第53話

 一同はフィデーリス城に辿り着くと、そこはスケルトンの群がヴェンガンを求めて彷徨い歩いていた。


 どこもかしこも骨だらけである。


 闘技場から逃げた獣達もヴェンガンを求めてあちこち臭いを嗅いで歩いているが、ヴェンガン以外と争う様な気配はない。




 ザーストンと受けた拷問の恨みを晴らそうと、マリードとゾフルも遅れて追って来た。

 ストラディゴスとルカラと合流する二人は、すっかり脱獄仲間と言う謎の連帯感が出来上がっていて、彩芽は少し羨ましい。


「俺は上を探す。セクレト王子と指輪も確保しないといけないんでね。ヴェンガンの所へは、相棒にマリアベールの臭いを追ってもらえ」


 そう言うとエドワルドは皆と別れて上の階へと消えて行った。


「臭いを追わせろって……」


 エドワルドの言っている事が分かる様で、黒竜がついて来いと言わんばかりに先導を始め、一同は竜について行く。




 辿り着いたそこは、一際大きなミセーリアの肖像画のある部屋。

 だが、そこは行き止まりだ。


 竜が肖像画を鼻で押すので、肖像画を調べてみる。


 彩芽は、まさか絵に入れるのではと絵に手を触れるが、普通の絵だった。


「あねさん、手をちょっと」


 マリードに言われ手をどかすと、肖像画の裏には扉が隠されており、中には簡素な部屋があった。

 絵を外して入った部屋の奥には、地下へと続く通路がある。


 全員警戒して暗い地下へと降りて行くと、地下室とは思えない豪華な作りの部屋に出る。


「ここは?」


「まさか……」

 ストラディゴスは、入り口の肖像画を思い出した。

 ここがヴェンガンの奥方だと思っていた人物、四百年間監禁されていたミセーリア王の部屋だろう。


 地下室を改装して、居心地の良い居住空間が作られている。


 見るから豪華な調度品に溢れるそこには、所々に花が飾られ、贈り物らしい置物や本が所狭しと置かれ、満たされた空間である事が分かった。


 さらに奥へと進むと一転、薄暗く悪臭漂う部屋に出た。


 壁には瓶に入れられた人体やら動物の一部らしき内臓。

 明らかに何かの脳味噌も瓶に入れられ、いくつも飾られている。


「ヴェンガンは、ここで何をしていたんだ?」


「拷問でしょうか?」


 ルカラの目には拷問部屋にしか見えないが、拷問なら拷問部屋ですればいい。

 ルカラが興味深そうに置いてある物を見て行く。


 何かの薬が入れられた瓶がいくつも置いてあり、どうやらヴェンガンは実験をしていたらしい。

 生物や人体の実験を。


 ルカラは床に割れた瓶を見つけた。

 途端に、ルカラはふら~っと身体から力が抜け、彩芽に支えられる。


「ルカラ!?」


「ア、アヤメさん、なんか急に、気持ち良く……」


「アヤメ臭いを嗅ぐな。これは、恐らく幻覚薬だ……絶対に触るなよ」


「ルカラ!? ストラディゴスどうしよう!?」


「少し嗅いだだけだ。大丈夫、劇薬だが毒じゃない。すぐに治る」


 ストラディゴスは似たような瓶が置かれた部屋を見て、そこで何が行われていたのかの見当がついた。


 割れていたのはアモルホッブの原液。

 だが部屋にあるのは、そんな媚薬にも使われる幻覚薬だけでは無い。


 朦朧とするルカラを置いてはいけないが、回復を待つ時間も無い。


 ルカラはマリードに背負われ、一行はさらに地下へと進んでいく。


 すると、実験室から漏れる匂いによって地下道に気付いた獣が我先にと彩芽達を追いこして通路を進んでいった。

 獣の動きに気付き、スケルトン達も後を追っていく。




 ヴェンガンに恨みを持つ者達が通路の奥へと消えると、獣やスケルトンと何かが戦っている音が聞こえてくる。


 ようやくヴェンガンに追いついたと確信して一行が剣を構え通路を進むと、そこには、無数のスケルトンと獣に囲まれる巨大な鎌を持った女と、ドレスを着た女、そしてヴェンガンの姿が見えた。


