破天荒な赤ずきんと愉快な仲間たち~カグヤを倒しにいざ鬼ヶ島へ~

野沢 響

第1話 小心者な木こりと破天荒な赤ずきん🐺

 「赤ずきんさん、木こりさんを捕まえましたよ!」


 「よくやったぞオオカミ」


 木こりと呼ばれた緑色の帽子と服を着た少年はオオカミの下敷きになっていた。

 顔を上げて赤ずきんと呼ばれた少女を見上げる。

 赤い頭巾ずきんを頭に被った少女が木こりを見下ろす。同じく赤い服に身を包み、左右を三つ編みにしたヘアスタイルの彼女の目付きは鋭くておっかない。

 

 「あたしから逃げようなんて200年早いんだよ」


 「わ、悪かったよ。逃げたりして。ところで、このオオカミは?」


 「赤ずきんさんの仲間です」


 「仲間ぁ?」


 その答えに木こりは素っ頓狂な声を出す。


 「うちの畑のかぼちゃ食ってたから懲らしめたんだ。その後、仲間になった」

 

 「何だよ、それ?」


 「さあ、木こり。いい加減を倒す覚悟を持てよ? あんたの父さんが倒れたって聞いたぞ?」


 「それは……」


 「黄色い三日月マークも体に出てるらしいじゃないか」

 

 「やっぱりあれはカグヤの仕業なのか……」


 木こりが俯いて呟く。同時にカグヤの顔が浮かんだ。

 でかい屋形船のような乗り物に乗って、不敵な笑みを浮かべた高慢そうな女。

 最近頻繁に現れては、轟音と眩しすぎる明かりで村人たちを困らせているのだ。彼女に反発した住人たちが謎の黄色い光を浴びて、動けなくなる被害も出ている。


 何の目的があるのかは分からない。

 人間でないことは確かだ。


 ふと前から気になっていたことを尋ねてみる。


 「何でそんなにカグヤに執着するんだよ?」


 木こりがそう言うと今度は赤ずきんが顔を伏せた。

 隣にいたオオカミが心配そうにちらりと彼女を見る。


 「ばあちゃんと約束したんだ。必ずカグヤを倒すって。あたしのばあちゃんは謎の光を浴びて動けなくなったんだ」


 赤ずきんはそう言うと、握った両の拳に更に力を込めた。

 悔しそうに唇を噛んだまま、それ以上何も言わない。


 「気持ちは分かるけどさ……」


 「木こりさん、ボクからもお願いします。一緒に協力してください」


 「じゃあ、いい加減どいてくれないか?」


 オオカミははっとした顔になると、慌てて木こりから離れた。


 ふうっと息をいてから、赤ずきんを見る。

 いつも気丈な彼女がこんな顔をするのは珍しい。

 木こりは少し悩んだ後、言った。

 

 「分かったよ。俺も協力する」


 赤ずきんが顔を上げた。

 オオカミも嬉しそうに両手を合わせて、目を輝かせる。


 「嘘じゃないな?」


 「嘘なんかつくはずないだろ? 本当だよ。ところで、どうやってカグヤを倒すんだ? 何か方法はあるのか?」


 「これから泉の女神に会いに行く」


 「え? 女神に?」


 赤ずきんは頷くと、さっさと歩き出した。

 オオカミが大人しく付いて行く。

 木こりも訳も分からずその後に続くのだった。





 




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