八章:三元融界の果て 9
光を放ち、鳴動を続ける《生命機関》。
トーリを抱きかかえたままそれを見上げて、エコーは訝しむように眼を細くした。
「どうなってるの、これ?」
「暴走しているんだ。時期にこの都市すら飲み込むほどの大爆発を起こすらしいよ」
独り言のつもりだったのに、返事が返って来た。振り返って声の主を見ると、長い金髪を揺らした少女が、辟易とした様子で同じように《生命機関》を見上げている。
すごく、すごく可愛い女の子だった。助け出した時には気づかなかったが、こうしてじっくり観察すると、均整の取れた顔立ち。愁いを帯びた翡翠の瞳。磁器人形のように白い肌。道を歩けば誰もが振り返るだろう――そんな美少女の姿に、エコーは言葉も失くして見惚れてしまいそうになったのだが、少女の発した言葉の衝撃が、エコーの寸前までの感想を大気圏層にまでふっ飛ばしてしまった。
「爆発って――じゃあ、此処から逃げないと!」
「都市一つくらい丸々飲み込む爆発だよ。何処にも逃げ場なんてないよ」
「じゃあ、止めよう! どうにか方法を考えよう!」
「止めるにはこの装置を今も稼働させている演算機械――つまり
悔しそうに表情を歪める少女の姿が、それがどれだけ無茶なことなのかを物語っていて。
エコーはこれ以上何も思いつかず、それでも何かないかと言葉を探すが――結局何も思いつくことはなく、口を噤んだ。
「――行けば、止められるの?」
その、代わりに。
エコーの腕の中にいたトーリが、薄らと目を開きながらそう言った。
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