「しつこい奴らだ……」


 ヴェンガンが言うと、鎌を持った女がスケルトン達を竜巻の様な鎌捌きでバラバラに破壊し、ヴェンガンとドレスを持った女の逃げ道を作ると、彩芽達の前に立ちはだかった。


「殺して、マリアベール」


 ミセーリアの言葉に、マリアベールは巨大な鎌を構え、一直線にストラディゴスに襲い掛かってきた。


「なんだコイツ! こいつもマリアベールって言うのか!」

「その人がマリアベールさん!」

「冗談だろ!? 死人の親玉がなんで急に!? 寝返ってんじゃねぇ!」


 マリアベールの鎌による斬撃は、一撃一撃がとんでもなく重かった。

 そんな斬撃を、ストラディゴスの剣を折らんばかりの勢いで打ち込んでくる。


 マリアベールから言葉は無く、斬撃に鋭さも無い。


 見るからに操られているのが誰の目に見ても分かった。


「マリアベール!」


 彩芽が名前を呼んでも反応は無い。

 ヴェンガンはミセーリアと共に通路の奥へと逃げて行く。


「マリアベール! 巨人を殺したら、全ての魔法を解け! 全てのだ!」

「ヴェンガンの言う通りにして、マリアベール」


 マリアベールが全ての魔法を解けば、死者の軍勢は骨に戻り、生命補助の恩恵を受けている人は皆、怪我人と死人に戻ってしまう。

 そうなれば、エドワルドもマリアベールさえも死ぬ。




(聞こえるか……)


 彩芽の頭の中に、マリアベールの声が響いた。


「マリアベール!?」


(してやられた。よもやミセーリア王に魔法を仕掛けるとは……身体が言う事をきかん)


「どうするの!?」


(お前の身体を操る事も出来んが、頼む)


「ど、どういう事!?」


(ヴェンガンは、魔法使いとしては我ほどの素養は無い。魔法を使う為の触媒、補助具を肌身離さず持っておるはずだ。それを壊せば、我とミセーリア王への支配も解かれる。そうすればヴェンガンは大した魔法を使えなくなる筈だ。ヴェンガンが力場の中にいるうちに、早く……)


 彩芽の身体の中で、マリアベールに操られていた時と同じ感覚が沸き上がる。


 マリアベールが最後の力を振り絞って、彩芽の脳にかけられた身体を自壊から守るリミッターを外したらしい。

 今回は、彩芽の自由に身体が動く。


 だが、自分にそんな大役が出来るか、彩芽には自信が無い。

 悩んでいる間にも、ストラディゴスはマリアベールに押されている。


 その時、竜が彩芽の背中を押した。


 マリードとゾフルはストラディゴスを援護しているが、マリードはルカラを庇っているし、ゾフルは歩けるようになったと言っても、両足の腱が切れたままで手負いである。

 スケルトンも獣もマリアベールに攻撃さえ当てられない。


 悩んでいる時間は無い。


「ストラディゴス、どれぐらい耐えられそう?」


「こいつエドワルドの非じゃない! 長くは持たないぞ!」


「出来るだけマリアベールを足止めしておいて! いざとなったら逃げて! ゾフルさんとマリードさんは、すぐにエドワルドさんを呼んできて! マリアベールが操られてるって!」


 彩芽は竜の背に跨った。


 マリアベールに一度、身体を貸した時の感覚が残っているのか、考えなければ身体が勝手に動く。

 マリアベールが彩芽に襲い掛かかろうとすると、ストラディゴスがすぐにマリアベールの鎌から彩芽を守る。


「考えがあるんだろ! 早く行け!」


 ストラディゴスは、彩芽のブラジャーを切るのに使われた短剣を彩芽に投げてよこした。

 彩芽は受け取ると、竜を駆る。


「ついて来れる人はついてきて! ヴェンガンを止めてマリアベールを助けるのに力を貸して!」


 彩芽の呼び声に応える様に、マリアベールによって足止めされていたスケルトンや獣達が、マリアベールをどうにか止めて助けようとしていたのをやめ、ヴェンガンへと向かい始める。


 マリアベールはスケルトン達を鎌で破壊していくが、壊れても戻るスケルトンが捨て身で通り抜けようとするのを全部止める事は出来ず、ストラディゴスがマリアベールを足止めする事で狭い通路を塞いでいたマリアベールという壁が崩れ始めた。



