第34話
「女の落とし方!?」
エドワルドからのまさかの交換条件。
女性を口説き落とす方法をストラディゴスに聞いてきた事に、一同は面食らう。
エドワルドからすると、友人相手のサービス精神だろう。
だが、金を請求されるよりは良いが、ストラディゴスは困っていた。
「大陸広しといえども、お前ほど女を知っている男はいないだろ? 頼む!」
そのやり取りを聞いていて、彩芽は笑うのを我慢していた。
女性経験は豊富だろうが、ストラディゴスは別に、異性を口説き落とすのが得意な訳では無い。
どちらかと言えば、自分からアプローチをする場合は、むしろ不器用に思える。
ストラディゴスも自分でそれは分かっている様で、彩芽の目が笑っているのを機敏に感じつつも、断ってしまったら地下通路の地図が手に入らないのだから相談に乗るしかないだろうと、アイコンタクトで伝えて来る。
「……ど、どんな女なんだ?」
「いやぁ、まじで助かるぜ。もう何年も一緒に仕事をしているヤツなんだけどな、とにかく我儘で、これが、金がかかるんだけどよ。今度の仕事が上手く行ったら、本気で口説こうと思っててよ」
「そいつの、どこが好きなんだ? 顔か?」
「顔、は、そういや、ちゃんとは見た事ないな。あまり見せたがらないんだ。でもよ、女は顔じゃないだろ」
彩芽の中で、エドワルドがカッコよく見えた。
彩芽がストラディゴスに視線を送ると、どう考えても面食い気味なストラディゴスは目をそらす。
「そ、そうだよな。女は顔じゃないよな。俺も全く同感だ。それにしても、我儘で金がかかって、顔も見せない。ほんと、どこが好きなんだ?」
「長く一緒にいると、気がついたらってあるだろ?」
「その人の好きな物は?」
彩芽が乱入した。
このままストラディゴスが話しているのを聞いていても面白そうだが、目の前の男共がする恋バナに混ざりたくなっただけである。
「好きな物か……」
「お金かかるって、何を買うの?」
「それは……まあ、色々使ってるが。贅沢は別にして無いしな……派手な事は、あまり好きじゃなさそうなのは確かだ」
「何でも良いからさ、好きそうな物でもプレゼントしてみたら? 似合いそうな服とか。エドワルドさんの心がこもってたら、それだけで嬉しいと思うよ」
「服にこだわるタイプにも思えんが、プレゼントねぇ」
「食事とか、デートに誘うとか。ねぇ、ストラディゴス」
「うんうん」
「うんうんじゃねぇよ。おい、ストラディゴス、彼女にばっか喋らせて、お前はどうなんだ? これは鉄板みたいな口説き文句とか無いのか」
「………………ない」
「何の間だ。なら、参考までに聞くが、お前、アヤメとはどうやって付き合い始めたんだ?」
エドワルド、ルカラ、そして彩芽の視線がストラディゴスに集まる。
「こく、はく?」
「何でお前が疑問形なんだよ」
エドワルドのツッコミに、彩芽も「私に確かめるなよ」と可笑しくなる。
「そうだ。ストラディゴスは、告白するのとされるの、どっちが多かったの?」
彩芽からの質問にストラディゴスは答える。
「告白? される方だな」
「じゃあ、どうやったら告白されたとか、告白したとか体験談を話してあげたら? 参考になるかもしれないし」
ストラディゴスは、あからさまに嫌そうな顔をした。
「おいおい勘弁してくれよ」
「いや、参考になるかもしれないだろ。聞かせろよ。地図欲しいんだろ?」
* * *
「あ~~~~~面白かった」
結局ストラディゴスはエドワルドに、彩芽とルカラの前で恋愛遍歴を吐き出させられたのだった。
ストラディゴスの過去の告白は、どれも出オチ。
告白と言うよりは、夜這いをかけるか、「お前と寝たい、抱きたい」のバリエーションでしかなかった。
是非もっと聞きたいと興味津々なルカラの耳を彩芽が塞ぐ系、性欲丸出し弩直球であった。
傭兵団内でしか自分から告白する場など無かった為、成功率は百パーセントなのだが、それではエドワルドにとってまるで参考にならない情報である。
告白されるにしても、夜這いをかけられたり、いつの間にか好かれていて、と言うエドワルドからすると羨ましいだけで、これも参考にならない。
あえて言うなら、拾ったり仲間にしたら、一緒に過ごして愛情を注いでいれば相手は応えてくれると言う事らしい。
得られた結果は、彩芽の前でハーレムを謳歌していた過去の自分を、悪戯にさらけ出させられただけ。
ルカラがいる手前、ディープな話にこそ踏み込まなかったが、それでもストラディゴスの精神的ダメージは相当の物であった。
そこに追い打ちをかけるエドワルドは、相談する相手を間違えたと、ひとしきり笑ってから。
「一緒に過ごすってのは分かったが、アヤメの意見を参考にさせてもらうわ。ああ、そうそう、お前ら、地図作り手伝えよ。今聞いた話と、それで地図はやる。準備が出来たら呼ぶからこの辺にいろよ。じゃあな」
と言って笑いながら帰って行った。
* * *
帰った後が大変だった。
エドワルドと共に彩芽も真っ赤になりながらも笑って聞いていた事に傷ついたのか、ストラディゴスは不貞腐れてしまったのだ。
彩芽の誘導で言わされた事が、とても引っかかっているらしい。
「怒ってる? ご~め~ん~」
「……怒ってない」
「ごめんね♡」
彩芽がストラディゴスの寂しい背中に抱き着きながら、冗談気味に謝る。
それをルカラは、見ていられないと静止した。
「アヤメさん、それ以上は……ストラディゴスさんは私の為に犠牲に」
「犠牲……くそぅ……」
「ああ、ごめんなさい……」
「ね~ね~、ストラディゴス~、どうすれば機嫌治る~?」
「……ほっといてくれ」
「ほら~ストラディゴスの事知れて、私は楽しかったよ~」
「アヤメは……嫌じゃないのか? 昔の女の話なんて」
「え~、だって~フィリシス達の事もあったし、ストラディゴスがエッチなのは、ねぇ~」
「なら、アヤメの話も聞かせろよ」
「えっ?」
「私も聞きたいです」とルカラ。
「ええぇ、別にいいけど、面白くないよ?」
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