのやってんの!他のみんなにバレたらどうすんの、勇者の尊厳なくなるわよ!」

「後少しなんだ...だから頼む!魔王まで倒させてくれ。」


美少女に勇者と呼ばれた青年は両手を合わせて頼み込んだ。

それにため息を漏らし美少女は答える。


「じゃ、あと5分だけだよ...」

「サンキュー!」


そう言って再び、持っていた端末に目を向けた。


「げっ...さっき間違え電源切って、コイツらの世界滅ぼしちまった...」

「なんて、不吉なことを言うの...」


勇者の発言に飽きれる美少女。


「明日は魔王城に乗り込んで世界救うんだから、変なこと言わないでよ。」

「すまん、すまん!でも魔王は、土下座したとかいう噂がある変な奴らしい、心配ないだろう。」


そう言って約束の残り5分だけ、ピカピカ光る画面で世界を救い始めた。


「てか、何で勇者のあんたが画面の中の勇者で世界救ってるの?」

「明日へのシュミレーションだよ!」



ーー5分後



「もう、5分立ったんだけどー!」

「あと、もう5分!5分だけ!今セーブできないんだ!セーブポイントまで!なぁ!頼むよ〜」


そう言ってまた頼み込む勇者。

睨む美少女。


「本当にあと5分だからね...」

「助かる!」



ーーさらに5分後



「もう!いつまでやってんの!もう5分経ってます!」

「今いいとこ!もうちょっとだけ!ねぇ?頼むよ!」


また頼み込む勇者に、もう我慢できなくなった美少女は勇者の持っていたピカピカ光る端末を取り上げた。


「な、何すんだ!」

「これは魔王倒すまで没収!」


そう言って歩いて行く美少女を、勇者はその後を追いかけて一言。


「頼む!あと5分だけだからー!」

「ダメです!」


こうして勇者の「あと5分だけ」というループが終わりを告げた。

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繰り返される「あと5分」 属-金閣 @syunnkasyuutou

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