 * * *




 彩芽は竜の背の上で、短剣を鞘から抜いた。

 鋭く砥がれた剣に恐怖を感じるが、マリアベールが残した感覚のおかげで、取扱方は十分に分かる。


 疾走する竜やスケルトン達が健在と言う事は、まだ壁の外に出ていないか、壁から離れていない。

 まだ間に合う。


 遠くに小さな光が見えると、人影が外へと逃げて行くのが見えた。

 影を追って暗闇を竜は駆け抜ける。




 外に出ると視界が一瞬真っ白になる。

 目が慣れると、ヴェンガンがミセーリアを連れて広い草原の上をどこかに向かって走っていくのが見えた。


 彩芽が腹を蹴るまでも無く、竜がヴェンガンを追い始める。


 グングンと距離が縮まると、追いつく前にヴェンガンが足を止めた。


 そこは、大きな穴があった。

 様々な物が捨てられているのが、当目に見ても分かる。

 壊れた馬車やチャリオット、そして骨と死体。


「ドミネーション・ネクロマンス!」


 ヴェンガンが魔法を使うと、マリアベールの影響なのか、彩芽の目にもヴェンガンの指輪が光って見えた。


 彩芽が腹を蹴ると、竜は速度を上げる。

 今なら、正確にヴェンガンの指輪だけを剣で破壊できる。


 確信を胸に竜を駆ると、剣を構える。




 その時、大きな穴の縁から、無数のスケルトンが這い上がるのが見えた。

 人だけでなく生物の骨もある。


 大きな穴は、城壁内の墓に入る事を許されなった奴隷や犯罪者にショーで殺された獣達の遺体を捨てる場所であった。


「ソウル・ドミネーション! 全てを食らい尽くせ! ソウル・イーターよ!」


 蘇ったスケルトン達は穴から出る前に穴の底にいる何者かに捕まれ、穴の底へと引きずり込まれる。


 無数のスケルトンが穴の底に消えると、穴の縁に巨大な人の手がかかり、穴の底から現れたのは、二十メートルを超える巨大な肉の塊で出来た人形であった。


 ハイハイをしてゆっくりと穴から這い出す人型の何か。


 その表面には、様々な生物の特徴がみられる。

 パッチワークと言うよりは、違う色の粘度を混ぜた様に溶け合った巨大な生物。


 それはマリアベールのスケルトンを触れると、身体へと吸収してしまう。

 闘技場からヴェンガンを追ってきた獣達も触れるだけで、触れた場所が一体化し、逃げられなくなると、そのまま吸収されていく。


「はんそく……」


 彩芽は、巨大すぎる上に触る事も出来ない謎の存在を前にしながらも、ヴェンガンの指輪を見ていた。

 あれさえ壊せば、恐らくソウル・イーターとか言う怪物もザーストンと同じ様に無敵では無くなる筈。


 竜から降りると、短剣を携えてヴェンガンへと一直線に走っていく。


 バカみたいな掛け声はいらない。

 卑怯で結構。


 指輪を壊せば、形勢が逆転する筈。




「なっ!?」


 彩芽の渾身の不意打ちは、失敗に終わった。

 ヴェンガンの指輪を傷つけようとしたその時、ミセーリアが邪魔に入ったのだ。


 彩芽の持つ短剣の切っ先はミセーリアに触れる直前で止まり、代わりにミセーリアが持っていたナイフが彩芽の腕を切りつけた。


「ヴェンガン、これは誰?」


「マリアベールのお友達だ。そして、カーラルアの大事な人で、巨人ストラディゴスの女」


「そうだったわ、ヴェンガン、マリアが死んだだなんて、嘘をなんでついていたの?」


「墓場から死ぬまで出られないなら、奴は死んだも同じ……」


「ヴェンガン、マリアが四百年前に死んでいなかったのを、知っていて黙っているだなんて、あなたの判断が今の状況を招いているのよ」




 彩芽は目の前で繰り広げられる会話を聞いて、絶句する。

 マリアベールが四百年も救おうとしてきたミセーリア自身が事件の黒幕で、ヴェンガンは協力者に過ぎなかったのだ。


「なんで、こんな事を……」


「なんで? あなたにそんな事話しても、意味無いと思うけど」


 ソウル・イーターは、彩芽などは眼中になく、フィデーリスの城壁へと進んでいく。


「マリアベールさんは、あなたを助けようと四百年も!」


「あら、事情を知った風な口ぶりね。マリアは、四百年もそんな事を?」


「なんで自分の国を!? 仲間を!? なんで!?」


「確かに、ヴェンガンが捕まえたくなるのも分かるわ。この子。いいでしょう、特別に見せてあげます」


 ミセーリアが彩芽にそう言うと彩芽の頭を掴む。

 次の瞬間、彩芽の目の前は真っ白になった。




 * * *




 四百年前のフィデーリス城の光景。

 ミセーリアが見せる幻覚魔法なのは彩芽にも分かるが、幻覚から抜け出す事が出来ない。




「ミセーリア王! 今一度お考え直しを!」


 四百年前のマリアベールがミセーリアを呼び止めている。


「いいえ、マルギアスに大使を送り、和平を進めます」


「マルギアスが約束を守るとは思えません! これは罠です! 和平交渉の席で王を殺し、町を焼いた過去をお忘れですか?」


「では、このまま負けるのを指をくわえて見ていろと言うの!?」


「エレンホスに援軍を要請すれば、まだ勝利への道はあります!」


