けものの未来

みずかん

第1話 侵略

遠い未来。


ジャパリパークでサンドスターが噴火し、新たなフレンズが生まれた。

その時、かばんが誕生した。


一方人間の住むところでは、疫病が大流行していた。


日本の大企業『NatureTechnologyCompany』

バイオテクノロジーを用いて、様々な研究、及び開発をしていた。


「ジャパリパーク・・・」


古い新聞紙を見て、そう呟いた。


数十年前に開園したが、不祥事を起こし閉園した幻のパーク。

当時、未知の物質サンドスターが発見され大騒動になった。


しかし、閉園から時が経ち、サンドスターの山は塞がれ、フレンズは死滅したとされた。


(サンドスターには物凄い力がある...。我が社の技術力をもってすればそれは

最大限に引き出せるだろう。その為には・・・、調査が必要だ)


卓上のボタンを押した。


するとすぐに、社長室の扉をノックして人物が入って来た。


「お呼びですか。日比谷ひびや社長」


新木場あらきば、ちょっと来い」


秘書である新木場を手招きで寄せた。


「小笠原諸島の南にある、“旧ジャパリパーク”の跡地を偵察してほしい。その手配をしてくれないか」


すると、彼女は少し驚いた表情を浮かべた。


「何故そんなことを?」


「もしかしたら、ビジネスのチャンス・・・、嫌、宝の山が眠ってるかもしれない」


「・・・」


日比谷のいう事を一発で理解できなかった。


「わかりました。取りあえず、手配をしておきますね」


「頼むぞ。これから、我が社の“ビックプロジェクト”が始まろうとしてるからな」


ニヤリと笑って見せた。







海の向こうのやり取りから1ヵ月後。

ジャパリパークでは、黒セルリアンを倒したかばん達は図書館で平和な日々を過ごしていた。


(海の外・・・、いってみたいな・・・)


図書館で見つけた地図を見ながら、かばんはそう思った。


サーバルは机に伏せて寝ている。


どんな夢を見ているのだろう。


そんな事をぼんやりと考えていた。



「博士!博士!」


突然、焦った様子で助手が上空から飛んで来た。


「...?」


あんなに焦った助手を見るのは、初めてかもしれない。


「あのー、どうしたんですか?」


「いや・・・、その・・・、言いにくいんですけど、

何か、空を飛んでたら、見たんですよ。

港で遠くの方から、なにかこちらへ飛んでくるのが・・・」


「何かが飛んでくる・・・?」


確かに、“言いにくい”事だ。


「どうしたのですか?助手」


その騒ぎを聞いて博士も首を突っ込む。

助手は先程僕にした説明を、博士にも行った。


「なるほど、なにかこちらに飛んでくると・・・

それは、フレンズではないのですね?」


「そうです。なにか大きくて、色は・・・、灰色っぽいっていうか」


「ふむ・・・、ここには多くの本があります。

面倒臭いですが、該当する物を探しますか」


博士は冷静に、本を探し始めた。


「あっ、僕も手伝いますよ」


そうして、助手が見たという物を探し始めた。






NTCと機体に大きく書かれた複数のヘリコプターは、ジャパリパークの島に着陸した。


「よいしょっと...」


眼鏡を掛け、髪をワックスで後ろに固めた中年男性。

NTCの副社長、上野うえのだ。

日比谷の指示でこの島に来た。


「ここがあの例のパークか・・・」


辺りを見回した。


ヘリコプターからは、多くの白いジャンパーに紺色のズボンを履いた

職員が続々と降りて来た。


「お前達、まずフレンズを見つけたら無線機を通じて俺に報告しろ。

それが済んだら、見つけ次第手持ちの麻酔銃で眠らせること。

殺したりはするな。実験対象として、必要になる。わかったか?」



「「はい!!」」



職員は一斉に調査を始めた。





森を探索し始めて、数十分後


「オイ、アレ、フレンズじゃないか?」


職員の一人が見つけ、指さしたのは森を歩くフレンズだった。


「首の形・・・、エリマキトカゲか?」


「取りあえずリーダーに連絡しよう」


無線機を取り出し、連絡を入れる。


『こちらG班!フレンズを確認しました!』


「早速か・・・。良いだろう。麻酔で捕獲しろ」


上野は指示を出した。


「悪いなっ、人類の為だ」


職員の一人が麻酔銃を向け、放った。


「アッ!」


声を上げて倒れた。

命中したのを確認すると、恐る恐る近づいた。


「このカプセルに入れるんだな・・・」


「しかし、こんなの外から見れば女子を誘拐しようとする変態だよな・・・」


「こんな時にそんなこと言うなよっ、たく。こっちだって仕事なんだ」


エリマキトカゲを専用のカプセルに入れた。


上野の元には続々とフレンズ発見の無線が飛び込んで来た。


「こちら上野だ。いいか、フレンズは見つけ次第確保しろ!」





一方図書館では・・・


「これじゃないですか?」


かばんが開いて見せたのは、乗り物の図鑑。

指を差して示したのは、“ヘリコプター”


