夏の箱庭
星山セイ
切り離された場所
そこそこ栄えてる港町にある小さな公園のブランコに揺られながら天を仰ぐ。
ベタ塗りされたかのような水色の空に、夏の代名詞ともいえる入道雲がその存在を充分に見せつけながら泳いでいた。
「そろそろ時間かぁ。」
今にも折れそうで錆びれている公園の時計塔に目をやり、ため息をついた。
重たい体をブランコの鎖を頼りにしてなんとか立ち上がる。地面に無造作に置かれたリュックの砂をはらい、「よいしょ」などと年に合わない言葉を呟きながら出口に向かう。
午前7時02分
いつもなら、まだ家でのんびりと朝食を食べながらニュースを観ている時間だ。けれども、何故か今日は珍しく早い時間に目が覚め、二度寝を決め込もうとしたのだが中々寝付かれず、なんとなく公園にやってきた。
昔は、この時間でも子供たちがまだ眠たそうにしている親を連れてきて甲高い笑い声をあげながら遊具で楽しそうに遊んでいたのだが、いつからだろうか。
子供たちの笑い声どころか、この公園だけ他と切り離されたかのように蝉の鳴き声さえ聞こえない。
たしかにそこに存在しているのだけれど、存在していないかのようだ。
そんなことを朦朧とした意識の中考えながら、額にうっすらと流れる汗を拭って、アスファルトに映る影を進めた。
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