「エレンホスがどれほどの援軍を送ってくれるかも分からないのに、勝てる道がありますか……」


「我々もあらゆる手段を考えております。どうか、お待ちください。王よ……」




 場面が変わる。

 ヴェンガンとミセーリアの二人が、ヴェンガンのベッドに入り裸で話をしている。


「エレンホスのセクレトと婚約!?」


「国の為です。まだ決まった訳では無いし、公けにはしないで」


「わかりました。ですが……」


「私が愛しているのはあなただけよ。それだけは忘れないで」


「私もです。ミセーリア」




 ザッピングの様に、さらに場面が変わる。


「マルギアス側の回答は?」


「無条件降伏と、王の首を差し出す事です」


「だから話にならないと、戦争しかない!」


 騎士達が戦争を唱える。


 マリアベールは解決の糸口が見えない事態にイラつき、ヴェンガンは勝ち目のない戦争に向かおうとしているのを見て、唖然としている。

 軍の作戦会議では皆が王と国を守ろうと一致団結しているが、それを見ているミセーリアの顔色は優れない。




 場面が変わる。


「たった三千だと!? エレンホスからの援軍が、たったの三千!?」


 軍の作戦会議の席。

 皆が、エレンホスに不満を持っている。


「わが軍は現存、民兵を合わせても五千。マルギアスは少なく見ても一万を超えているのだぞ!」


「数だけの勝負ではありませぬ。わが国にはマリアベール様の魔法の加護もある」


「死者が生き返りでもせんかぎり加護があろうが、数の前には押し負ける。死ににくいだけで死なぬ訳では無い」





 場面が変わる。


「ミセーリア、もうこの国は、フィデーリスはダメだ」


「それでも、私は王よ。民を捨ててはいけないわ。私が死んで、それで片が付くなら……」


「そんな事は私がさせない。ミセーリア、君の事は私が命に代えても守って見せる」


「ありがとう、ヴェンガン」




 場面が変わる。


「降伏の交渉!? 気でも触れたのかヴェンガン! 王国四千年の歴史をミセーリア様の代で終わらせる気か」


 老年の騎士が叫ぶ。


「このままではエレンホスが援軍につこうが、マリアベールの魔法があろうが負け戦です」


「戦う前に負けを決めつける者がどこにおるか!」


「無条件降伏し、属国としてでも残れる道を」


「マルギアスはミセーリア様の首を要求して来ておるのだぞ!」




 * * *




 ミセーリアの見せる過去の光景の中で、ミセーリアを救おうと奔走するヴェンガンとマリアベールが断片的にザッピングし続ける。

 それが過去にあった事実なのか、ミセーリアの都合の良い記憶なのかは分からない。


 しかし、今の所はマリアベールが聞かせた説明と矛盾も無く、ミセーリアとヴェンガンが深い関係であった事が最も衝撃的な情報に留まっていた。


 彩芽の思考などお構いなしに、場面は切り替わっていく。




 四百年前のフィデーリス城。

 今と変わらぬ二つの月に照らされる部屋。

 テーブルに置かれた蝋燭。


 フィデーリス騎士団長らしきエルフには珍しい初老の男と、マリアベールとヴェンガンとミセーリアが話をしている。


「エレンホスは援軍を六千に引き上げる約束を」


 マリアベールが朗報とばかりに報告している。


「よかった。ご苦労様でした。マリアベール」


「良くなどありません、ミセーリア様。エレンホスの奴らは端から勝つ気が無いのです。数で並んでも戦争が長引くだけ。悪戯に民を殺す事になりかねません」


 ヴェンガンの民を思っての発言に、当時のヴェンガンはまともであったと言うマリアベールの昔話が事実であった事に改めて驚く。


「ヴェンガン、兵は既に数千が死んでいる。彼らの犠牲と陛下とマリアベール殿の努力の上に作り出した好機、無駄にする気か!」


 騎士団長はヴェンガンの意見に真っ向から反対している。


 どうやら、ミセーリアの下には大臣のヴェンガン、魔法使いのマリアベール、そして騎士団長の三人がそれぞれトップを担って仕えていた様だ。


「今こそ好機を生かし、少しでもこちら側に有利な和平を結ぶべきです!」


「数千の同胞の死、ようやく現れた援軍、それらを何だと考えておる! 勝ちの可能性をもう捨てる気か大臣貴様!」


「あなたこそ戦争での勝利にこだわり過ぎていると言っているのだガモス卿!」


「二人共、落ち着け。ミセーリア王の御前だ。我は、ガモス卿の考えも理解出来る。全ての兵達に加護を施したのは、ほかならぬ我だ。だが、策無くして勝利は無く、その具体策も無いと言って良いのが現実。数で拮抗しようとも劣勢に変わりはない。ガモス卿もその点で異論はあるまい。ヴェンガン大臣の言う和平も、今の状況でマルギアスが素直に受け入れるとすれば、完全降伏の上、相手の要求を呑む以外にはあり得ぬだろう」


「では、マリアベール殿はどうすれば良いと?」


「……さらに友好国に呼びかけ、援軍と軍備を整えると同時に、それを山車に和平を進めるのが現状取り得る戦略としては良いかと。すでにヴェンガン大臣によって城壁建設もかなり進んでいる。マルギアスとて容易に攻め込むのが得策ではない事は分かる筈……」




