異世界に召喚された俺が魔王だと言われましたが何か?

けろよん

異世界に召喚された俺が魔王

第1話 異世界に召喚された俺

 薄暗いどこかの部屋に俺は招かれたようだった。


「ここはどこだ?」


 俺は視線を巡らせる。

 さっきまでコンビニで立ち読みをしていたと思うのだが、何でここにいるのかよく分からない。

 周囲には怪しい魔術に使うかのような道具が散見され、俺の足元には光を失いつつある魔法陣があった。


「やったー、召喚に成功しました!」


 そして、俺の目の前には、中学生ぐらいの子供っぽい三人の少女達がいて、何かの喜びに目を煌めかせていた。

 天然そうな明るい子とツンデレそうなおしゃまな子とおとなしそうな控えめな子だ。

 彼女達が普通の少女達じゃないことは俺にはすぐに分かった。三人ともファンタジーのような髪の色と服装をしていたからだ。

 髪の色はピンク、黄色、青か。信号機とはちょっと違うな。並び順も。

 服装はコスプレのようにも見える学校の制服の上に、魔術師のような黒いローブを着ていた。

 蝋燭の炎がゆらめくカーテンの閉め切られた部屋の暗さにもだんだんと目が慣れてきた。


「ここは異世界か?」


 俺は本で読んだ知識でそう推測した。異世界なら召喚を行うのは王女様だと思うのだが、ここは王宮のようにも彼女達が王族のようにも見えなかった。だが、ファンタジーの世界であることは確かなようだ。

 見える物と雰囲気でそう判断する。それに肌で感じる空気が何か異質さを感じさせていた。


 いつか自分が異世界に召喚されることがあるだろうとは思っていたが、実際に自分が異世界に転移することになるとはちょっとびっくりである。

 うろたえるのは恥ずかしいのであくまで平然とした態度をとってみせるが。

 少女達は顔を見合わせ、少し相談してから俺の質問に答えた。


「はい、魔王様にとっては異世界になりますね」

「別の世界から召喚しましたから」

「こっちの世界はあっちから見た異世界」

「魔王? 俺は魔王なのか?」


 異世界なのは当然としてそっちの方が気になった。

 どうやら俺は勇者でも、勇者のついでに召喚された役に立たないスキル持ちでもないようだった。

 読んだ本と違う。俺の疑問に少女達も首を傾げた。


「違うんですか? 魔王を召喚する儀式を行ったんですけど」


 少女達は少しびっくりしつつ、大きく分厚い辞書のような呪文書を開いて、お互いに何かを確認しあった。

 数秒待って俺は決めた。


 俺は子供の夢を壊すような心の狭い男ではない。大きく腕を振って胸を張って偉そうに宣言してやることにした。


「いかにも! 我こそが魔王である! よくぞ、この世界に招いてくれた。礼を言うぞ!」


 俺が声高らかに宣言してやると、三人の少女達は目を煌めかせて笑顔で言った。


「良かった。これで廃部にならなくて済みます!」

「あいつらを見返せます!」

「一安心」


 廃部? 異世界なので偉そうな奴を見返すのは分かるが、廃部とはどういうことだろう。

 疑問に思ったが、俺はとりあえずその前に今までの状況を頭の中で整理することにした。

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