償いは契約の後で 4/10
誰もその子の事を見向きもしない。自分にだけ見えているのではないかと錯覚しそうになる程だ。
その子は草で何かを作ろうとしているようだが、此処からでは遠すぎてよく分からない。
まあどうでも良いか、そう思いかけた時、聞き覚えのある声が届いた。
「しおり!どこに居るの?」
「!?」
反射的に身を屈めてしまった。ちょうど近くを通りかかった老夫婦に、これ以上無い位怪訝な目で見られる。
間違えようもない。今のは真波の声だ!と、いうことはもしや……。
「しおり、そこに居たの?帰るよ」
居た。真波だ。そしてその隣には見知らぬ男性の姿が……。
二人が並んで立ち、女の子を呼ぶ。女の子は遊ぶのを止め、真波の手を取り三人で歩き出す。
「…………」
それで全てを察することができた。
そうか、幸せなんだ。良かった、本当に。
公園立ち去り、駅に戻る。
さて、以降の予定を全く考えていなかった。まあ明日考えよう、まずは泊まる場所だ。
手持ちの金を考えれば駅傍にある町一番のホテルでも充分泊まれるのだが、結局ビジネスホテルにした。やはり大きい部屋は落ち着かない。一人なら尚更だ。
手続きを済ませ、ベッドに横になると、慣れない旅路の疲れからすぐ眠りに落ちた。
後二日
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