 場面が変わる。

 ヴェンガンがミセーリアと密談している。


「ミセーリア様、密偵から入った情報です。エレンホスが用意している兵のほとんどは、奴隷兵の様です」


「なんですって!?」


「情報によると練度の高い正規兵は一割もいないとか。さらに、エレンホスの本当の目的は、マリアベールの魔法の秘密だとも……」


「マリアにその話は?」


「まだです」


「すぐに伝え……いえ、今すぐ連れてきて。ガモス卿も」




 場面が変わる。


「その情報が本当なら……エレンホスが来たとて戦になれば勝ち目は無い……降伏同然の和平か死か……エレンホスとの共同戦線も意味がなくなる……しかし我々には、もう後が……」


 頼みの綱に裏切られ、他に策が無いかとマリアベールは追い詰められた表情で考える。


「……ヴェンガン、マリアベール、ガモス。戦の勝敗は、決したのです。これ以上民が死ぬのは無意味……マルギアスに……降伏しましょう」


「ミセーリア様、そんな事をすればフィデーリスはマルギアスの領土となり、民は奴隷か、良くても下級市民に……和平への道を。降伏だけは、決してなりません」


 ヴェンガンが真っ先に反対した。


「我ら騎士、最後の一騎になろうとも国と陛下の為に命を捨てて戦う覚悟ならとうに済んでおります。どうか……」


「ミセーリア王、ヴェンガン大臣の言う通りです。あなた様御身を差し出した所で民草には悲惨な道が……それに、そうなれば……あなたは殺されるか、良くてマルギアスの愚王の妃となるのですよ! 他の道をお考え下さい!」


「愚王の妃になって民に未来が残されるなら本望です」




 場面が変わる。


「ミセーリア、内密に」


「どうしたのヴェンガン」


「マルギアスとの交渉の件です……密使を送りました」


「奴らは、何を言ってきたの?」


「王の……首です」


「そう……私の首と引き換えに、何を得られるの? 民には奴隷以外の道が?」


「ミセーリア、くれぐれもご内密に……マルギアス王家は、晒す為の王の首を差し出せば、それで良いと……それはあなたの首でなくとも良い」


「どういう事? 身代わりを?」


「ミセーリア。マリアベールの魔法欲しさに、あなたを謀ったエレンホス王の首を差し出すのです。あなたの、これから夫になる男の父親の首を」


「!?」


「幸い、まだ婚約は取り消されておりません。エレンホス側は、思惑にこちらが気付いていないと思っている。このままセクレトとの結婚が決まれば、式の席にエレンホス王は必ず来ます。そこをマルギアスに差し出すのです」


「どうやって、そんな……ヴェンガン、なんて恐ろしい事を……」


「これで、あなたと民の命は救われる……これがあなたと民を救う、数少ない道なのです。ですが、あなたには、混乱に乗じて死んだ事に、ほとぼりが冷めても別人になってもらいます。どうか……ご決断下さい……あなたを永遠に失うなど私には耐えられない。どうか」


「考えさせて……少しだけ、お願い……」


「……お待ちください。実は、もう一つ条件が」


「まだ何か?」


「マルギアス側は、マリアベールの引き渡しか、即時処刑を求めております」


「そんな事!?」


「ええ、ですから、マリアベールにもあなたと同時に、死を偽装して貰う事に……」




 場面が変わる。

 フィデーリス城のエントランス。


「セクレト王子、フィデーリスへようこそ。歓迎いたします」


「エルフは皆美しいと聞いていたが、ここまでとは……ミセーリア陛下はどちらに?」


「彼女が、ミセーリア・アダマス王であらせられます」


「これは驚いた。なんと若く美しい……陛下自ら、自分の様な若輩の迎えに来られるとは……とんだご無礼を……」


「長旅でお疲れでしょう。まずは身体をお休めになってください」


「いえ、あなたの美しさを目にすれば私で無くとも、どの様な疲れもたちどころに吹き飛ぶでしょう。今回は婚約者ではなく、大使として来ました。聞くところによるとマルギアスの連中が迫っていると……すぐにでも援軍派兵の具体的な話をしたい」