「そうです!私が見たのはこれなのです!」


助手が声を上げた。


「まさか・・・、これは人間の作った物・・・、ということは」


「ヒトが、このパークにいる・・・!?」


僕はハッとした。


絶滅したはずの僕の仲間がこのパークにいるのだ。

しかし、同時に何故このパークに来たのかという疑問が浮かんだ。


サーバルの方を向くと、彼女はまだ熟睡している。

元々夜行性だから、昼に寝るのは当たり前のことだけど。


「絶滅したハズの人間がまだいたとは・・・」


博士はその事実に衝撃を受けていたようだった。


「けど、なんでこのパークに・・・?」


「そうですね・・・。そこが引っかかりますね・・・」


助手も腕を組んだ。


「パーク...、ヒト...?流石の賢い我々でもわからないのです...」


博士も困惑していた。


「博士!いるか!!」


外の方から声がした。

様子を見に行くと、そこにいたのは焦ったような顔をした

タイリクオオカミとアミメキリンだった。

ここからロッジまでは結構距離がある。


「久しぶりに本気出して走って来ましたよ・・・、ハァ・・・」


タイリクの方はまだ余力を残していたみたいだが、アミメキリンは息を乱していた。


「どうしたんですか?」


僕はその様子が尋常でないと悟り、すぐさま尋ねた。


「白い服を着た・・・、“ヒト”がフレンズを捕まえている」


「えっ・・・?」


「なっ、なんですか?」


「ど、どういうことなのです...」


僕たち三人は驚きを隠せない。


「私達、ロッジにいたら悲鳴を聞いたんですよ。

だから、こっそり様子を見たら尻尾や耳のない、かばんに似てたので

ヒトだってわかったんですよ...。すぐさま、オオカミさんと

このことを長である博士達にって思って・・・」


キリンがまともに説明した。

いや、今はそれに感心している場合ではない。


「アリツに頼んで、なるべく多くのフレンズをこの図書館に集める様に呼びかけた

単独行動より、一か所に集まった方が情報共有がしやすいと思ってね」


「博士、私も呼びかけてきましょう」


助手がそう言った。


「ああっ、その白い服の人たちは変な物を持ってて、

それに撃たれるとバタって倒れちゃうんですよ!気を付けないと

捕まって箱の中に閉じ込められるんで、気を付けてください」


キリンは注意を促した。


「ラッキーさん、聞こえますか?」


僕は、腕のラッキーさんに語り掛けた。


『オソラク、“マスイジュウ”ダネ。ウタレタラ、ネムッチャウヨ』


ラッキーさんは今までの話を聞いていたようだ。


「その人たちについて何か知ってますか?」


『ワカラナイ』


ラッキーさんは本当に何も知らないらしい。


「そう言えば、まだ僕は暫定パークガイドでしたよね。」


『ソウダネ』


「じゃあ、僕の権限で各ちほーのラッキービーストを通じて、

図書館に集まるようフレンズに伝えてくれますか?」


『ワカッタヨ。パークガイドノ、ケンゲンデ、

フレンズヘノ、カンショウヲ、キョカ』



「助手さん、これでフレンズへの伝達は大丈夫なはずです」


「でかしたのです!かばん!」


助手は僕にそう言った。



「アリツもこちらへ向かってくるでしょう・・・。

ところで...、これからどうすればいいのです?」


博士は腕を組んで僕に尋ねた。


「何でフレンズを捕まえるのかが、わかりません...

もしかしたら、この図書館の場所を直ぐに突き止めて来るかもしれません・・・

このパークで、ヒトと対等に話せるのは・・・、僕しかいません」


「まさか、直接話すつもりかい?」


タイリクオオカミは目を見開き僕を見た。


「話は伝わるはずです...。同じ人間ですから...」


本当に同じ人間なのだろうか。

僕の中で人間というのは誰にでも優しいという第一印象しかない。

それはミライさんの姿を見ていた影響もあるだろうが...。


それとも、本来の人間というのは、フレンズを捕まえたり、

怯えさせたりする・・・、セルリアンの様な存在なのだろうか。


そうは思いたくない。


きっと、何かの理由があってやってることだ。





上野の元に一本の無線が入った。


『こちらAF班!先程、パークの管理用ロボットが、“図書館に来い”みたいなことを

フレンズに呼びかけてるのですが・・・』


「図書館?」


上野は顎に手を当てた。


(もしかしたら、フレンズが大勢いるかもしれないな・・・

向うから集まってくれるのは手間が省けて嬉しいな)


「全班に告ぐ!地図を確認し、図書館へ向かえ。

私もすぐ行く。現場に到着したら、隠れて待機すること!」


一斉に指示を出した。






「んみゃぁ...」


サーバルが大きな欠伸をしてゆっくり目を覚ました。

第一に目に飛び込んできたのは、かばんの姿。


ただ、いつもの雰囲気とは違って見えた。


細い腕を振るわせ、右の手を握り、何か納得いかない様な様子だった。


(かばん...、ちゃん?)

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