太陽の下のハイビスカス

カゲトモ

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「あの、よかったらコレ」

 どうしようかと思ったけど、やっぱりどう見ても大量の汗を掻いているし、外は暑過ぎるし、このまま熱中症になっても大変だし、落ちて来られても受け止めてあげられないし。俺だけはなくて、かの少年でも無理だと思うし。

「えー? なにー?」

「だからっコレ! 良かったら飲んでくださいっ!」

 ちょっと大きな声で言ったらその人は一瞬だけ考えるような表情をして言った。

「なんでー?」

 いや、何でもくそもないだろ。こんな猛暑に屋根の上に登って作業していたら倒れるわ。今日大暑だぞ? 一年で一番暑いんだそ?

「だって他所の家の人でしょー?」

「そーですけどー、頼まれたんでー!」

 隣のお宅のおばあちゃんに今日は屋根の修理をしてもらうけれど、どうしても出掛けないといけないところがあるからよろしく頼むと言われているんだ。そうじゃなきゃ知らない作業員の人に声を掛けたりしないって。いくらアクティブ系美人だったとしても。

「そーなんだー、ありがとーっ!」

 本当に分かったのか軽い返事をしてその人はスルスルと屋根から降りてきた。もし俺が嘘を吐いて声を掛けていたらどうするんだ。

 重そうな靴を軽々扱って目の前に立つと、白い歯を見せてにっこりと彼女は笑った。

「どうぞ」

「ありがと! うれしーっ」

 お盆に乗せたのは氷をたっぷりと入れた水出しの麦茶。こんなに暑い中冷たすぎるものを身体に入れるのはちょっと躊躇われるけど、これくらいの方が絶対に美味しいのは分かっているから。ちょっとだけ、ね。

「っぱぁおいしぃ!」

 ゴクゴクッと喉を鳴らして彼女はそれを一気に飲み干した。ちょっと足りなかったか?

「あはは、おいしーっ」

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