 場面が変わる。


「なんだ!? ここはどこだ!?」


 そこは、薄暗い地下牢であった。

 目隠しをされたセクレトは、状況が分からない様子。


 彩芽の目には、椅子に縛られたセクレトの前に立つヴェンガンと、二人を見守るミセーリアが見えている。


 ヴェンガンがセクレトに薬を嗅がせる。

 すると、セクレトは急に大人しくなり、その状態のセクレトにミセーリアが「ドミネーション」と言い魔法をかけた。


 現在マリアベールにかけられた精神支配魔法と同じだろう。


「セクレト王子、エレンホス王は……派兵する気は本当にあるの?」


「ある……」


「それは、奴隷兵?」


「奴隷兵も、いる……」


「割合は?」


「三割……」


 どうやら密偵の情報は正確な情報では無いらしい。

 ミセーリアは、もう一つの密偵からの情報も確認の為に聞いた。


「セクレト王子……エレンホス王は、不死の魔法の秘密が狙い?」


「違う」


「そう……」


 ヴェンガンとミセーリアは、まだ和平に向けたチャンスが残っているのかもしれないと、そう思った。

 密偵の情報が間違いならば、同盟は機能し、マルギアスにエレンホス王を差し出す必要は無い。


 だが、セクレトの口から言葉が続く。


「金だ」


「お金? なら、戦争に勝てれば、謝礼を払うと言っても兵の増員を断ったのは……まるでフィデーリスを勝たせる気が無い風でしたが」


「ない……」


 あっさりとした回答に、ヴェンガンは動揺する。

 派兵するのに、勝たせないとは意味が分からない。


「……どういう事だ!?」


「どういう事?」


「フィデーリスと、マルギアスには、これから先も、ずっと戦って貰う……」


「そんな事をして何になるの!?」


「エレンホスはフィデーリスとマルギアスに商品を売っている……武器、金属、木、城壁の岩、出稼ぎの職人もいる。フィデーリスの軍事力では、エレンホスがどんな協力をしようともマルギアスには勝てない。マルギアスはエポストリア連王国全てを持って相手にしても、大きな被害を出す相手。だが、フィデーリスは、援助し続ければ簡単には負けない。フィデーリスの不死の軍勢はマルギアスにとっては昔から脅威だった……少し煽ってやれば、戦になる事はわかっていた。だから私達は何年もの間……」


「!?」


 当時のヴェンガンとミセーリアと共に、彩芽も戦争の火種の事実に衝撃を受けた。


 形だけだったとは言え、フィデーリスとエレンホスは元々連王国と言う共同体に属する同盟国である。

 それが敵国と同盟国を戦争させて稼ぐなんて事を平然とされていたと当事者に語られては、そこに沸くのは怒りだけである。


「エレンホス王が、マルギアスをけしかけたのか!?」


「どうなの!?」


「エレンホス王は許可しただけだ……計画したのは、全て私だ。マルギアスにはスパイを送り込んで民衆を煽った。フィデーリスが盾となり、外貨を稼ぐことでエレンホスのみならずエポストリアは潤い、その先に打倒マルギアス王国が待っている」


「私達は捨て駒だと言うの!? あなたの狙いは? セクレト王子、お金の為? あなたはなぜ私と婚姻を? 狙いは何?」


「私がフィデーリスの中に入る事で、エレンホスは表立ってフィデーリスと取引が出来る……それよりも一番の理由は、不死の魔法を盗むには、私自らが乗り込んだ方が良い……それに、噂名高いミセーリアを妻として好きに出来る。全ては、マルギアス王国を倒す為の準備の為。フィデーリス王国は勝てないが滅びもしない」




 * * *




 セクレトの、エポストリアの狙いが、思わぬ形で判明し、ミセーリアとヴェンガンはエレンホス王を引き渡すと言うマルギアスの要求を呑む事を決意していた。


 だが、エポストリアの計画を進めるには、敵を煽るだけでは舵取りが出来ない部分がある。

 そう、フィデーリス王国にも裏切り者がいなければ、事はそんなに上手く運ばないのだ。




「フィデーリス内に、あなた達の協力者は?」


「ガモス……それと、フィデーリス騎士団」


「!?」


「ガモスが中心になって、団長と側近達は皆、エレンホスの息がかかっている……」


「ガモスが、そんな……なぜ……」


「最初は……指定する商会との取引をすれば、金を渡すと言って近づいた……」


「……すぐにマリアをここに」


「よろしいのですか?」


「事態は急を要します」




 場面が変わる。

 マリアベールの部屋。

 ミセーリア不在の場面を見て、これがミセーリアの都合の良い記憶では無く、過去の事実だと彩芽は感付く。


「マリアベール、至急ミセーリア様が話があると」


「こんな夜更けに何があった、マルギアスの鼠でも入り込んだか!?」


「もっと悪い。地下牢へ来てくれ。事情はここでは言えない」


「……わかった」




 場面が地下牢に戻ってきた。


 ヴェンガンはミセーリアとセクレトを見るなり、血相を変える。

 ミセーリアがセクレトの背中を鞭で叩いたのだろう。

 セクレトの背中には肋骨が見える程の重傷が負わされていた。


「セクレト王子!? ミセーリア王、これは!?」


 マリアベールがセクレトに生命補助魔法をかける。

 だが、セクレトは意識を完全に失い、危篤状態となっていた。


「誰がこんなむごい事を!? まさかミセーリア王、あなたが!?」


「事情を説明させて、マリア、これは……」


「昼間の会議では更なる派兵を約束してくれたのに、なぜ!?」


「話を聞け、マリアベール。セクレト王子にこんな事をしたのは私だ」


 ヴェンガンが、ミセーリアを庇って嘘をついた。


「ヴェンガン貴様! 正気なのか! こんな事をして同盟はどうなる! 嫉妬にでも狂ったのか!? このままではセクレト王子は助からぬ、上に運びすぐに治療をする! 話はその後だ!」




