追章
[――
電脳離脱を確認し、透莉は椅子に預けっ放しだった身体を動かし凝りを解す。関節の鳴る音と感触で、現実の自分の身体であることを認識する。
現在時刻を確認する。既に夜も深まるような二二時〇四分という時刻表示に、思った以上にアゼレアと話し込んでいたんだなと失笑を零した。それくらい、彼女との時間は楽しいひと時だったのだ。
故に――なればこそ。
「……助けないとね」
神妙な面持ちで、透莉は自分の胸に手を当て――かつての約束を改めて自分に課し、決意をする。
しかし、同時に「なにをすればいいのか」が判らないのも事実だ。
嘗て師が目論んだ方法は恐らく使えないだろう。ならば、別な方法を模索する必要がある。しかし――その方法とは?
バルティ機関が存在していた時とは、あらゆる意味で勝手が違う。自分一人でどれほどのことができるだろうか……。そしてもう一つ。
――現実のアゼレアの身体は、今、何処に保管されているのか。
彼女の
目下、透莉の疑問はそれだった。
あの師に限って、その辺りを疎かにするとは思えない。だから現存していることを疑いはしない。だが、師が行方を晦まして以降、その身体はどのようにして保管・管理されているのか。それを確
認する方法はないか。
「考えることが多すぎるなぁ……」と小さく零し、取り敢えず一旦シャワーでも浴びて頭をすっきりさせよう。そう思って椅子から立ち上がろうとした――その時である。
デスクの上に備え付けてあるモニタの端が点滅しているのに気付いた。
メールの着信を知らせるランプだ。
この電脳時代に、態々電脳越しのメッセージではなく、普通の電子メールなど……一体誰だろうか? 何気なく手を伸ばし、モニタに表示されたメールを見た 瞬間、透莉は言葉を失った。
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こんばんわ。そして久しぶり、カウボーイ。
君と旅した日のことを思い出してくれたかな?
ならば行幸。
どうか、あの娘をお願いね。
V・Bより
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そこに記されていたメッセージは、彼女の――そう。師ベアトリーチェ・バルティのものだった。
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