あの日交わした契約を私は決して忘れない 2/7

 まだ、あるかな?


 十分程歩いた先で、小さな休憩所があったはず。3人も座れば壊れそうな錆だらけのベンチに、いつから売ってるの?っていうくらい古いデザインの飲み物しかない自販機。穴だらけで全然意味無いじゃんって言ってた日よけ。


 恐る恐る手を伸ばしてみると、それらは、まだ残っていた。


 ちょっと休もう。私は自販機の前に立った。……駆動音がする。まだ動いてるんだ。凄い。色んな意味で。


「ドクター中松の頭茶と暴暴茶どっちが良い?」

「何その究極の選択!?」

「しゃーねーだろ。他は全部売り切れなんだから」

「まあ、残るべくして残りそうな名前だね……」


 ああ、そうそう、ここでそんな会話してたっけ。へえ、こういうデザインだったんだ。まだ売ってるのかな?

 いや、ちょっと待って。つぶつぶオレンジも売ってたんじゃない!騙された……。


 試しにお金を入れて『つぶつぶオレンジ』のボタンを押してみたけど、反応無し。仕方なく、片っ端から押していくと、十回目あたりでガコンッ!と下から音がした。かがんで手に取ってみると……


 熱!いやいや、嘘でしょ……。何でホットドリンクが売ってるの?真夏だよ?


 思わず地面に放ってしまった。缶はそこで止まらず、カラカラと音が遠ざかっていく。あれじゃあもうどこに行ったか分からない。どのみち拾う気にはなれないし、いいや、もう。


「はぁ……」


 深いため息をついた後、私はその場を後にしたのだった。

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