 場面が変わる。


「ミセーリア、なぜあのような事を……」


「ごめんなさいヴェンガン、あいつのせいで民が無駄に殺されたと思ったら、我慢が出来なくて……私……」


「マリアベールは、話をすれば、ちゃんとわかってくれます。それよりも、エレンホスと……エポストリアと手を切り、マルギアスとの和平を考えなければ、さらに民が死ぬ事になります。エレンホス王の首の為にもマリアベールにはセクレトを救って貰わなければ……」




 場面が変わる。


 セクレトは治療したが意識が戻らない。


 このままでは、婚姻どころでは無い。

 結婚式以前に、セクレトが行方不明になっては同盟どころでは無く、エレンホス王を呼ぶ事もままならない。


 セクレトの命を繋ぎとめ、この事態を表沙汰にせずに解決する為にマリアベールは一人部屋に籠って不休で魔法をかけ続け、衰弱していく。


 ヴェンガンはマリアベールに「セクレトの命が助からねば、死罪だ」と一方的に地下牢へと幽閉されていた。

 ミセーリアは、密かにヴェンガンとの面会に来る。


「ヴェンガン、私のせいで……すぐに出します」


「ミセーリア様、私の事より、それよりもセクレトを……私の部屋の金庫に、マリアベールの魔法の刻印と、魔法自体の理論を記した彼女の手記があります」


「それをどうしろと? セクレトが死んだ代わりに、エレンホス王に送れとでも!?」


「ミセーリア、あなたの魔法とマリアベールの魔法は、かなり近いと前に言っていましたね? あなたの師が彼女だったとも。彼女の癒しの魔法は、私の手には負えない。ですが、あなたなら手を加える事が出来る筈だ」


「手を、加える?」


「ミセーリア、あなただけの癒しの魔法を作って。マリアベールのよりも強力な、癒しの魔法を。そうすれば、セクレトの傷を癒して、あなたが操れば、まだフィデーリスを救える。マリアベールが時間を稼いでいる間に早く」


「……出来るかわからない」


「やるしか無いのです。あなたの、いえ、あなたの民の為に……」




 場面が変わる。


 ミセーリアは、ヴェンガンと民を思ってマリアベールの生命補助よりも強力な治癒魔法を完成させ、マリアベールが術をかけている部屋へと急いだ。

 そこでは、マリアベールが過労から意識を失い倒れ命も危ない状態であった。


「そんな……マリア……」


 ミセーリアは、マリアベールに完成したばかりの治癒魔法をかける。

 すると、マリアベールの生気が戻っていく。


 成功を確信してミセーリアはセクレトに魔法をかけた。

 しかし、反応が無い。

 力場の刻印も用意したのに、セクレトは回復しない。


 その時になって、ミセーリアは気付いた。

 マリアベールの治療の甲斐も無く、セクレトは死んでいたのだ。


 だが、ミセーリアは諦められない。

 他に手が無いか、マリアベールの部屋の中の研究日誌を見ると、そこには更に上位の生命補助を可能とする魔法の研究があった。

 ミセーリアは、魔法構築と刻印改変をその場で行う。

 生命補助を治療魔法へと改竄した時に、どこをいじってよく、どこをいじったら発動しないのかだけは理解していた。


 セクレトに何度も、ランダムと言っていい改変した治療魔法をかけ続けた。

 もうダメかと思ったその時、奇跡が起きた。

 セクレトが息を吹き返したのだ。


 彩芽は、ヴェンガンではなく、ミセーリアがネクロマンスを完成させた瞬間を見ていた。




 場面が変わる。


 セクレトの生存と、拷問された記憶の欠如、傷の完治によってヴェンガンが行ったとされる非道は不問とされる事になった。

 セクレトはミセーリアの指示通り、結婚式の準備の為国に戻ったらしい。


「マリアベール、私の話を聞いていたのか!? マルギアスにエレンホス王の首を差し出せば、全てが丸く収まるのだ!」


 まだ完治していないマリアベールの寝るベッドの横で、ヴェンガンが話をしている。


「ヴェンガン大臣! あのような行為までしておいて、ミセーリア様の結婚式でエレンホス王の首をマルギアスに差し出すと? 本気で言っているのか!? そこまでミセーリア王をお前から奪うセクレト王子が憎いのか!?」


「拷問の件に関しては、言い訳のしようがない。だが、真実を吐かせるために、あれは必要で……」


「ミセーリア王がお前の事をお止めにならなければ、セクレト王子は死に、今頃はマルギアスとエレンホスの両方を相手にする所だったのだぞ! わかっているのか!」


「わかっている! ミセーリア様とマリアベール、君には感謝している。私はどうかしていた。だが信じてくれ! エポストリアはフィデーリスを捨て駒にしようとしているのは本当なのだ!」


「お前が拷問して無理やり吐かせた言葉など信じられるか!」


 ミセーリアを庇ったばかりに、マリアベールからの信用も信頼も失ったヴェンガンの言う事は信じて貰えなかった。


 だからと言って、ヴェンガンはミセーリアがドミネーションをかけ、拷問にかけた事をマリアベールに伝える事が出来ない。

 ミセーリアの為でもあるが、ミセーリアを敬愛し溺愛しているマリアベールに、民を愛し、民から愛されるミセーリアが怒りに任せて鞭をふるった事実は伝えられる筈がない。




 場面が変わる。


「マリアベールは、セクレト関係では、もう私の言う事は信じないでしょう」


「私が説得を……」


「無駄です。私が拷問で聞き出し、あなたが止めて、正気に戻った私がマリアベールを呼びに行った事になっているのです。その私から聞いた話というままでは、ミセーリアが私に説得されたとしか思ってはくれない……」


「……ならば、本当の事を」


「……いえ、それはいけません……私に考えがあります。マリアベール抜きで、私達だけで計画を進めるのです」


「マリア抜きで!?」


「ミセーリア、裏切り者である騎士団は、城壁内ではマリアベールの魔法で手が付けられません。ですが、今のあなたには、マリアベールも知らない彼女以上の魔法がある。城壁の刻印を全てあなたの魔法の刻印に書き換えれば、騎士団は死ににくいだけの裏切り者となる」


「どうする気なの……」


「あなたとセクレトとの結婚式で、フィデーリスとエレンホスの騎士団を粛清するのです。そして、あなたの作り上げた死者蘇生と支配、二つの魔法を使って、マルギアスにエレンホス王の首を渡し、フィデーリスはマルギアスの一部となる代わりに、民の安全を保障させます。交渉はお任せください」


「そんな……何も知らないマリアは、どうなるの?」


「彼女には、一度、マルギアス騎士達の目の前で死んで貰います。後であなたが生き返らせれば良い」




 場面が変わる。


 結婚式当日。

 ドミネーションで操られながらも、違和感なく振舞うセクレト。

 エレンホス王は妻と共に何も知らずに結婚式に出席している。


 地下通路から、ほとんど音もたてずに現れるマルギアス騎士団。

 城内に雪崩れ込むと、フィデーリスとエレンホス騎士団を次々と虐殺し始める。


 ミセーリアは死体の流す血の海を歩きながら「ドミネーション・ネクロマンス」をかけていく。


 混乱の中、ヴェンガンだけが犯人だとマリアベールは勘違いをしたまま、ミセーリアとセクレトに生命補助魔法をかけて戦場へと乗り込む。


「ヴェンガン! どういうつもりだ!」


 ヴェンガンはマリアベールの質問に答えず、単独の主犯である風に装いながら、マルギアス騎士団と共にフィデーリス騎士団とエレンホス騎士団を殺し、ミセーリアの配下へと変えていく。


「ヴェンガン! きさまあぁぁ!!!」


「これ以上、私の邪魔をするな」


 そう言っているヴェンガンの顔は、友を手にかける事を戸惑っている様に見えた。


 その時、マルギアス騎士団の弓兵がマリアベールに毒矢を放った。


 矢を受けたマリアベールの様子がおかしい。

 マリアベールを慕っていた、おそらく団長の裏切りを知りもしない下級騎士達がマリアベールを逃がそうと盾になりながら連れ去ってしまう。


「何をした!?」


 ヴェンガンはマルギアスの騎士を問い詰める。


「約束した筈だ。魔法使いマリアベールは殺すと」


「私が手を下すを言ったはずだ!」


「知り合いを手にかけるのは辛かろうと、これは王からの慈悲だ。裏切り者の伯爵様へのな。安心しろ、矢にはヒドラの毒を仕込んである。絶対に助からない。これも王からの慈悲だ」




 場面が変わる。


「ヴェンガン、マリアは!?」


「マルギアスの奴らがマリアベールを殺し、その遺体も逃げた下級騎士に持ち去られました」


「そんな!?」


「あなたの命も危ないかもしれない。隠し扉の中に隠れて。私の幻惑魔法で、侍女の死体をあなたの身代わりにして、機を見て焼きます」


「フィデーリスが無くなり、マリアベールが死んで、このままではあなたまで……何でこんな事に……」


「マルギアスの連中は、民には手を出していません。彼らは約束だけは守っている。つまり私が奴らにこの先も金を払う限りフィデーリスは無くなりません。大丈夫です、命に代えても私があなたと、あなたの民を守ります。こんな事になって本当に残念です。ですが、どうかあなたは生きて下さい……」

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